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高橋幸宏をカバーしている人を探して


幸宏さん“を”カバーしている人を探す

人の一生は一冊の本のようだ。いま「高橋幸宏」という本を読み終え、多くのファンがあとがきを書こうとしている。物語は終わったが本は消えず、ずっとそこにある。

細野晴臣の追悼文 朝日新聞デジタルより


細野さんの言う通り、残されたファンは、あとがきを綴るだけ。市井の幸宏ファンのあとがきです。
当たり前の話ですが、幸宏さんがカバーしている曲は、普通に幸宏さんをフォローしていれば聴くことができますが、幸宏さん“を”カバーしている人を聴くのはちょっとだけ能動的な作業になります。
そんなわけで、今回は、幸宏さんのソロ作をカバーしているプロのミュージシャンを探してみたいと思います。
どんなミュージシャンが幸宏さんの曲を愛していたのか。どんな感じでカバーしているのか。
原則としてCDや配信で音源が入手可能なもの。ライブ盤やライブ映像は対象外にしています。※原則を外れているものもいくつか紹介しています。
毎度のお断りですが、筆者は音楽的な素養も知識もゼロに近いので、あくまで印象や事実と思われることを中心に書いています。

ついでにセルフカバーも探します

例えば【Drip Dry Eyes】のように別のミュージシャンに提供した曲をのちにセルフカバーしているという曲も一緒に探してみました。


幸宏さんのカバー曲、提供曲が収録されたアルバムの一部


①スイミングスクールの美人教師

アーティスト:THE VENTURES
作曲:高橋ユキヒロ
アルバム名:CHAMELEON
1980年

筆者が初めて手にした幸宏さんのアルバムは【音楽殺人】(1980年)でした。そのB面の1曲目が【BIJIN-KYOSHI AT THE SWIMMING SCHOOL-スイミングスクールの美人教師-】。当時中学生だった筆者のお小遣いでは何枚もアルバムを買ったりできなかったので、まずはカセットテープに録って、繰り返し聴き込んだという思い出があります。当時のあるあるかもしれませんね。LPは確か2,500円だったはず。中学生だった筆者は、この曲が実はセルフカバーだなんて知る由もなかったし、ベンチャーズ自体も知っていたかどうか怪しいです。そもそもカバーとかセルフカバーとかいう概念もしらなかったような気がします。このベンチャーズ版は動画サイトにアップされているようなので、探してみてください。
動画サイトを彷徨っていたら、中シゲヲさんというギタリストのカバーも見つけました。幸宏さんをカバーしているというよりもベンチャーズをカバーしているという意識なのかもしれないですが、公式チャンネルみたいなので貼っておきます。
それにしてもベンチャーズに曲を提供していたって凄いですよね。

スイミングスクールの美人教師
アーティスト:中シゲヲ
アルバム名:NIPPON エレキ・ビート!! 第2集
2023年


BIJIN-KYOSHI AT THE SWIMMING SCHOOL(セルフカバー)
アーティスト:高橋ユキヒロ
アルバム名:音楽殺人
1980年

筆者が最初に購入した幸宏さんのアルバム【音楽殺人】
初回プレス限定のカラーレコードでした


②Drip Dry Eyes

アーティスト:サンディー
作詞:Chris Mosdell
作曲:高橋幸宏
アルバム名:EATING PLEASURE
1980年

知っている方も多いと思いますが、この曲はサンディー版がオリジナル。【NEUROMANTIC】(1981年)に収録されているのはセルフカバー曲ということですね。幸宏さんの最初のライブアルバム【Time And Place】(1984年)には、サンディーと幸宏さんのデュエットが収録されているので、幸宏さんしか追いかけてていない人でも彼女の歌声は聴いているのではないでしょうか。
この曲はレゲエから派生したダブと呼ばれるジャンルの名曲と呼ばれていたりします。サンディーの奥深い倍音多めの声が印象的。気持ちいい響きで満たされた曲です。

ダブの解説

サンディーのインタビュー

幸宏版はアルファの公式PVがあるので、こちらに貼ります。よくよく考えてみると、この頃の曲でPVが存在すること自体めずらしいのかも。MTVが始まったのが1981年で、そこから“音楽を視る”という時代になっていきます。日本のミュージシャンが本格的(当たり前)にPVを制作するようになるのはもう少し後の時代なので、黎明期のPVと言えるかもしれませんね。PVを手掛けたのはYMOのジャケットデザインなどで知られるアートディレクターの奥村靫正氏です。

