VdBL俳句を作ろう 3日め/2月8日前半戦

言の葉が枯れてゆくこと

昨日、眠る前に「打越マトリクス」をやってみた。まんなかには月を置いた。小封筒にマジックで、月を囲んでゆく。雪、花、夜、太陽、海、兎、死……ことばがぐるぐるとうずをまいてゆく。枝は思ったように伸びず、だんだん苦しくなってきた。マジックを置いてマトリクスを見ると、枯れた木みたいに見えた。これが私のことばか。なんか、なんか、私の中のことばって、こんなもんだったっけ。こどものころは辞書を読むだけでわくわくした。新しいことばを知るだけで楽しかった。世界はことばでできているんだ、私もことばでできているんだ、私がことばを知ることは、世界を豊かにすることなんだ、と思っていたのに。もうずいぶん長い間そのことを忘れていた。「お礼」「テンプレート」でgoogle検索して例文をチェックしてビジネス文書を次から次へと作成しているうちに、私が私のことばを貧しくしてしまったのではないかと思うと苦しい。言葉が枯れている。私が枯らしたのだ。

何がそんなに難しいの?

俳句を作ることに感じる難しさは、私のことばが手垢にまみれていることにある。何言ってんだこいつと思われるかもしれないが、私は本と関わっている仕事でもあり、こどものころからよく本を読んできた。つまり、兎ははねるとか、クジラが泳ぐとか、サルも木から落ちるとか、決まったことばの結びつきが山ほどストックされていて、そこからあえてそれることがしんどいし、時間もかかる。こどもや人口知能が時に優れた詩を作るのは、ことばのイメージがまだ新しいからではないだろうか。思いがけないことばとことばの結びつきに詩性があるとすれば、私の中のことばを見つめなおさねばならない。ふだん、なんとなく、意味もなく、適当に、ことばを浪費し続けていくうちに、私の中のことばは決まり文句だらけになってしまった。

そんな訳で3日めにして、もうしのごの言ってはいられないので、音数を守ることは努力目標に切り替える。なんとなく17音ならもうそれでよし。季語は季重なりになっても良いのでがんばって入れる。二物衝撃とか、一物合わせとか、それは頭の片隅におきつつ、いったんは忘れよう。私は私のことばをないがしろにしてきたことにようやく気が付いたところで、とりいそぎ手当てをしてやらねばならない。

おかしいな、BLの萌えシチュできゃっきゃうふふっていうノリでは全然ない。バレンタインデーにBL俳句を詠む、当初の目標をあきらめてはいないのにな。

方法:12音ひとかたまりをたくさん作ってから、5音(季語)と組み合わせる。動かなくなるまで読んでは試すを繰り返す。

12音。7音、5音の組み合わせ。もしくは6音、6音。そしてもう先生と呼ぶべきはんぺんさんいわく、7音は3音、4音に分解できる。

3音名詞、ピアノ、くじら、パセリ、真珠、もしくはあいうえお順に、アンズ、いちご、植木、英知、オッズ、カルタ、金庫、苦笑……(オッズは3音?)これはたぶん出せる。

4音名詞と結びつけやすい形容詞、これもあいうえお順で、思いつかなければ飛ばす、明るい、おいしい、かわいい、苦しい、恋しい、さみしい、しんどい、涼しい…これもこだわらなければ出せる。

とりあえず意味が離れているもので組み合わせて7音、おいしいピアノ、恋しいくじら、さみしいカルタ、とか。いやでもこれ離れてないな。しかも形容詞+名詞って扱いにくい。主体がわからん。(私が)くじらが恋しいのか、くじらが(何かを)恋しいのか。このやり方は失敗か。季語が入ってるかなあ。くじらって季語なのか。はい検索→冬の季語で却下!

一応動詞も2音飽く、行く、憂く、得る、置く、書く、これも限りないな。3音、あがく、祝う、受かる、餌付く、襲う。4音から難しくなるかな。

しょうがない音はすてて、作った形容詞+名詞の組み合わせに合わせて12音のフレーズを考えてみるとか。このやり方で良いのかな。意外性のある組み合わせというだけでなんら実感を伴わないことばを組み合わせていくのはどうなんだろう。ぐぬぬぬぬぬ。とりあえず1句はこれで、じゃあピアノで!なんぼなんでも季語ではあるまい。もうBLでもバレンタインでもないね。迷子だよう。

ここでストップ……!!!いったん休憩してもどる。

ひとやすみして歳時記のぱっと開いたページから「紙風船君の息吹に満たされる」バレンタイン要素はすてて、BLだけならなんとか……なんとか。