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午堂登紀雄・小山龍介対談|コロナを乗り切る 個人の新スキルセットーコロナ後のキャリア展望

投資からビジネススキルまで、精力的に著書を書かれている午堂登紀雄さんをお迎えしてのZOOM対談です。

在宅勤務が当たり前の世界になると、これまでと同じ仕事のしかたが大きく変わりました。それに伴って、「指示待ち」のスタイルではいよいよ、成果が上がらなくなってしまいます。今回はコロナを乗り切るための個人の新スキルセットをテーマに、どんなスキルを身につけるべきなのかを議論します!

危険を察知して、正しく恐れる

小山龍介(以下、小山) いろいろなビジネス書がある中で、午堂さんは歯に衣着せずにズバッと言う。「これ必要でしょう、これ無意味でしょう」ということを本音ベースで書かれている稀有なビジネス書作家として、また投資家としても活躍されている方です。今日は「コロナを乗り切る個人の新スキルセット」というテーマでお話を伺いたいと思います。

午堂登紀雄(以下、午堂) コロナに関して言うと、最初にやばいなと思ったのは1月20日頃なんですよ。中国の武漢で感染者が増えていて、ちょっと異常だなと思ったんですよ。WHOはヒトヒト感染は起きていないと言っていましたが、これは間違いなく起きているだろうなと思って、もうその頃から自己隔離しました。

小山 それは早いですね。その頃、日本では、渋谷にあるGMOが唯一、在宅勤務を全社員向けにやるんだということを出していて、大げさすぎるよみたいな空気でした。

いち早く危険を察知する。午堂さんはどうしてそれができるんですか?

 人一倍リスクに対して敏感で、死亡事件や交通事故のニュースも必ずチェックしていて、「もし自分だったらどうするか」を常に考える癖がついているんですよね。

小山 正しく恐れるって、すごく難しいなと思うんです。

午堂 原発事故の直後に小山さんと会ったときに、小山さんが、「フランスか何かの原子力専門家がこれはメルトダウンだと言っている」と言ったので、「そういう情報収集の仕方もあるんだ」と思って感心したのを覚えています。

小山 あのときも、まっさきに私は逃げました。

午堂 僕も、東南アジアに逃げました。

小山 間違いなくメルトダウンしていると思いましたが、Twitterでは「そんなの起こっていない」みたいな感じでしたし政府もそう言っていなかった。「ホントかよ」と思って、子どもが1歳ぐらいだったので愛知県に早急に移動させて二週間こもったんです。

午堂 つまり、政府やメディアは必ずしも本当のことを言うとは限らないし、保身が働くから「隠す」ということが起こり得る。

小山 正常性バイアスもありますよね。すごく突発的なことが起こると、「とはいえ自分の日常生活はそんなに崩れないだろう」という前提のもとで行動してしまう。そういうバイアスをいかに外していくかというところで、今回、原発のときと同じようにトレーニングになったという気がします。

午堂 私は、首都直下型地震とか南海トラフ地震とか、去年の秋みたいに台風が来て河川が氾濫するといったリスクについても考えました。いつ自分の会社の機能が停止するかもしれない。仕事がなくなるかもしれない。そういう前提で、これからの働き方を見直さないといけないと思いましたね。

まずは本業で成果を出す

小山 今日のテーマは、コロナの第一波が一応収束に向かっている中で考えられるリスクと、リスクへの対応を考えていきたいと思うんです。働いている人が直面している見えないリスクは、どんなものがあるのでしょう。

午堂 リモートワークは定着しそうです。そうすると、机に向かって頑張っているとか電話をかけて頑張っているとかいう努力がまったく見えないから、ますます成果重視で、結果が出せない人にはすごく残酷な社会になっていくのかなという感じはしますね。

小山 端的に、成果を出せということなんですかね。

午堂 成果を出すような働き方やあるいはジョブチェンジを積極的に考えていかないと、ぶら下がっているだけでは振り落とされてしまうということが、現実に起こり得ると思います。

小山 これは、ゲームのルールが変わったと考えたほうがいいんでしょうね。今までは机にしがみついて、9時〜5時でちゃんといて、なんなら残業もしながら頑張っていますということが評価されていた時代から、ルールが変わった。そうすると、もしかしたら人によっては2時間ぐらい働いて成果が出てしまえば、あとは自由みたいなことになってきますね。

午堂 そうですね。そういった意味では、できる人にとってはものすごいチャンスです。副業してもいいし、別の会社に所属してもいいし、自分で事業をしてもいいしボランティアをやってもいい。そういうふうに所属できるコミュニティやチャネルがすごく増えるのは、すばらしいことですよね。

小山 自分の看板をどうつくっていくか。株式会社何々の午堂さんとか小山ではなくて、午堂さんや小山、その人に仕事を頼みたいとか、そういうレベルに1ランク上がれば、長時間働かなくても成果が出るし会社にとってもその人が必要になる。

そうやって業界の中で名前が売れて、会社がつぶれても自分はちゃんと生きるすべを持つためには、今このタイミングでどんなことをやっていく必要があるんですか。

午堂 いちばん大事なのは、やはり本業でちゃんと成果を出すことです。会社の中で名前が売れずして会社の外で名前が売れるというのは、なかなかないんです。ジャーナリストみたいな仕事だったらともかく、一般の会社員なら自分の会社でちゃんと成果を出して、それが認められて社外に名前が売れていくとか、あるいはいろいろなシンポジウムでパネル出演や講演の依頼がかかってくるといった感じで浸透させていく。そういうのは、ひとつの道としてあると思うんですよ。

