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心も脳みそも侵された人に会った

1年前とてつもなく好きで、でも実らなかった人がいる。その人のことはもう忘れようと思い前を向くまで半年もかかってしまった。その間、その人が好きだと言っていたアーティストの曲を聴くだけでも耳を覆いたくなったし、ありもしなかった二人の未来を想像しては落ちこんでいた。そんな期間でもまた別に気になる人にも出会うことができて、思い出すことが少なくなってきた時に限って、連絡が来てしまうのだ。久しぶりにスマホのディスプレイに表示された通知は、私が半年前に欲しくてたまらなかった連絡、その人の名前を見ただけで、心臓が握りつぶされありえないスピードでどくどくと確実に波打っていた。仕事でこっちに来たから会いたいと。目頭が熱くなった。私が車を少し走らせば会いにいける距離にいる。今すぐにでも会いに行きたい気持ちを抑えて、予定があるから会えないと返信した。また会うと絶対に好きになることはわかっていたから。
それからまた別の日にも誘われ、断り、とうとう3度目誘われた時に私が折れて会うことになった。会いたくてたまらなかった人に会える。嬉しい気持ち反面、不安というか信じられない気持ちが混ざり合って現実味がなかったが、いざ約束した日にその人に会うと嬉しくて嬉しくて、やっぱり好きだと気持ちが溢れてきた。私の生活圏に、好きな人がいる。そして、私と歩いている。夢をみてるのではないかと何度も思った。一緒に過ごした日は天気がすごく良くて、夕日が綺麗だったので別れ際には感情が騙され、寂しさではなく清々しさが残った。その人はもう遠いところに帰ってしまい、多分、もう会うことはないと思う。会ってみるとやっぱり好きで、私の心、脳みそ、生活にその人が介入してしまって、別れ際の清々しさは消え去り今はただ辛いが残ってしまった。それでも会えて良かったと思う。ただ一つ心残りがあるとするならば、あの時何度も誘ってくれてありがとう、と言えなかったことだけだ。

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