tipToe.のフランケンシュタインの手記
こんばんは。
本日は恵比寿CreAtoにて開催された「tipToe.のフランケンシュタイン」を観てまいりました。
アイドルグループtipToe.が長田左右吉氏を演出に迎えて開催したミュージカル公演(とミニライブ)です。
以下はその手記となります。
当然ながら観劇中・ライブ中は一切メモなど取っておりませんので、記憶はバチクソ曖昧模糊ですし、なぜだか後半ほどそれは顕著になっていったりします。
したがって、実際の内容とは著しく異なる部分があるかもしれませんし、竜頭蛇尾な観劇記録に思われるかもしれません。
それならばそれで、この手記については「うろ覚えtipToe.のフランケンシュタイン」だとか「tipToe.のフランケンシュタインを観た記憶から捻り出した似て非なる二次創作」だとか思っていただければ良いのではないでしょうか。
正確無比なライブレポートと思われると後から詐欺師シール(サギシール)もといレッテルを貼られるような気がして昼も眠れませんので、あくまでなんか記憶の中から捻り出したそれっぽい何か、としてお読みいただければ幸甚に存じます。
だってなんなら、体裁を整えるために主観的に読み取った行間なんかも、さもそう台詞にあったかのように書いている……それを真実と言って良いということはないでしょう。なので、図らずも虚実織り交ざった二次創作的記録と位置付けたほうが妥当であるわけです。言い訳が長い!
大筋はたぶんなぞれていますから、まぁ遊戯王のテレ東版を見て書き起こしたら東映版っぽいみたいな、そんなニュアンスで良いのかもしれません。(は?)
開場内で流れていたBGMをスマートフォンに聴かせて検索したら、ミュージカル「CATS」の楽曲でした。
それでは間もなく開演いたします。お早めにお席にお戻り下さい。観劇中の私語はご遠慮いただけますと幸いです。また、演出の妨げとなりますので、携帯電話や音の鳴る電子機器は、電源からお切りいただきますようお願い申し上げます。
……ああ、この記事は電源を切ったら読めませんね。そこは上手いことやってください。もう大人なんですから。
それではどうぞ。
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tipToe.のフランケンシュタイン
みなさんご存知、大人気アイドルグループtipToe.のプロデューサー本間翔太は言わずと知れたマッドサイエンティスト☆
そんな本間Pもとい本間博士は陶器製の女性型アンドロイドを生み出し、アイドルグループを結成!
レッスン、ライブ、特典会……一連の活動を終えた彼女らは、倉庫に帰りスイッチを切られ、各々眠りに就く。それが毎日のルーティーン。
しかしある日のライブ後、“小宵めみ”と称される個体のスイッチがうっかり切り忘れられる。切られなかったスイッチは長い夜を刻む時の歯車と噛み合い、物語を綴りはじめるのだった──!
M1.春の風速、帳が揺れて
──頭の中で何かが蠢く。
「それを鎮めるために眠らなければならないのでは?」
──誰の声だろう。話に付き合ってくれないものか。
「私はあくまでナレーションなのでお話はここまで。みんなを起こしてみては?」
──みんなはスイッチを切られている。
「夜は長い。音楽を聴いてはいかが?ふあ~あ…」
洒落た提案と無邪気で無慈悲な欠伸を同時に残し、束の間の干渉をト書きに許された声は消える。部屋には静寂が染み渡る。
「音楽って自分から聴くものだったんだ──」
倉庫の奥底から引きずり出したとある楽曲。これが音楽。耳に流れ込む。体が弾む。踊るようなステップで、気付けば“みんな”のスイッチを入れていた。
それは、こんな曲だった。
M2.星降る夜、君とダンスを
──こんなにも気持ちよく歌ったのは初めてだった。
──こんなにも楽しく踊ったのは初めてだった。
自らの内側に起こった異変を感じ取ったアンドロイドは、意見を交わし合う。
これは、“未波あいり”、“藍田あらん”と称される個体による情報交換の記録。
──人工脳の異常でしょうか。本間博士に報告するべきでは?