Drip Dry Eyes(セルフカバー)
アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:NEUROMANTIC
1981年

そして2024年になって、新たにこの曲をカバーしている人たちが現れました。斉藤哲也さんと神田珠美さんによる音楽ユニットさいたまに元たまの石川浩司さんが加わったさいこうたまによるカバーです。シンプルな編成での演奏ですが、余計に曲の良さが際立つ感じがします。最初のリリースから40年以上経ってもカバーされるというのは本当に名曲なんでしょう。しかも取り上げたのは、割と手練れのミュージシャンたちなので、余計にそれを感じます。

Drip Dry Eyes
アーティスト:さいこうたま
2024年

石川浩司さんといえば筆者がmixi(覚えてますかね?)で日記を書いていた頃、幸宏さんのスネアを石川さんが使っていたという話を書いたのですが、御本人から「今でも家にありますよ。」というコメントをいただいたことがあります。一応証拠貼っておきます(笑)

筆者の日記(mixi)にいただいたコメント

③蜉蝣

アーティスト:中原理恵
アルバム名:Lady 麗(RIE)
作詞/作曲:高橋幸宏
1984年

中原理恵さんは、1978年の【東京ららばい】のヒットで知られる女性シンガー。1978年といえばピンクレディー旋風が吹き荒れている頃で、女性アイドル系ではキャンディーズ、山口百恵がチャートを賑わせていた時代です。中原理恵さんは、アイドルとは一線を画した大人の歌手というイメージで売り出していましたね。その後80年代に入ってからは、【欽ドン!良い子悪い子普通の子】という超人気番組で「良い妻、悪い妻、普通の妻」を演じて大ブレイク。素晴らしいコメディエンヌぶりを発揮して、お茶の間の人気者でもありました。
中原理恵さんと幸宏さんの関係については、ここではとくにコメントしませんので、あしからず。
【蜉蝣】のオリジナルは幸宏さんの5枚目のアルバム【薔薇色の明日】(1983年)に収録された曲。オリジナルとの大きな違いは歌詞の変更ですね。「君と僕」が「あなたとわたし」に変わっていて、女性目線の歌詞になっています。幸宏さんのコーラスも聴けますよ。
中原理恵版の発売当時はアナログレコード(LP)でした。2013年にリリースされたプレミアBOXの中でCD化されているようですが、現在入手は困難のようです。動画サイトにはアップされていますので、探してみてください。

蜉蝣
アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:薔薇色の明日
1983年


④今日の空

アーティスト:柴野繁幸
アルバム名:BREATHLESS
作詞/作曲:高橋幸宏
1986年 

オリジナルは幸宏さんの【Once A Fool, …―遥かなる想い―】(1985年)に収録。T・E・N・Tレーベル時代の最初のアルバムですね。いわゆる「情けない男の歌」のイメージはこの曲で決定的になったのではないかと思います。
幸宏さんがレギュラー出演していた幻のバラエティ番組【極楽テレビ】のエンディングでも使われていました。【極楽テレビ】についてはまた別の機会に。
さて、筆者が柴野版の【今日の空】を聴いたのは恐らく一回だけ。当時の幸宏さんのラジオ番組だったと思います。今回のレビューに合わせて入手しようかと思ったのですが、CDはかなりのプレミア価格なので断念(いまのところ)。動画サイトなどにも見当たらず…なので、記憶は曖昧なのですが、わりとシャウトしてたような…こんな感じで歌うんだと当時思った記憶があります。

今日の空
アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:Once A Fool, …―遥かなる想い―
1985年


⑤CAMP

アーティスト:Urban Dance
作詞:鈴木博文
作曲:高橋幸宏
アルバム名:Two Half
1986年

幸宏さんの【…Only When I Lough】(1986年)に収録されている【CAMP】。どちらも1986年ですが、Urban Danceのリリースの方が早く、幸宏版はセルフカバーということになります。Urban Dance版はなんというか、あの頃のエレクトロ・ポップという感じで、音の作り全体が懐かしい。それと声質のせいか逞しい感じに聞こえます。対して幸宏版は繊細な感じ。川の畔には別々のドラマがあります。

CAMP(セルフカバー)
アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:…Only When I Lough
1986年


