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Anointing(油注ぎ)

ヨーロッパの古い王族について調べていると、たまに「油を塗られた」とか「塗油を行われた」と書かれていることがあります。
聖書にも「油注がれた者」(=メシア)という記述が見られます。

「油を注ぐ」行為は神聖、かつ宗教的な儀式であることがわかります。

油を注ぐ(Anointingアノイニング)は、3つの目的のもとに行われます。健康と快適さの手段、名誉の証、そして奉献の象徴です。
Anointingに使われる聖油については、聖書・出エジプト記30章22-25節にレシピがあります。また、聖油は「クリスム」Chrismと呼ばれます。

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「クリスマ」(油によるバプテスマ)の実践は、キリスト、再生、そしてインスピレーションの象徴として、2世紀後半の初期の教会で発展したそうです。
アンティオキアの司教であるテオフィラスの手紙には、「この理由で私たちはクリスチャンと呼ばれている」と書れています。

またグノーシス主義 者の間では、油注ぎが特に重要とされ、洗礼者ヨハネの水によるバプテスマは不完全であり、油による油注ぎはバプテスマのプロセスの必要な部分であると述べています。
「聖油はバプテスマよりも優れています。なぜなら、私たちが「クリスチャン」と呼ばれているのは「聖油」という言葉からであり、確かに「バプテスマ」という言葉からではないからです。
そして、「キリスト」が彼の名前を持っているのは「聖油」からです。父は息子に油を注いで、息子は使徒たちに油を注いで、使徒たちは私たちに油を注いだからです。」(フィリポの福音書)

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      このような素敵な容器で保管されていたようです。


現代では、「油注ぎ」は通常、ヨーロッパの君主の戴冠式などの儀式の祝福に使用されます。ローマカトリック教会、英国教会、ルター派教会は、油注ぎのために3種類の聖油を祝福し、聖油は奉献されているそうです。

1626年のイギリス国王チャールズ1世の戴冠式では、聖油はオレンジ、ジャスミン、バラ、シナモン、ムスクをブレンドしたものが使われました。
このときの聖油は、後世の王の戴冠式の為にたっぷりの量が作られましたが、ビクトリア女王の長い統治の間に凝固してしまい、その後、2回ほど新たに作り直されています。

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1953年、エリザベス2世(現エリザベス女王)の戴冠では、ウェストミンスター寺院に保管されていた聖油が第二次世界大戦中に破損してしまったため、新しく作り直しました。レシピはネロリ、ジャスミン、バラ、シナモン、ベンゾイン、ムスク、ジャコウネコ、龍涎香の成分が記載されているそうです。

チャールズ1世は、胸、肩の間、両肩、ひじ、頭に油を注がれました。エリザベス女王は手のひら、胸、頭に油を注がれました。

https://youtu.be/ZYay408Rd7c


塗油式とは・・・ コトバンクより
(1) 肉体的、精神的疾患に対する癒やし。
 (2) 塗油されたものを聖なるものとし、日常的使用から除外して神や神的なもののためにのみ用いる聖別。
 (3) 特に人間の場合、特別な資格、権威。身分、能力などが与えられる叙階または叙任。
多くの宗教では教職者 (司祭など) が塗油によって叙任された。またユダヤ教では司祭や王が位につくとき塗油によってその聖性と神の恵みが象徴された。

病者の塗油
病者の塗油(びょうしゃのとゆ)は、カトリック教会における七つの秘跡の一つ

現代の教会で行われている塗油は、額に行われています。

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