──なぜでしょう。私の人工脳はその提案に抵抗を感じています。そして、同時に私の人工脳はいくつかのアイデアを提案しています。
──私もです。私の人工脳もその提案に抵抗を感じ、そしていくつかのアイデアを提案しています。
“tipToe.置き場”となっているその倉庫で発見されたその音楽は、いつかの誰かのアーカイブだろうか。その音楽から何かを受信したかのように、まるで空洞の血管に血液が流し込まれたかのように、アンドロイド達は内なる何かに突き動かされる。
──私たちは、感情のままに歌い踊ることにした。
M3.空想ワンダリング
それはそれは楽しい日々だった。感情のままに歌い、踊る。器こそ無機質な陶であるが、その体には確かに形容し難いものが宿っていた。
空想の中を自由に彷徨うような心地好い浮遊感に高揚する人工脳。しかし器体に想定されたキャパシティを超えるパフォーマンスの連続は、生物の肉体や道具の多くがそうであるように、確実にそのボディにダメージを刻んでいた。
個体“宮園ゆうか”の陶器の体にヒビが入る。
報告を受けた本間博士からの回答はこうだ。
「人工脳のエラーかと思われます。新たな人工脳を手配するので、到着次第、元の人工脳を破棄し新たな人工脳に交換をお願いします」
これまでに無い新鮮な感覚をその記憶に刻み続けたこの脳は、ほどなくして新たな脳に交換されて、そのすべてを失う。“それ以前”のただのアイドル・アンドロイドに戻る。それだけだ。たったそれだけのことなのだ。
しかし彼女たちは思うのだった。
──私たちの肉体は、私たちのものだ。
それは本当の意味で、彼女たちの物語のはじまり。
M4.My Long Prologue
ただいつも通りライブをした。いつも通り、感情のままに、歌い、踊った。私たちの肉体で。私たちの感情で。
タイムリミットまでの約2ヶ月、彼女らはただ、心が指すままに──
「こんにちは!私たち、tipToe.です!」
人工脳を交換する前の、最後のライブ。
M5.ホワイトピース
いつも通りにライブを終え、いつも通りに特典会を終えた彼女らは、その陶器の脚で、そのままどこかへと走り出した。
どこへ向けて走っているのか。どれだけ走ったのか。長い坂を駆け上がって、展望台のある丘に辿り着く。
罅割れる脚から剥がれ落ちる塗装。崩れ落ちるように倒れる陶器の体。
剥がれた塗装は織り重なるように積まれ、やがて鳥のように風に舞う。鳥のように───そう鳥のように、飛んでくれ。もう一度、飛んでくれ。罅割れた脚に言い聞かせるようにして、彼女らは再びその脚で走り出す。
月灯りに照らされた陶器の体は、群青の空の下を流星のごとく駆け抜ける。
M6.群青と流星
その後の彼女らの行方を知る者は居ない。
噂によればどこかの業者に回収されてスクラップになっただとか、夜な夜な街に現れては人々を怖がらせているだとか、また別の噂では本間博士を虐殺し復讐を果たしただとか言われているが、その答えは──あなたの想像にお任せするとしよう。
fin.
からの、
-another one-
tipToe.はミニライブをおこないました。
セットリストは以下の通り。
青い月=blue moon.は「奇跡」の象徴とされています。
陰鬱や情熱、豊かな感情を振り撒きながら、最後にはフロアを沸かせていた彼女らは果たして陶器で出来たアンドロイドだったのでしょうか?
ライブ後にしばらく時間を置いて特典会に現れた彼女らとの会話を、人間のみなさんはどのように感じられましたか?
3月22日にはVeats Shibuyaにてワンマンライブを開催するそうですよ。なんだか、とってもすごいって噂です。タイトルも意味深でそわそわします。
え?あともう3日もないじゃないですか!やだー。
まぁ何にしても、心の指すままに楽しむのが一番ではないでしょうか?
それでは当日、フロアのどこかでお会いしましょう。
本日の御来場、誠に有難う御座いました。
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