⑥Left Bank

アーティスト:鈴木慶一
作詞:鈴木慶一
作曲:THE BEATNIKS
アルバム名:SUZUKI白書
1991年

幸宏ファンの大多数が好きな曲として挙げるのではないかと思うこの曲。慶一版をカバーとは言い難いですが、幸宏版より後の発表ということで、カバーとして取り上げます。
2000年頃だったと思いますが、慶一さんも幸宏さんも揃っていた新宿リキッドルームでのライブイベントで、アンコールが終わっても客が帰らず、困った顔で登場したふたりに、客の誰かが「Left Bank演って!」と叫び、周りが呼応していたのを思い出します。結局そのときは、ライブ中に演奏した曲をもう一度やって終わりましたが、みんなこの曲が好きなんだなと認識した瞬間でした。
筆者にとって人生でベスト1の曲がこの【Left Bank】です。
最初に発表されたのは幸宏さんのソロアルバム【EGO】(1988年)。この歌詞の内容はいつか掘り下げたいと思っていますが、あの世とこの世を行ったり来たりするような、愛が昇華するようなラブソングです(なんだかわからない説明ですね)。
慶一版はイントロのストリングスが美しい。それだけで心を掴まれる感じです。動画サイトにも上がっているようなので、聴いていない方はぜひ。

Left Bank【左岸】
アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:EGO
1988年


⑦Fathers

アーティスト:徳武弘文
作詞:森雪之丞・高橋幸宏
作曲:高橋幸宏
アルバム名:ハッピーデイズ
1991年

日本のカントリー系ギタリストの第一人者といわれる徳武弘文。幸宏さんのライブでは度々そのプレーを目にすることがありました。黙々とギターに向かう姿が印象に残っています。いつだったか、街なかで偶然お見かけしたのですが、その時も割と地味めの印象でした(あくまでも個人の感想です)。それはおいといても、あまり歌う印象のない方なので、歌っているのは意外です。
【Fathers】は、自分の父親と父親になった自分を重ねて、自分の父親への思いを深めていくような歌詞で、こういう内容を歌うのって、幸宏さんに限らず、日本のポップス全体でも珍しいのではないかと思います。幸宏さんのアルバムでは【LIFE TIME, HAPPY TIME~幸福の調子~】(1992年)に収録。このアルバムの中では【男において】も少し変わったアプローチの歌詞でした。いま気づきましたが、どちらのアルバムも“ハッピー”なんですね。

Fathers(セルフカバー)
アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:LIFE TIME, HAPPY TIME~幸福の調子~
1992年


⑧メルシィ・僕

アーティスト:竹中直人
作詞:竹中直人
作曲:高橋幸宏
アルバム名:MERCI BOKU
1995年

1990年代の半ばは、幸宏さんと竹中直人のコラボが頻繁に見られた時期でした。幸宏プロデュースの2枚のアルバム。そして、チャーリー・ボブ彦とジャッキー・テル彦の「流しのふたり」。お洒落でちょっとシャイで、多才でスタンスがブレない。ふたりの共通点だと思います。
そんなふたりのコラボ曲【メルシィ・僕】。男の切なさを表現した竹中直人の詞と詞の世界を暗くなり過ぎることなく表現した幸宏さんの曲が融合した素晴らしい作品です。竹中直人版がオリジナル。幸宏さんの【Fate of Gold】(1995年)に収録されたものがセルフカバーになります。同じ1995年発売ですが、竹中直人版が5ヶ月ほど早いようです。
この当時は竹中直人のライブにも足を運びました。そこで生の「流しのふたり」を観たはず。またこの頃、西麻布のYellowで行われたイベント「yukihirotakahashi remix night」にも「流しのふたり」が登場して、大喜びした思い出があります。

流しのふたり
もう言うことはありません
笑顔がちょっと怖い


メルシィ・僕(セルフカバー)

アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:FATE OF GOLD
1995年


⑨おいしい水

アーティスト:竹中直人
作詞:竹中直人
作曲:高橋幸宏
アルバム名:イレイザーヘッド
1996年

1960年代に発表されたボサノバの名曲と同名のこの曲。どのような意図でこのタイトルになったのかは定かではありませんが、竹中版はボサノバアレンジとなっています。この曲は、恋人にふられた…というよりか、あきれられた男の歌。自分の部屋にある彼女の残り香たちと向き合いながら、男は何を思うのか…こちらも切ないです。
このアルバムの冒頭の曲は【禿吉】。1996年は竹中直人が大河ドラマ【秀吉】の主演となり、一気に全世代に知れ渡った年でもありあます。その大河ドラマ放送中の10月に発売されたアルバムの中で、自らパロディをやっているのが竹中直人らしい。

