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何故、高熱が出た後は体温が低くなるのか? ~先人から学ぶ身体のこと~

昨年末から本を読むペースと量が2倍近くになった。
理由は、ひょんなことから友人に懇願され、講師業をする羽目になったからだ。

最大のインプット効果は、最短最速でアウトプットする事。それを実感するi年なのだなと、初秋の風と共に夏が過ぎ去ろうとする今、改めて実感している。

活字中毒者で活字依存症の私

元々、本屋に行くと有り金全部使い切る勢いで本を選んでしまい、ふと、我に返って財布の中身と緊急会議を開くことが多かったが、今回は違う。

「仕事のための資料だから!」

そう、講座資料を作る為の学びという大義名分をかざし、ネットショッピングすることを繰り返すうちに、ひと月で4万円以上の書籍代という過去最高金額を叩きだした時は、流石に明細を見て、立ちくらみがした。

毎月、講座の前に自分で選んだ課題図書が机に積まれていく。
少しの移動は、公共交通機関を使い、なるべく活字を目で追う日々。

正直、全ての本について感想を書けるかと訊かれたら、当然、無理だ。

しかし、そのちぎっては投げちぎっては投げした8か月分の本の山の中から、どうしても紹介しておきたいと思う本がいくつかある。
その内の1冊をご紹介したいと思う。

「常識を疑え」という帯コピー

2020年と言う年を5年後、または20年後に振り返った時、おそらくこういうと思う。

「生き方を大きく方向転換し始めるきっかけになった年」

これは、恐らく、今この文章を読んでくださっているほぼ全員の皆さんが、大なり小なり実感されていると思う。昨年はあまり影響が無かったとしても、2021年に入って、さらにその影響は大きくなっているし、変化のスピードも加速しているように感じる。

人生と言うモノは、フィクションよりも波乱に満ちている。
この1年で、何度となく感じることがあっただろう。

夏が始まるころのことだ。知人が相次いで、新型コロナウィルスの陽性反応によって、隔離されるという事が起きた。
入院した人、ホテルに収容されて隔離状態になった人、自宅療養になった人。
その中の一人から、こんなメールがあった。

「熱が安定しなくて、昨日は38度以上あったのに、今日は36度前後なんです」

文章からも不安がにじみ出る。確かに、たった十数時間で2度以上体温の変化起きたら、普通は焦るし、怖いと思う。

でも、実は、怖くないのだ。

怖いのは、私たちが風邪と言う症状について、なんとなくの知識や経験しかもっていないからなのだ。
ヒトの本能は、「知らないモノ」への拒絶反応を起こす。
それが、「恐れ」なのだ。
恐れや不安は、「自分の命を守りたい!」という生存本能の働きなのだ。

何故、風邪を引いた時に極端な体温の変化が起きるのか

ちょうど友人からメールを貰った時、読み終えていた本の中にその答えを出してくれた本があった。

1962年、昭和の高度成長期のど真ん中に書かれた本。
タイトルはずばり、「風邪の効用」という本だ。野口整体という呼ばれ方が良く知られているけれど、戦後たった10年しかたっていない頃に当時の文部省認定で「社団法人整体教会」を設立した、故野口晴哉さんが書かれた本だ。

何故、38度の高熱が出て数時間後に、体温が36度まで下がるのか。

野口さんの本によると、こういうことだそう

「高熱を出すことで、消耗した身体を冷まし、休養をとるため」

熱が出るなんて、迷惑以外何ものでも無い。そう信じていらっしゃる人には、何を言ってるんだ?と思われそうである。でも、一度、冷静になって考えてみて欲しい。

そもそも何故、風邪を引くと体温が38度以上になるのだろうか?

免疫とは、そもそもどういうモノなのか?

私たちの身体には、免疫と呼ばれる働きが有る。単語としては、皆さんよく口にするけれど、じゃあ実際に、免疫って何ですか?と訊かれた時に、何と答えるだろうか?

