逆噴射小説大賞2019振り返り

はじめに

 逆噴射小説大賞、お疲れさまでした。私はといえばレギュレーション上限5本に対して4本止まり!の結果で終わりました。
 もう1本分に出来そうなアイデアは複数浮かんでいて、実際いくつか800文字以上は書いていたのに、どれも面白くまとめきることが出来ず断念してしまいました。800文字ってめちゃくちゃ難しい!話がまとまらない!

 最初にレギュレーションを見た段階では「去年の400文字から使える文字数が倍に増えた分、ひょっとするとギリギリまで内容を切り詰めて取捨選択する面での大変さは減るんじゃないか?」と思っていたんですが、当然ながらそんなことはなく、一発ネタ的なアイデアだと800文字の間に失速しかねず、やりたい要素を全部詰め込んで提示するには狭すぎる。やはり順当に文字数が増えた分難易度も上がっていたな、というのが所感です。

 また、今回は投稿数に縛りがあったこともあり、他の人の投稿作の雰囲気や自分の中の「パルプ観」みたいなものを意識しすぎず、なるべく自分の趣味に素直に従って作ったものを出そうと考えていました。
 これは前回大会に出したものでそのあたりを意識しすぎた作品が概ねしんどい感じになっているところの反省ですね(構成要素から作ったものでアレな感じになったものもありますが……)。
 結果としてはどれも自分としては満足のいく内容になり、大変ありがたいことにどの作品も結構な数のスキを、さらにtwitterでも複数の反応を頂くことが出来ました。ありがとうございました!

 では以下早速振り返りを。

名前をおしえて

 一発目。未知の怪異と戦う女。相方は生きる怪異辞典。その知識量は本物だが、性格に難ありで名前さえ教えてもらえない。少しは仲良くやっていきたいけれど……そんな二人を本物の「未知」が襲う。

 現代、妖怪退治、バディもの。女二人で怪物退治する構図は概ね「裏世界ピクニック」。というか、これに関しては同作の著者の方が「語るな、やれ」というコトダマを残しておられるので触発されてやったというところが大。これがそのジャンルに属するものであると名乗るのは恐れ多いので単語は出しませんが……

 冒頭の文章がパリッと仕上がり、その後をちょっと崩し気味のテンションとして程よいバランスに書けたのが自分としては高ポイント。
 互いの名前を知らないのは組織がそういうルール(妖怪とかに本名を知られると呪殺されるので)というようなことを当初は書いていたんですが、少々冗長だったのと、そもそも文字数の絡みもあって削除せざるを得ず、単に相方の性格がアレという感じに。許せ。
 ちなみに最後の「あれ」は元々かなりギャグっぽい正体を考えていたんですが、800文字に収めようと色々削ったり方向性を調整したりするうちにいつの間にか冒頭がシリアス寄りな雰囲気にまとまっていたので、そのままだとぶち壊しになりそう。一応今回投稿した作品はどれもちゃんと冒頭以降の筋を考えているんですが、この作品に関してはそこの問題で現状かなりふわっとしています。

雛鳥たちの戦争

 二発目。未来の戦争の更に後、黎明期の無人戦闘機とともに戦った男へのインタビュー。当初パイロットたちが警戒していたそれは、飛行すら困難な欠陥機だった。不名誉とともに静かに消えていくはずだった無人機は、しかし戦争へと飲み込まれていく……

 現代戦、空戦、無人戦闘機、インタビュー形式。まあ隠しようもなく完全に「エースコンバット」シリーズのフォーマットの影響を受けた作品で、特に「ZERO」および今年発売の「7」の影響が大ですね。その他「マクロスプラス」とかこれまでに私が摂取した無人戦闘機ものエッセンスが混ざってそうな感じです。

 大体において無人機は大体パイロットの仕事とプライドを奪う強力なライバルとして描かれがちな印象がありますが、逆に無人機が人間の庇護が必要なほど弱いものであった場合どうなるのか?というのが着想元。文章の雰囲気として全体に仄暗く、すごく自分好みな空気感のある文章になっているのはとても満足です。