おいしい水(セルフカバー)
アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:Portrait With No Name
1996年


⑩Voice Of The Earth 地球の声

アーティスト:SOON with 高橋幸宏
作詞/作曲:高橋幸宏
1997年

この曲は関西セルラー(かつて存在した携帯キャリア)のCM曲だったそうで、当時関東に住んでいた筆者は噂だけ聞いて、羨ましく思っていました。
SOONは筆者と同じようなYMO世代の二人組。幸宏さんとのコラボはどんな気持ちだったんでしょう。この曲は彼らにとって8枚目のシングル。1999年まで活動していたようです。
歌詞の内容は、僕から君へのラブソングなんですが、地球(ほし)というワードが入ることによって、より普遍性みたいなものを感じます。
幸宏版はマキシシングル【手をのばせば~A touch of Love~】(1997年)に収録。その後歌詞を変えたバージョン【大切な人 ~Voice Of The Earth II~】がアルバム【A Ray Of Hope】(1998年)に収録されています。

Voice Of The Earth 地球の声(セルフカバー)
アーティスト:高橋幸宏
作詞/作曲:高橋幸宏
1997年

大切な人 ~Voice Of The Earth II~
アーティスト:高橋幸宏
作詞/作曲:高橋幸宏
アルバム名:A Ray Of Hope
1998年


⑪愛は強い Stronger Than Iron(Japanese version)

アーティスト:Eric Suen(孫耀威)
作詞:Chirs Mosdell、森雪之丞、高橋幸宏
作曲:高橋幸宏
アルバム名:ASIAN LOVE ~愛があれば~(Japanese version)
1997年

この時代ですから、8cmのシングルCDですね。
ネットでみつけた画像だけ貼っておきます


香港出身の俳優、歌手であるEric Suenによるシングル【ASIAN LOVE ~愛があれば~(Japanese version)】のカップリング曲が【愛は強い Stronger Than Iron(Japanese version)】だったのですが、こちらについてはかなりレアもののようで、筆者は残念ながら聴くことが叶わずでした。90年代も熱心に幸宏さんを追いかけていたつもりでしたが、Eric Suenのことは記憶になく…ネット時代が本格化するのは2000年代に入ってからだと思いますが、それ以前の情報は結構漏れてますね。
オリジナルは【A Day in The Next Life】(1991年)に収録。アルバムの前にシングルとしても発売されています。
歌詞の中にある「町中の夢手に入れたら幸せだと信じてたけど」というフレーズ。ミュージシャンとしてデザイナーとして成功した幸宏さんだからこそ、まさに“町中の夢”を手に入れた人だからこそ言えるんだろうなあと、当時からしみじみ考えてました。

愛は強い stronger than iron
アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:A Day in The Next Life
1991年


⑫Stornger than Iron(English version)

アーティスト:Eric Suen(孫耀威)
作詞:Chirs Mosdell
作曲:高橋幸宏
アルバム名:VOICES
1998年

VOICESジャケット

こちらも入手困難でしたが、なんとかメルカリで入手しました。英語版のオリジナルは、シングルCD【愛は強い Stronger Than Iron】(1991年)のカップリングでしたね。後にベスト盤などにも収録されていないようなので(筆者調べ)、今となっては貴重です。買っておいてよかった(笑)。

Stornger than Iron
アーティスト:高橋幸宏
1991年

シングルCDジャケット


⑬X’mas Day In The Next Life

アーティスト:Smooth Ace
作詞:鈴木慶一
作曲:高橋幸宏
アルバム名:Smooth Le Gout Avec Piano
2002年

幸宏さんのライブではコーラスとして度々登場していたSmooth Aceのお二人。ア・カペラのボーカルデュオというのがwikiでの説明です(笑)。ア・カペラですから、歌唱力は申し分なし。Smooth Ace版はピアノの伴奏だけのシンプルさですが、歌がストレートに伝わってきます。現在2月でクリスマスはまだまだ先ですが、今年のクリスマスにはぜひあなたのプレイリストに。