身体を守る働き。
病気にならないための働き。

おそらく、だいたいそんな感じに説明をされるだろうと思う。

免疫と言うのは、主に2つの役割を持っている。
1つは、ここ1年世界中をにぎわしている新型ウィルスのように、外部からの病原体と戦うことだ。多くの人は、免疫はこの部分だけしかしていないと思っていると思う。余所から来た敵をやっつけるのが免疫だとすると、当然、戦えば戦うほど、戦闘民族のように経験値が上がり、強くなるはずだ。

でも、私たち人間の歴史を見ると、過去、何度も何度も、伝染病と言う的に襲われているし、その回数の割には現代人って昔より、病気持ちではないだろうか?

ちなみに、風邪を一瞬で治す薬や予報接種が発明、発見出来たらノーベル賞モノという。

東洋医学の基礎テキストとも言われる「黄帝内経」という三千年前にかかれた中医学書にも、風邪を治す特効薬や治療法と言うモノは書かれていない。

もし、人間の免疫が「義的と戦って強くなる」というRPGヒーロー型タイプであれば、数千年もの間、何度となく風邪と言う敵に悩まされ続けているのは、何故なのだろう?

確かに、免疫にはRPGヒーロー的な部分はある。戦えば戦うほど、経験を積み、次に備えて対策を練って、撃破する。それを、病理学では獲得免疫という。経験値を獲得して強くなるからだ。

実は、そっちよりも重要な役目が有る。
それは、自然免疫と呼ばれる、私たちの祖先から受け継いできたDNAにあらかじめプログラミングされている防衛システムのことだ。

「俺か、俺以外か」という区別

日本人の死因はここ10年、がん、脳卒中、老衰がトップ3を保持している。私の母もがんで他界しているし、今年の初めには小学校の同級生ががんで帰らぬ人になった。

でも、がん細胞は39度3分以上の体温になると死滅するということを知っている人は、一体どのくらいいるだろうか?

ちなみに、がん細胞というのは、DNAのコピーミスで起きる。どんなに健康で食べるものを気を付けて、ありとあらゆるストレスを無くしている人でも、毎日5000~10000個コピーミスによるエラー細胞が発生している。だから、老若男女、いろんな世代でがんと診断される人がいる。

実はそのエラーも想定内の内だったと知ったら、どうだろうか?

そのミスコピーを区別するのが、「俺か、俺以外か」というあの名言である。
免疫学では「自己と非自己」という言葉で、がん細胞を制御してくれるT-reg(制御性T細胞)とよばれる免疫細胞について研究が進んでいる。

つまり、

自己=自分の細胞だと認識するか、
非自己=自分の細胞とは別ものだと認識するか。

これが、がん治療だけでなく、アレルギーなどの自己免疫疾患全般において、とても重要な「俺か、俺以外か」問題なのである。

最近、オートファジーダイエットなる言葉を耳にするけれど、そのオートファジーと言うのは、もともとエラー細胞を食べてシュレッダーしてしまう自然免疫だと言う事を知った上で、ダイエットと組み合わされているという事を、一体、どのくらいの人が分かっているのだろうか?

自然免疫には、いろんな働きが有る。

身体の中に病原体が入ったという情報が入れば、体温を急激に上げて熱責めをする。インフルエンザに感染して、40度前後の高温が出た経験が皆さん1回くらいあるだろう。あれも、インフルエンザウィルスが高温に弱いという情報を、獲得免疫チームがちゃんとデータ保存しているから、司令塔で病原体撲滅チーム軍師であるB細胞が

「体温上げて、敵を焼き払うぞー!!!」
「焼き払え―!!!」

という指示を全身に送ることで、筋肉を中心に細胞内で熱が大量に作られて、体温が上がるのだ。寒気がして、全身が震えるのも、熱を作って、敵を焼き殺すためなのだ。

だから、当然、いつもより体力を使うので、へとへとになる。体温をいつもの1.5倍以上に上げて戦うのだから、当然、しっかりと身体を休めないといけない。絶対安静で休むために、体温を平熱以下に下げて、身体を動かさない。心臓と呼吸。最低限の基礎代謝だけを行うように、強制ブレーカーダウン。脳が全ての運動機能をフリーズ状態に強制的にしようとするのだ。

これが、風邪で高熱が出た後に、体温が36度前後までに下がる理由だ。

でも、現代人の多くは、身体の声を聴けない。仕事や家族、社会人としての自分の役割分担だけしか見えていないから、熱が出ても薬で下げようとして、結局、病原体自体を焼き殺すことも出来ないから、体調不良がズルズルと長引いてしまうのだ。

あなたの平熱、36.5度以上有りますか?


