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5日目 - りかけいのおとこ
僕の将来の夢は科学者だった。
最初はたぶん、僕がそのように言うと、理科好きの父が嬉しそうな顔をするからだったと思う。
僕も嬉しそうな父を見るのが好きだった。なので理科の勉強も自由研究も頑張った。研究発表会では何枚か賞状も貰った。ほとんど父にキャリーされていた状態だったことには目を瞑るとして。
真似事でも好きだ好きだと言っていると本当に好きになるものらしく、気づけば大学院にまで進んでいた。物理をやったり宇宙に興味を持ったり、生物学をやったり医科学をやったり、相当ふらふら色々やった。
だけど今、僕は科学者になっていない。
日々パソコンをカタカタとする会社員になった。
見てくれだけは立派なりかけいのおとこになったけど。
今の僕を見て、科学者になりたかった僕は何を言うんだろうか。
何やってんだお前ェっ‼‼……とはたぶん言わない。
ほれみろこれこれこうしてカタカタソイヤ!とでも言っておけばスゲーッ!!!になること間違いなしだ。
僕はそういうチョロい子供だった。
父が好きなので父が好きな理科が好きになったし、
祖父が描くようなすごい絵が描きたくて絵を描いていたし、
先生みたいになりたくて古い漫画を読んだ。
歴史とか体育とか、どうしても好きになれないものはあったけど。
子どもの僕は、大好きな人たちの「好き」でできていたと思う。
それが科学者という形を取っていただけで、結局のところ周りに喜んでほしかったんじゃないだろうか。
僕が選んだのは、そういうことをとても大切にしている会社だ。
今目指しているものの本質は、僕が憧れていた科学者とそう変わらないはずだ。
……と、いうところでひとつ、脱線した僕を認めてくれないだろうかと祈ったりする。
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