X’mas Day In The Next Life
アーティスト:山野ミナ
2021年

山野ミナは、2021年、高橋幸宏と伊藤ゴローの共同プロデュースによるアルバム【L'ATELIERアトリエ】でメジャーデビューした女性シンガーソングライター。当初、【X’mas Day In The Next Life】はこのアルバムに収録される予定だったそうですが、アルバム発売が夏だったということで、山野ミナ本人の意向で、この曲だけ冬に配信限定で発売されたとのこと。こういうこだわりっていいですよね。筆者もたまにカラオケに行ったりしますが、夏場にクリスマスソングとか粉雪とか歌っている人の気がしれない(笑)。
脱線ついでですが、昨年(2023年)の12月筆者の地元の少し落ち着いた感じの居酒屋で有線放送から幸宏版の【X’mas Day In The Next Life】が流れたときは驚きました。同席していた人の話を遮ってしまったほどです。なんといっても居酒屋の有線放送ですから…この曲って実は隠れたスタンダードナンバーになりつつあるのかもしれないなどと思った次第。Hana Hopeさんの公式YouTubeにもあったのでそちらもご紹介しておきましょう。

X’mas Day In The Next Life
アーティスト:Hana Hope
2021年

 幸宏版は1990年にシングルCDとして発売されました。1990年といえば、湾岸戦争が始まった年。カップリング曲の【神を忘れて、祝えよX'mas time】の歌詞はそんな時代背景を反映していると思いますが、世界はいまもこの時代と変わっていないと感じます。

X’mas Day In The Next Life
アーティスト:高橋幸宏
1990年(収録アルバムは1991年)


⑭Extra-Ordinary

アーティスト:Public Practice
作詞:高橋幸宏、Peter Barakan
作曲:高橋幸宏
アルバム名:Disposable
2019年

オリジナルは【NEUROMANTIC】(1981年)に収録されている曲ですから、40年近く後にカバーされたということになります。幸宏さんが亡くなった直後にDuran Duranのメンバーが【NEUROMANTIC】は名盤と称えていたぐらいなので、カバーされること自体にあまり驚きはないのですが、YouTubeでこの曲を発見したときは、ちょっとぶっ飛びました。なんというか、オリジナルに比べてパワフルというか、ちょっと乱暴というか…それも味わいといえば、味わいですかね。
Public Practiceはニューヨーク・ブルックリンに拠点を置くポストパンク・バンドとのことですが、ポストパンクがいまひとつよくわからない…【Disposable】というシングルのカップリング曲として収録されているようです。

曲の最後の歌詞「Rain or shine, it's all my destiny」の部分が好きなんですよね。「人生ってのはさあ、いいときもある。悪いときもある。」

Extra-Ordinary
アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:NEUROMANTIC
1981年


⑮LA ROSA

アーティスト:山野ミナ
作詞:高橋ユキヒロ
作曲:加藤和彦
アルバム名:L'ATELIERアトリエ
2021年

⑯海辺の荘

アーティスト:山野ミナ
作詞:鈴木慶一
作曲:高橋幸宏
アルバム名:L'ATELIERアトリエ
2021年

前述の通り、山野ミナは、2021年、高橋幸宏と伊藤ゴローの共同プロデュースによるアルバム【L'ATELIERアトリエ】でメジャーデビューした女性シンガーソングライター。おそらく幸宏さんが最後にプロデュースしたアーティストです。このアルバムの中で【LA ROSA】と【海辺の荘】をカバー。彼女の深みのある声で歌い上げるこの2曲は幸宏ボーカルとはまた違う味わいがあります。ちなみに【海辺の荘】では幸宏さんがコーラスを担当しています。
公式にあるライブ映像。幸宏さんのコーラスはありませんが、歌っている山野さんのお姿です。

アルバムには入ってませんがこちらも。

筆者が初めて入手した幸宏作品は【音楽殺人】で、そのあとはアルバムがリリースされる順番で購入していたのですが、ソロ第一作である【Saravah!】の入手はだいぶ後でした。中学生、高校生にとって、LP1枚は結構高価。なのでなかなか手が出なかったという記憶があります。初めて聴いたときもなんか不思議な感じがしました。【音楽殺人】以降のテクノ、ニュー・ウェイヴの流れとは全然違う世界。少し違和感も感じたりしたものですが、今ではもちろん大好きな1枚です。
さて、幸宏さんが日本語歌う曲はたくさんありますが【Saravah!】に収録の曲だけがもつ特徴があります。それは二人称に「お前」が使われている曲があることです。4thアルバム【What, Me Worry?】以降(2nd、3rdは全英語曲)の日本語曲の二人称は「君」がほとんどで「あなた」がたまにという感じ。幸宏さんのパブリックイメージ的にも「お前」は合っていないと感じます。幸宏さんの歌うラブソングが、より幸宏さんっぽくなっていく以前の作品、それが【Saravah!】なのかもしれません。