定期的に、高熱を出すという事は、ある意味、身体が本来の仕事をきちんとしてくれているという事だ。そして、逆に言うと、高熱を出せるだけの体力が有るという事でもある。

がんが進行すると、他の病気にかからないという。それは、外敵担当の獲得免疫も、エラー処理班の自然免疫も、がん細胞との戦いでてんやわんやなのだ。体力も下がる。ということは、高熱を出して、エラー細胞を焼くつくすことも出来なくなるし、そもそもがんを宣告された多くに人は、体温が36度前後もしくは、35度台な人が多い。がん細胞は、低温と甘いものが大好物。その二つが揃っていると、あっという間に増えてしまう。

そう考えると、もっと身体の事を知り、身体の声を聴いてみたくならないだろうか?

敵は本当に外から来るのか?


自己免疫疾患、という言葉を聞いたことがある人は多いと思う。アレルギー反応ともういうけれど、本来、何の影響もないはずの花粉や食べ物に対して、身体が反応して、咳や肌荒れなどが起きてしまうことだ。

この自己免疫、実は自然免疫の一部分である。
つまり、エラーで反応が起きているという事だ。つまり、ちょっと乱暴な言い方をすると、がんも自己免疫疾患の一つと言えるのだ。

私たち人間は、科学的な進歩を遂げていると言いながら、自分の身体の事すら実は、何一つ分かろうとせずに、病原体や花粉、PM2.5などの外から来る敵にばかり原因をなすりつけてはいないだろうか?

真実は、最新の情報にだけ書かれているとは限らない

野口先生の本は、昭和の高度成長期 、つまり、日本人の死因が脳や血管の病気にかかれている本だし、その頃と2021年を比べると、日本人の生活スタイル自体も雲泥の差が有る。

だからこそ、この「風邪の効用」という本は、もう一度身体と言うモノと向き合う上で読み直す価値が非常に高いのではないだろうか?

全てのモノには、原因が有る。我が家のように、甘いものが好きで煙草を1日1箱吸う父よりも、昭和の末期から食品添加物に気を使い、健康そのものに見えた母が40歳そこそこでがんにかかったことも、いろんな理由が有るだろう。

だからこそ、私は、母の姿から、本当の健康とは何かということを10代から考え続けている。

自分の身体の面倒を自分で見るためには


医学を独自の目線から学び続けて、もうすぐ10年。植物療法でいろんな友人たちの体調やメンタルをサポートしてきた。

身体と言う小さな宇宙についての探究心は、医療を本業にされている医療従事者の人たちと変わらないと思う。脳科学や制御性T細胞、ミトコンドリア。これらの分野に関して、日本人の研究が世界レベルであることも医学関連書の乱読の中で知り、この数か月、何度もすごいなと感じた。
人体の不思議を研究し続けている人たちがいてくださるから、こうして、私たちは少しづつ、身体のしくみを理解して行くことが出来ている。とてもありがたい事だと思う。

でも、いつだって、自分はまだまだ、勉強も経験も足りていないから、疑問が湧いたら調べて解決していくという繰り返しである。

それすらも、知識欲旺盛な私にはたまらなく至福な学びである。

私は、ただの植物療法セラピストである。

しかし、誰かの病気を治すほどの事は出来なくても、自分の健康を管理する21世紀のリベラルアーツ、自由に生きる知恵は位につけていきたい。

「青さんから、ぜひ聴きたい!」

そんなラブコールをしてくださった、受講生である年上の友人たちには、とても感謝している。友人たちのおかげで、この文章も書くことが出来た。
ここ数か月、読書と文書化という自分の得意なことで誰かの役に立てるという機会を与えてもらえたことを去年、そして30年前、途方に暮れていた自分へ教えてあげたい。


熱が出たら、しっかりと出し切る。

そんなことで、済むのであれば、体調不良すら自分の生活を振り返る判断材料として使えるのではないだろうか?


本は、時空を超えて知恵を授けてくれる。
私はきっとこの先も「風邪の効用」を何度も読み返し、必要な人へ貸し出すだろう。

そして身体との会話の仕方を思い出していくお手伝いを続けていきたいと思う。

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