もうひとつは、自分を売るためにネット上での存在感を出していく。そうすると、パラレルキャリアの道も開ける可能性があると感じます。

小山 自分の会社でまず成果を出せというのは、ストレートですね。

午堂 本業で成果が出ないと、本質的な自信にならない可能性がある気がするんですよね。

小山 目の前にある仕事に全力投球できずに、ちょろっとインターネットでYou Tubeをやって儲かりますみたいな、そういう話はないですよね。

午堂 YouTuberは賞味期限がある可能性があるし、いつどこでアカウント凍結などという目に遭わないとも限らないので、依存しすぎると怖いと感じます。

小山 ヘッドハンティングされるとか、その業界の中で「あいつに次の事業をやらせたい」と指名で声がかかるところまで専門性を高めるということがまず第一にありますよね。もうひとつの道として、ネットで(You Tubeなど含めて)名前を売っていくことがあると思うんですが、その点で今やれることはありますか。

午堂 とりあえずアカウントを取って、情報発信ですよね。自分という人間がここにいて、こういうことに興味を持っていて、こういった情報を持っているんだということを発信していかないと、誰かが連絡をくれようとしても連絡先すらわからないという状態になります。

もう一方で、できる限り実名で出ていくということが必要です。たとえば苦境にある飲食店でもお客さんが戻ってきてくれるというのは、ネット上でつながりをつくっているからですよね。

店が「テイクアウト始めました」と言うと「じゃ応援するよ」と買いにきてくれる。それは個人の場合でもやっていったほうが、自分の応援者や協力者が増えるとか、あるいは「こういうのがあるから、ちょっと来てくれない?」という声がかかるとか、そういう道が開けるような気がするんです。

小山さんは、SNSを全方位でフル活用していますよね。

小山 この動画もYou Tubeで冒頭の20分を流したりと、動画シフトは今すごくしています。ですから、今までみたいに文章で出すということだけではなくて、やはりこれからは動画。特に5Gになってモバイルで使い放題になって、ギガを気にしなくてよくなる世界がくるというときに、動画は威力があるなと思っています。それで、動画の情報発信は今すごく意識しているんです。

収入源を複数持つ

小山 たとえば、私自身も不動産投資をやっているのですが、投資系は、今タイミング的にはどうなんですか。

午堂 私の場合は、今、太陽光発電所をすごく増やしています。そうすると太陽さえ照っていればいいので、コロナ関係なく売電できているんですよ。

たとえば執筆印税とか電子書籍の売り上げを再投資する。自分の労働力に依存しない収入源を増やしているという感じです。だから、先月は太陽光と不動産だけで、手取りで月に300万ぐらいですかね。コロナで自粛だからといって住まいが不要だという人はいないので、やはり住居系の不動産投資というのは手堅いと思います。

小山 今、飲食などの「密」の事業に関する商業系の不動産は、ちょっと値段の動きがわからないですよね。昔は1等地だった渋谷とか銀座も、今後そこに人が来るかどうかというのは微妙です。オフィスも在宅勤務でいらないんじゃないかという説も出ていますが、住宅は手堅いのですね。

午堂 オフィスや店舗は景気が悪くなったら撤退がありますが、個人はどこかに住まないといけないので、普通のマンション・アパートであれば安泰かなと思います。もちろん、高級な物件は家賃が払えないから、安いところに移るよというのは、あるかもしれません。けれども、手頃な物件であれば引っ越しのコストや手間のほうが重いので、住み続ける可能性は高いかなと思います。

小山 投資系も含めて、自分の生活を盤石化していくことを意識しながら。ある種の個人の事業経営ですよね。ポートフォリオをつくって、収入源を複数にしてバランスをとる。

午堂 小山さんは、何種類ぐらいわらじがあるんですか。

小山 フルローンで手持ちのお金がなくてもマンションが買えた時代に、2億円ぐらいでマンションの1棟買いをしました。それの不動産収入がひとつ。それと、自分で会社をやって、コンサルティングや研修やワークショップをやっているのがひとつ。それから、2014年から大学で教えるようになったので、大学院での准教授としての収入がひとつあります。

それから文化財活用の仕事で、今も大分県の文化財保存活用大綱策定の委員になっているのでその収入がひとつと本の執筆印税もありますね。だから、収入源は複数です。

午堂 そうなると、こっちが途絶えてもこっちがあるみたいな感じで補ってくれますから、こういった状況でも安心ですよね。

小山 今回オフィスを渋谷から恵比寿に移して固定費をガッと下げました。渋谷ではセミナールームつきのオフィスでしたが、今後3~4年はセミナールームに30人集めて何かやるなんてことは密になるので難しいだろうというので、バサッとやめたんです。オフィスに愛着があるから、もうちょっと持とうと執着すると、どんどん出血し続けてしまいます。できるだけ身軽な状態で意思決定しやすくすることだと。

午堂 執着しないというのは、すごく大事ですよね。高い家賃でも港区に絶対住みたいという人がいるじゃないですか。でも、もう通勤しなくてもいい職種の人は、別にどこに住んでも構わない。だったら家賃が激安なところを選ぶとか、選択肢が広がりますよね。

いま郊外に賃貸マンションを建てて、その一室に住んでるんですが、家賃収入があるってありがたいですよね。

小山 資産家の余裕ですね(笑)。まぁ、生きる上で固定費がかからないってすごく楽ですよね。どうやったら(収入源を)複数化していけるものなんですか。

午堂 自分が物理空間でやっている仕事を、いかに仮想空間に持ち込むか、その方法を考えるという感じですね。本を執筆してそれが紙の本になる。一方で電子書籍になる。そういうイメージです。対面で研修をやっていたのをオンラインに切り替えるとか、実際の空間でしかできない仕事を減らして、仮想空間でできる仕事への切り替えが必要かなと思います。

小山 自分が物理的に時間を費やさなくても、コンテンツが働いてくれるみたいな感じですか。

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