LA ROSA
アーティスト:高橋ユキヒロ
アルバム名:Saravah!
1978年

LA ROSA
アーティスト:高橋ユキヒロ
アルバム名:Saravah Saravah!
2018年

鈴木慶一から最初に届いた曲名は「高橋荘」(笑)だったそうで、幸宏さんがそれだけは勘弁してと言ったみたいなエピソードをラジオで聴いた記憶があります。「高橋荘」…味はあるけど、年季の入ったアパートみたいで幸宏っぽくはないですね。
結果【海辺の荘】となったこの曲。鈴木慶一が「高橋幸宏は海辺の家で若い女と暮らしているに違いない」という妄想(?)から出来上がった詞のようです(笑)
この頃の幸宏さんは海辺(伊豆)に別荘を構えていたそうで、その当時の話を面白おかしく伝えてくれたのは桑田佳祐でした。
幸宏さんがMCをしていた【AXEL】というテレビ番組(もしかしたら違う番組かも)にゲスト出演した桑田佳祐。幸宏さんの伊豆の家と彼の家はご近所だったようで、桑田家に釣った魚を携えてやってくる幸宏さんのエピソードを楽しそうに話していました。
幸宏さんが亡くなったすぐ後、桑田佳祐のラジオ番組で幸宏さんの思い出を語っていました。その内容も【AXEL】のエピソードに近いものでしたね。記事を見つけたので貼っておきます。


⑰Brand New Day

アーティスト:Hana Hope
作詞:高橋幸宏、Peter Barakan
作曲:高橋幸宏
2021年

筆者がHana Hopeを初めて知ったのは、2020年公開の映画【音響ハウス Melody-Go-Round】。正直、そのときは「こういう人がいるんだね」程度の興味でした。彼女が筆者の中で少し重みをもったのは、2022年の幸宏さん50周年のライブからでしょう。歌声が素晴らしい。
今回のカバーしている人探しはCDや配信サービスなどで入手可能なものに限ろうかと思っていたのですが、前述のさいこうたま同様、プロが提供しているものということで、こちらも入れました。
オリジナルはご存じ【POISSON D'AVRIL 四月の魚】(1985年)に収録された曲。1986年公開の同名映画のサントラですが、映画の公開が遅れてサントラが先に発売になってしまったようです。当時、有楽町の単館系映画館で観た記憶があります。あの映画館なんて名前だったかな…その後、VHSのビデオソフトで購入。さらにDVD版も購入しました。ファンは大変です(笑)。

Brand New Day
アーティスト:高橋幸宏
アルバム名:POISSON D'AVRIL 四月の魚
1985年



⑱This  Strange Obsession

アーティスト:Zaine Griff
作詞/作曲:Zaine Griff
アルバム名:A Double Life
2024年

【This  Strange Obsession】は幸宏さんの3rdアルバム【What, Me Worry?】にZaine Griffが提供した曲。幸宏さんの声が好きな私は、この曲はちょっと苦手でした。なんというか、Zaine Griffのちょっと粘るようなボーカルに馴染めないという感じでしょうか。アルバムごと聴くの当たり前だった時代は、それなりの頻度でこの曲も聴いていましたが、好きな曲だけでプレイリストを作るというスタイルになってからは、あまり聴いていなかった曲です。今回、Zaine Griffのセルフカバーとともにオリジナルも聴いてみて、結構好きになりました。
このアルバムにはYMOの【以心電信】のカバーも収録されています。こちらも必聴。


トリビュート版もご紹介

カバーという意味では2012年にリリースされた【RED DIAMOND~Tribute to Yukihiro Takahashi】もご紹介しておきましょう。pupaのメンバーや細野さんと教授、鈴木慶一、スカパラ、スティーブ・ジャンセンなどのおなじみのメンバーに加え、トッド・ラングレンや宮沢りえも参加しているアルバムです。とくにpupaメンバーの【元気ならうれしいね】はおすすめです。


最後に

だいぶ長い記事になりました。この幸宏さんをカバーしている人というテーマは、⑭曲目としてご紹介したPublic Practiceの【Extra-Ordinary】を数年前に発見したときに、浮かんでいたものです。幸宏さんをカバーしている人ってどのぐらいいるのか…当初把握していたのは10曲ほど。結局こんな曲数になってしまうとは…
筆者が知らないだけで、他にもまだまだあるのかもしれません。今回紹介した以外にも知っている方がいれば、ぜひお知らせください。
カバーする人って、これからも出てくる可能性があるので、気は抜けないですね(笑)
I'm still walking!

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