メイド・ウエスト・ガンパウダー

 三発目。少女の一族が守ってきた土地は、陰謀と暴力を前にして理不尽にも奪い取られようとしていた。その絶望を砕くは一発の銃声、メイドの手に握られたリボルバー。

 西部劇、メイドと主人、銃器、殺伐世界と信義。「プリンセス・プリンシパル」を見て以降、現代異世界もいいけど、近世・近代を舞台にした話をもっと見たいぜ……!という気持ちが燻ぶり続けていて、実際やったもの。自分が直近で摂取した西部劇がそれだからというのも大きいですが、「RDR2」が見せてくれた陰鬱な西部の空気感の影響は大。

 原型としては現アイコンのドット絵を作った時に考えた脳内設定ストーリーで、これはまさに「一人称で銃をぶっ放して人が死ぬ話」になるじゃないかと思い立って一気に書いたもの。他のアイデアがあらかた煮詰まって死にそうになっている最中に書き始めたところ、全く迷わずスパッと投稿までなだれ込めたので書いていてとても楽しかったです。
 タイトルまでその場のテンションで決めたので、今にして思えば「~ガンスモーク」の方が良かった感がありますが後の祭り。ファニングショットを書けたので自己満足ポイント倍点。

ナガヤマ・カイジュー・ディフェンス社「ジェットセイバーⅤ」墜落事件

 4発目。街を踏み潰す巨大な怪獣と、それと戦う巨大な変形合体ロボ――の事故調査委員会。暴風を吹き出す怪獣と対峙していた新型合体ロボ「ジェットセイバーⅤ」はなぜ墜落したのか。真相究明は彼らに託された。

 メーデー!、巨大ロボもの、社会派(?)。今回投稿した中では一番の問題作と言うか、どう考えても構成要素が露骨すぎ、かつニッチを攻めすぎていますね……でもおれこういうの好きなんだもん……
 インスパイア元は先述の通り航空事故調査を扱うドキュメンタリー番組「メーデー!」と、怪獣VS巨大ロボの要素に関しては「パシフィック・リム」と「地球防衛企業ダイ・ガード」を和えたようなイメージ。並びにそれらの祖と言えるマジンガーとかゲッターが挙げられるでしょうか。

 「メーデー!」は1話完結のドラマ的にも面白く見られるシリーズですが、特に面白いのは純粋なヒューマンエラーの積み重ねによって墜落に繋がるパターンの回。シビアな旅客機運用の現場においても、人間や企業組織がそれを回している以上は一般人にも見覚えのあるジレンマやミスの挟まる余地があるもので、それが事故後の調査で明らかにされていく過程は色々と身に染みるものがあるわけです。

 そういう感触を巨大ロボもので表現できたらきっと面白いはず、という単純な考えで出力されたのがこちら。そうは言っても800文字では原因の欠片も描写できていないので、これはちゃんと書き上げて初めて面白くなるネタではあろうなとは思います。それならなぜこのレギュレーションの大会に出したという話になりますが……だって書いてみたくなっちゃったし……

未来へ……

 終わってみれば投稿作に関しては良い意味でまとまりが無いと言うか、どれも自分の好きな要素を詰め込みつつ個性のある出来栄えとなり、当初の思惑通りに仕上がったということで良かったと思っています。
 また、全体的にどれも落ち着いたシリアスなテンションでまとまった印象。自分はどうにもハイテンションな(逆噴射界隈で言うところの「胡乱」的な)文章を書くのが得意ではない、というのを前回大会とその後のあれこれで痛感したので、やはり自分にあった武器で戦おうという気持ちがあります。

 なんと言っても今回を振り返って悔しいのは4作投稿に終わってしまったこと。ここは会期中の仕事の忙しさやメンタルの不安定さを言い訳にしたいところですが、やはり純粋な実力不足が大きいですね。来年はレギュレーション上限までアウトプットを出したいところです。
 それを達成するためにはやはりプラクティスを積むしかないんだよなあとは思うところですが、下手に自分を追い込んでもまたメンタルと作品を巻き込んで死ぬ可能性があるので、ここは思いつめすぎずボチボチやっていきたいところです。

 そういうわけで、大賞参加作の続きを書くか何か別のものを書くかさっぱり未定というところですが、また何か書いたらそのときはよろしくお願いします。今日のところは以上です。


おまけ:気になる方が居ればの去年分マガジンと振り返り記事リンク



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