3歩目 「嘘の様な恋でした。」

   始まりは、ドラマやアニメもびっくりな、
というか、この話でドラマを作れそうな感じの
出会いからでした────。

  「相模に紹介したいヤツいるんだけどさ」

私にそう声をかけてきたのは、
この春入った部活で知り合った男の子。
名前は、瀬良くん。眼鏡が良く似合う、
理数系が得意そうな感じの子。

「な……に、なに?紹介したい人?」
「うん。まぁ俺も最近知り合ったんだけどさ、
面白いやつだから紹介しとこうと思って」
そう言う彼に連れられ、隣の教室に移動する。

   ────果たして。
隣の教室で待っていたのは、
平均より高めの身長にしっかりとした体格、
切り揃えられてはいるが少し崩れてる黒髪、
猫のそれの様なアーモンドの様な形をした目、
うっすら茶色く焼けた肌をした『彼』だった。

   「おーい、社川ぁ」
名前を呼ばれて、件の相手──社川くん、が
こちらを向く。  ……目が合った、気がする。
「おぅ、よっす」
そう短く応じて「ん、」とこちらを向く。

「こいつは?」
「あぁ……こいつは相模。同じ部活に入って
知り合ってさ。お前の事紹介しとこうっつって
隣から連れてきたんだよ」
「へぇ〜」

そんな二人の会話を流し聞きしながら、
社川くんの姿をマジマジと眺める。

   すごい背が高い……。身長いくつだろう。
とても落ち着いた顔してる。何歳なのだろう。
机に寄りかかっても背が高いのが分かるって、
何かいいなぁ……。

   「……い。おーい、相模ぃ?」
「……へ、ぇ!?あ、なに!?」
我に返り、呼び掛けに応える。
小さく笑ってるのが見えた。なに笑ってんだよぅ。
「こいつ、何歳に見える?」
「へっ……こいつ、って、社川くんの事?」
「は?そうだけど?」

そう言われて、改めて社川くんの姿を見る。
落ち着いた雰囲気と表情。言動の柔らかさ……。

「と、年上とか……?」
「っぷ……アハハハハハ!!」
私の答えを聞くなり笑い出す瀬良くん。
社川くんも苦笑いしている。
苦笑いって事は、失礼な事言ったかなぁ……。
「社川も、俺らと同い年だよ(笑)」
「……えっ!!?」

   ──そんな事があってから、私たちは
毎日の様に校内や街中で色々話して、遊んだ。
それから────8月の折り返し地点。
瀬良くん達と遊ぶ約束をした街の駅に着いて、
まだ誰も着いていなくて、待っていたら──。

   「悪い。待たせたな、相模」
社川くんが、こっちに歩み寄ってくる。
「ううん、さっき着いたばっかだよ」
それからしばらく瀬良くん達を待ってたけど、
誰も来なくて……。
待っているうちに、瀬良くんからメールが届いた。

From : 瀬良くん
Title  :
201X/08/XX 10:23
──────────
悪い、体調崩した。
申し訳ないけど、
俺そっち行けないわ。

『了解、お大事にね。』──とだけ返して、
携帯を閉じる。 社川くんが、不思議そうな顔してる。
「今の、瀬良から?」と聞かれ、
「うん。体調崩して来れなくなっちゃったって」
と答えた。まぁ、嘘つく事でもないしね。
「そうか……」と、何とも言えない顔になった。
   「あの、さ」
──この時の私、何を考えていたのだろう。
「……2人だけで遊ぶのも何だしさ、
交通費もったいないけど、今日はもう帰る?」
気付いたら、そんな事を口走っていた。

   私のこの発言に対する社川くんの答えは、
「折角来たんだし、色々回ってみようぜ」だった。
少年漫画の様な、ニカッと効果音が付きそうな程
屈託のない、いい笑顔だった。

   思えば、今なお強く根付いているこの気持ちが
最初に芽生えたのも、この頃だったかもしれない。

(4歩目に続く)

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