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「しずく」/西 加奈子 読書徒然vol.1

2016.5.17
西加奈子さんの「しずく」を読んだ
いつもは集中力が続かなくて
1冊読みきるのに何日かかかるのだけど
久しぶりに最後まで読みきりたいとおもう本との出逢いだった


6つのお話の短篇集
西さんの小説を読むといつも感じるのだけど
やっぱりこの小説に出てくる人物達もすごく個性的で読んでて楽しかったー!
主人公だけじゃなく、その周りにいる人達も
キラキラ光って魅力的なのが西さんの小説の凄いところだ
周りの人達の視点からの物語も読んでみたい!
そんな風に感じる魅力に溢れてる
あと西さん独特のぶっ飛んでる雰囲気の文章
色の描写 やっぱり素敵だ
その中に優しさも詰まっててすごかった

どのお話も、
本当の自分でいたいけどいろんなことがあって
それが難しくて
でもそのぐるぐるの中で、もがく中で気付きが
あったり
他人との出逢いがあって本当の気持ちに
気付けたり
最後にはどの主人公も自分なりの答えを出して
進んでいく感じがすごく胸に響いた

あと好きな人がいて、その人の好みに合わせる
ために自分の本当の気持ちを隠したりとか
気に入られるような振る舞いをしちゃう気持ちが
すごく上手に描かれていて
そうなんだよー!ってなった...!
嫌われたくないからそうしちゃうんだけど
そうしてる自分は苦しかったりとかあるけど
それくらい好きになれる人に出逢えることって
すごいことだと感じる


1番好きだったのは「影」という物語
印象に残る言葉が沢山あった
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(本文より)
『皆から自分という人間を決め付けられるのは、恐ろしいことです。』 
『私は自分の影のように、環境によって形を
変え、時には消えさえした。皆の思う「私」を、
忠実に演じていれば、それで良かった。』 

『ぐにゃぐにゃと隆起する砂に合わせ、それは
いとも簡単に姿を変えた。荒れた海に入ったら、それに合わせた荒々しい影になるだろうし、
静かな道を歩いていたら、夜のように静かな影に
なるだろう。
でも、思った。それもどれも、自分の影だ。
(中略)
皆、「私」の影なのだ。
それを作ることが出来るのは、私しかいないし、
どの影だって、結局は「私」のものなのだ。
(中略)
嘘をつこうが、自分を作ろうが、
それをするのはすべて「自分」なのだ。
「ありのままの私」なんて、知らない。
今この地面に足をつけている、この足こそが
私のものだし、他の何者にだって、
変わることは出来ない。
変わりたい、と思っている、自分が
いるだけだ。』  
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主人公はこの気持ちに気付いた時に、
以前は憂鬱に思ってた色がそうは思わなくなって
この場面が、すごくそうだよなあって心に染みた

同じ景色とかをみても感じるものは人それぞれでさらに自分自身でもその時の心情によって全く
違う想いが生まれたり

自分がいて、他人がいて、それぞれの世界がある全部、自分次第
心がスーッとなる1冊

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