【TOR】菊池の対価として有望株3名は決して出し過ぎではない
ブルージェイズはトレードデッドラインでガルシア、ジャンセン、ピアソン、IKF、キアマイヤー、リチャーズと多数の選手を放出しましたが、何と言っても話題になったのは菊池のトレードです。保有期間半年の菊池の対価として、ブルージェイズはジェイク・ブロス、ジョイー・ロペフィード、ウィル・ワグナーの3名の有望株を獲得しました。
Baseball Americaの球団内ランキングではブロスは2位、ロペフィードは5位、ワグナーは19位ということもあり、しばしばHOUは出し過ぎとの声も見られます。このトレードについて少し深堀できればと思います。
菊池雄星
ご存じ日本が誇る剛球左腕。3年契約最後の年となる今期は防御率4.75と数字だけを見ると平凡なものの、奪三振率10.1、与四球率2.3は昨年度よりも優れた数値であり、fWARではゴーズマン、ベリオス、バシットらを抑えてチームトップの数字を残した。昨年から投げ始めたカーブと、セカンドピッチのスライダー、チェンジアップを織り交ぜた本格派投手のピッチングを披露をしている。ブルージェイズ在籍時代は離脱もほとんどなく、今期の年俸は10Mであり、リスクは限定的で年俸面の負担も少ない。首脳陣、チームメイトからのメイクアップの評判は非常に高く、トレード時点でマノアからオフでの復帰を熱望されるほど。
ジェイク・ブロス
23年ドラフト3位指名。プロ入り前はラファイエット大からジョージタウン大にトランスファーという野球選手としては珍しいキャリアを送っている。今期は1A+スタートだったがあっという間にメジャーまで昇格し、MLBでも3試合の先発経験がある。スタッツ、スタッフ面で派手さはないものの、直球は平均92~94マイルで最速97マイルを投げ、カーブとスライダーも平均以上の評価がある。上限は控えめであるが、大きな穴のない投手で、MLBでもローテ下位に定着できる可能性は十分にある。
ジョーイ・ロペフィード
21年ドラフト7位指名。いまのブルージェイズには貴重なパワーを武器とする選手で、23年はマイナーで25本、24年も39試合で13本を放ちメジャー昇格を果たした。アプローチ面は課題で、メジャー昇格後の四球率5.5%、三振率37.5%は要改善である。走力は平均以上でマイナー時代は年間で30盗塁前後をマークしている。マイナーではCFでの守備が多かったが、メジャーでは両翼と1Bの守備が多い。
ウィル・ワグナー
かの有名なビリー・ワグナーの息子。同じHOUレジェンドの息子であるキャバン・ビジオと立ち位置としては似ている。アスレチックではないが野球IQの高さを評価されるタイプであり、特に今期の3Aで57四球を選ぶ一方で三振34に留めている選球眼の高さが最大の武器。パワーや守備、走力は平均以下であり、他のツールを伸ばせるかがMLB定着の鍵となるだろう。既に26歳であり、早期に昇格してチャンスを掴みたい。
トレードの所感
巷ではしばしばHOUの出し過ぎのトレードと言われますが、個人的にはそこまで出し過ぎとは思いません。ランキングの額面だけを見ればHOU大損のトレードと捉えられても仕方ないですが、MLB昇格が近く放出してもそこまで後悔する可能性の低い選手を選んだ放出したという印象があります。3名ともオフに40人ロスターに入れる必要があることを考慮すると、このタイミングで放出する意図も十分に理解できます。
HOU側からするとそこまで悪くないトレードである一方で、ブルージェイズにとって良いであることは確かです。もちろん有望株がしっかり育つかどうかはわかりませんから、結果的に大失敗となる可能性もありますが、マイナーが完全に焼け野原となっているブルージェイズにとっては40人ロスターに入れる必要がある選手を多数抱えることは特段の負担ではありません。むしろロペフィードを筆頭に若手が後半戦で結果を残せれば、来期再びコンテンドを目指す際の見通しが格段に改善されます。後半戦は未来のブルージェイズを担ってくれる若手が台頭してくれることに期待したいところです。