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鎌倉殿の13人版 最後の詞

今回の政子の演説は良かったなー。紙を投げ捨てて義時がどーのこーのとか言ったときはすごくいやな予感がしたけれど、結局最後は吾妻鏡に忠実にやってくれたのはありがたかった。以下義時がどーのこーのが終わった後の今回版の最後の詞。

鎌倉始まって以来の危機を前にして選ぶ道は2つ。ここで上皇様に従って、未来永劫西の言いなりになるか。戦って坂東武者の世をつくるか。ならば答えは決まっています。速やかに上皇様を惑わす奸賊どもを討ち果たし、三代にわたる源氏の遺跡(ゆいせき)を守り抜くのです。頼朝様の恩に今こそ応えるのです。向こうはあなたたちが戦を避けるために、執権の首を差し出すと思ってる。ばかにするな。そんな卑怯者はこの坂東には一人もいない!そのことを上皇様に教えてやりましょう!
(一同)オ〜!
(政子)ただし 敵は官軍。厳しい戦いになります。上皇様につきたいという者があれば止めることはしません。

鎌倉殿の13人(47)「ある朝敵、ある演説」

参考にWEBから引っ張ってきた吾妻鏡の最後の詞の現代語訳を

「皆、心を一つにして良くお聞きなさい。これが今度の最後の命令です。頼朝様が平家などの天下の敵を征伐して、関東に幕府を造って以来、朝廷の位にしても、褒美に与えられた領地にしても、その恩は山より高く、海より深いものでしょう。感謝の気持ちは浅いものではありませんね。それなのに、今反逆の家来のでっち上げの訴えのために、道理の通らない朝廷の命令が出ました。勇敢なる侍としての名誉を守ろうと思う者は、藤性足利秀康や三浦胤義を討ち取って、源氏三代將軍の残した鎌倉を守りなさい。但し、京都朝廷側に付きたいと思う者は、宣言しなさい。」と云いました

吾妻鏡入門第廿五巻
承久三年辛巳(1221)五月大

いや本当に良かった。小池栄子が素晴らしかった。ただ惜しむらくは頼朝・政子と板東の人々とのつながり。あるいは板東武者が覚えていた朝廷へのわだかまりみたいな物をもっと丁寧に全編で描いて欲しかった。

ちなみに何点か吾妻鏡と違うこと
1点は演説が終わった後ドラマではオーッと坂東武士がなっていたけれど、吾妻鏡によれば「有難さに涙が流れ、言葉にならない者」がいたとのこと奮い立つ雰囲気というよりはむしろ泣いてしまうような雰囲気だったのでは。
もう一点は政子がこの言葉は直に伝えずに家来を通して伝えていること。政子もこのとき高齢でした。ただ、ドラマでそれをやったらさすがに興ざめな感じがします。
(ついでに、この詞を言っているとき義時・義村が同席しているか微妙です。昼までは別の場所にいるので。泰時・時房・広元の名前はありますが。)
(さらに、政子に応えて「ここにいるのみんな味方だぜ」的なことをいうのは、承久記によると一門の泰時ではなく源氏の傍流である武田信光。)

あと、広元に最後の詞の草稿を書かせるシーンがありましたが、吾妻鏡版をみても官僚的なスピーチと言うよりも、むしろ板東武者に訴えかける非常に直情的なもので、政子の意向がかなり尊重されたものではないのかなと思います。

ついでに物語の前の方で「のえ」が兄がうたれてどーのこーのといっていましたが、京都守護の伊賀光季のことです。まったく出てこなかったので何のことかわからなかったですね。私もスルーすると思いました。

ついでのついでに上皇様、西面武士をちょろっと招集した感じがあるけれど、10年、20年かけて自前の軍隊を整備しています。きっと子供の頃義仲に襲撃されたことを相当に根に持っていたんじゃないかなと。

まあ、いいのです。『ばかにするな。そんな卑怯者はこの坂東には一人もいない!』と尼将軍がおっしゃられたときに、私もその当時の板東武者と同じくうるっとしてしまいましたので。今回はそれで非常に満足です。