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水島新司作品は永久に不滅です

2022年1月17日、漫画家の水島新司先生がお亡くなりになりました。

私の最も敬愛する漫画家、水島新司先生。

その魅力を少しでも多くの方に伝えられるよう、僭越ながらnoteを書かせていただきます。

1.キャラクターの魅力

本当に数多くのキャラクターをこの世に残してくれて、水島新司先生には感謝しかありません。

作者が空振りさせようとしたのに良いスイングしてホームラン打っちゃうようなキャラクターを描けるのは水島新司先生だけですよ。(笑)

(有名なエピソードですが、水島先生は岩鬼の三振を描こうとしたらあまりにも良いスイングに描けたためホームランに変更した事があるそうです。)

数作品ピックアップし、そのキャラクターの魅力について語っていきたいと思います。

 1-1 ドカベン

ドカベンは不言実行の主人公捕手山田太郎と、豪放磊落で自信満々なサード岩鬼正美の2人の物語です。

明訓四天王であるエース里中智とセカンド殿馬一人など魅力的なチームメイト達がおりますが、主役はこの2人のドカベンでしょう。

入団当初から圧倒的な実力で中心選手となり卒業まで四番としてチームを支えた山田と、パワーこそあれど雑なプレーや不遜な態度でチームメイトから煙たがられる事も多かった岩鬼。しかし山田だけはずっと岩鬼の事を認め、岩鬼はそれに応えるように成長を見せていきます。

この2人の関係性の描き方は大ゴマで表現することも無い、さりげないものです。それがいいんですよね。

ドリームトーナメント編の最終回、岩鬼の無茶苦茶とも取れるアドバイスを山田だけが信じ、サヨナラホームランを打つシーンはこの作品の本質を表しており、本当に感動的でした。

また、神奈川県のライバル、不知火守雲竜大五郎土門剛介も欠かせないキャラクター達です。不知火と雲竜は卒業まで何度も明訓高校との名勝負を演じてくれました。

ドカベン読者の誰もが最高の投手と口を揃えるであろう不知火と地方大会で何度も対戦させる、この構成には参りますよね。上手すぎます。笑

 1-2 あぶさん

この作品はのんべの代打屋のプロ野球生活を描いた、少し大人な作品と言えるでしょうか。主人公の景浦安武(あぶ)と周囲の人々との人間ドラマが物語のメインになっています。

のんべでしかも代打専門なので試合をしっかり描く必要が無く、人間ドラマをたっぷり盛り込める構成となっており、これまた上手すぎます。

この作品はとにかく主人公の景浦でしょう。あぶさんはとにかくカッコいいのです。山田太郎に輪をかけた不言実行具合で多くを語らず、野球にストイックで1つのプレーに執着しているような描写は稀ですがプロのプライドを持ってプレーしている。

あぶさんに憧れ、成人してしばらくはカッコつけてウイスキーと日本酒ばかり飲んでいた事は言うまでもありませんね。

 1-3 野球狂の詩

キャラクターという括りでこの作品を外す事は出来ません。この漫画は、水島新司先生がこんな野球選手がいたらどうかな?これはどうかな?というアイデア達をとにかくリアリティ関係なしで詰め込んだ、びっくり箱のような作品になっています。

完全出来高制の凸凹一二番コンビ唐部・丘、ハゲのスーパーショート千藤、歌舞伎出身のアーチスト四番国立、乞食の強打者金太郎、イボ痔の正捕手虎谷、400敗の大投手岩田鉄五郎、まだまだ挙げればキリがありませんが皆魅力的な選手たちです。

水原勇気の登場以降は左アンダースローを武器に初の女子プロ野球選手として活躍する彼女の物語となっていますが、それ以前の一話完結スタイルの物語が私は大好きでして。ぜひ読んでみてください!

(何巻か忘れましたがはじめの方の巻に「ミスジャッジ」という話がありまして、読切史上最高の面白さです。水島先生はこの素晴らしいネームを描けた瞬間どんな気持ちになったんでしょうかね。)

(あ、あと野球狂の詩が面白かった方は是非白球の詩という漫画も入手してください。野球狂の詩と近い雰囲気でめちゃくちゃ面白いです)

2.画力の素晴らしさ

私は水島新司先生のが大好きです。

描く構図がものすごく優れており、打者が打った後、グラウンド全体が映るような構図の大ゴマになるのが本当にカッコいいんですよ。

また、ユニフォームやヘルメットの描き込みなども本当に綺麗なんですよね。ある時期からはスクリーントーンで影を表しておられましたが、それ以前の作画での影の渋さが半端ないのです。あぶさんや光の小次郎でのナイター照明の表現なんて、たまらんすよ。

写実的な絵の上手さでは無く、デフォルメされたキャラクター達にリアリティと躍動感のある動きさせていく、漫画家としての画力の高さは何度読み返しても色褪せる事はありません。

3.筋書きの無いドラマ

「野球は筋書きの無いドラマだ」

この名言を地でいくのが水島新司先生の作品です。

近年の作品は最後に主人公が決めてチャンチャン、てなパターンが増えておりましたので、近年の水島新司先生の作品に触れてきた皆さんには多少違和感があるかもしれませんが、昔の作品は次の展開なんて全然分かりませんでした。

ドカベンで明訓高校が弁慶高校に敗れた時は読んでてひっくり返りましたし、2年春の甲子園決勝土佐丸高校戦、怪我がようやく治りバットが握れるとベンチで涙する主人公山田を差し置いて2つ前の殿馬が優勝を決めるサヨナラホームランを打った時はめちゃくちゃ興奮しましたよね。(そのあと訳わからなくてめちゃくちゃ笑いました)

また、努力が必ず報われるわけでは無い野球の厳しさも随所に垣間見えます。

光の小次郎は、新田小次郎という天才野球選手のめちゃくちゃな活躍を描く作品なのですが、毎回対戦相手の小次郎対策や努力・生き様などが強く描かれます。

そして、そうした努力を圧倒的な能力で上回り、小次郎は前期を2度の完全試合含む16勝0敗の成績で終えるのです。

チームを背負った四番やプロ野球の崖っぷちにいる男、多くの男がそのドラマと共に小次郎に向かって行きますが、実力の前に敗れ去って行きます。この野球の厳しさを描けるのは水島新司先生しかいません。

先生の描く学生野球も勿論大好きですが、野球に人生が乗っかるプロ野球を描かせたら水島新司先生の右に出るものは居ないと思います。

(光の小次郎は私の最もおすすめの水島新司作品になります。あぶさんや野球狂の詩のように現実のNPB球団を登場させるのではなく、架空の12球団を作り込んだ世界になっています。これだけでわくわくしてきません?)

(さらに付け加えると小次郎は打撃の能力も高く、ベテランのDH専門選手との対立なんかも描かれています。わくわくしてくるでしょう)

おわりに

男ドアホウ甲子園・野球狂の詩・ドカベン・球道くん・光の小次郎・ダントツ・大甲子園・白球の詩、この他にも書ききれないほど多くの作品が世に出ています。これだけ熱い思いを抱ける作品たちに出会えた私は幸せでした。

衝動的に書いた拙い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございます。

この記事をお読みいただいた皆様がどこかで水島新司先生の作品を手に取り、その素晴らしさに触れる機会があることを祈っております。

水島新司作品は永久に不滅です!

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