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Blackmagic Creator's Close Up #4 -  亀井 俊貴

亀井 俊貴 「日本のカラーを世界に見せたい」

本連載は、映像業界の最先端で活躍するクリエイターの歩んできたストーリーや思考にフォーカスしインタビューをする企画です。

今回はRADWIMPSの「カナタハルカ」やKing Gnuの「Boy」、BUMP OF CHICKENの「Small world」といったMV、さらにユニクロやカネボウといった、数多くの企業のTVCMのグレーディングを手掛ける亀井 俊貴氏にお話を伺いました。

亀井 俊貴 - Toshiki Kamei

株式会社 ARTONE FILM
取締役 / シニアカラリスト

1991年 石川県 生まれ
2014年 バンタンデザイン研究所 映画映像学科 卒業後
2014年 Cutters studios Tokyo入社
2021年 株式会社ARTONE FILMを石山将弘と共に設立

亀井 俊貴

受賞歴

- PS4 「Gravity Daze: Gravity Cat」は、世界最大の広告祭カンヌライオンズにてフィルムクラフト部門ゴールド、ACC TOKYO CREATIVY AWARDSでグランプリ、総理大臣賞を始めとする世界各国の広告賞で30以上の賞の受賞に貢献。
- 2022年Annual Copenhagen Film Festivalで「FINDING SATOSHI」がBest Feature Documentaryを受賞
- ACCのUT、「WEAR YOUR WORLD」でスタッフ賞

最近の作品

KANEBO 「希望よ、超えてゆけ。」 CM


ユニクロのジーンズLIFE篇 佐久間由衣 long.ver


UNIQLO / UT - WEAR YOUR WORLD


RADWIMPS - カナタハルカ


Harper's BAZAAR JP 2022/03/18


キャリアの始まり

亀井氏:シンプルに言うと、 映画に携わりたいので、映像業界に入りました。そもそもはバンタン(Vantan)という映像の専門学校に入って、2年目の時に、Cutters Studios Tokyo(以下、Cuttersと称する)で半年間のインターンを始めました。そこがスタートでしたね。

Blackmagic Design:その時にインターンとしては、すぐにカラリストのアシスタントに配属されたのですか?

亀井氏:そうではないですね。Cutters会社自体がインターナショナルな会社で、最初の業務はエディターのアシスタントをやったり、それ以外のクライアントサービス的なところをやったりすることもありました。

当時は、Steve Rodriguezというカラリストがいました。僕がカラリストになりたい、と思ったきっかけの人が彼なんです。Steveがカラーの部屋でコントロールパネルのトラックボールやボタンを操作している様子を見て、単純にその仕事している姿に惚れたんです。最初はカラーグレーディングとは何なのか全然わかりませんでしたが、こんなかっこいい仕事をしてみたいと思いました。その後、Cuttersに入って2、3年後ぐらいに、Ben Conkeyのもとでカラリストのアシスタントを本格的に始めるようになりました。実際にアシスタントの仕事をやって、グレーディングで作品にこれだけ影響を与えることができるのかと驚きました。


DaVinci Resolveとの出会い

亀井氏:CuttersではDaVinci Resolveを使っているので、僕もそこでDaVinci Resolveと出会ったという感じです。DaVinci Resolveは直感的なところがわかりやすいですね。このインターフェースもわかりやすいし、 ノードも一目でわかるのが便利です。初めてカラーをやる方でも、実際に触ってみれば、それぞれの機能を大体わかるようになるでしょう。多分難しいところは、カラーマネージメントのセッティングだと思います。そこの理解が深まっていけば、それぞれの機能の用途がどんどんわかってきます。カラリストとして、DaVinci Resolveをずっと使ってきて、アップデートによって継続的に改善されているので、その都度に何か欲しかった機能が追加されるのが素晴らしいです。

多分、僕が最初にDaVinci Resolveを使ったのがバージョン7か8の頃でした。その時から考えると、本当にできることが増えて、僕がこうやりたいという画を今作れるようになってきたというか、共に成長してきてるような感じがあります。本当に痒いところに手が届くみたいなところはあります。

Blackmagic Design:古いバージョンの時からDaVinci Resolveとともにお仕事されていますが、 どの機能がついた時に一番嬉しかったですか?

亀井氏:元々トラッキングの機能は性能が良かったですが、どんどん良くなっています。最近のもので言うと、HDRホイールとカラーワーパーはかなり気に入っています。結構これは大きな進化だと思いましたね。また、最近リリースされたiPad版DaVinci Resolveも今後試してみたいです。


難題を乗り越えるには

Blackmagic Design:今まで数多くの作品を手掛けられていますが、作品づくりで直面した難しい問題や課題はありましたか?

亀井氏:例えば、BUMP OF CHICKENのミュージックビデオを作った時に、技術的な面で言うと、時代が変わるという表現をどう分かりやすくするか、分かりやす過ぎてもいいかどうか、というのがわりと大変なところでした。監督とスタッフのみんなで考えて、その表現のバランスをどうするか、というのが一つの課題でしたね。メンタル的な面で言うと、 僕がBUMP OF CHICKENの一ファンとして、いつもとは違うパースペクティブからの考えがあるので、そことの戦いみたいなことでした。

Blackmagic Design:その難しい技術的な問題に直面した時に、どういうアプローチで課題を克服されたんでしょうか?

亀井氏:古い時代であれば、より昔のフィルムっぽい色味にして、時代の違いを表現しました。あとは、スタッフのみんなとの話し合いです。やはり、一人だけでは決められないので、僕がこれがいいではないかというのを提案して、最終的な判断はみんなで決めていくという感じです。映像をつくるのは結構、相互協議というところがあるので、皆さんと話して乗り越えたところが大切ですね。


カラリストになることでの変化

Blackmagic Design:カラリストとして、ご活躍されていますが、カラリストになってから、ご自身の人生にどのような変化がありましたか?

亀井氏:単純に僕の人生からみると、日頃の景色の見方がまず変わりましたね。色々なところに行って、色々なものを見たいという気持ちがより強くなりました。また、職業病的なところになるかもしれませんが、このセッションで人が今何を欲しているか、何を想像しているのかといったことを考えるようになりました。カラリストであることに限らず、色々な人と出会うことになって、それぞれが持っている人生の哲学に触れて、話を聞くことができたことも楽しかったです。

Blackmagic Design:色々な方と出会ったり、日々お仕事をされたりする中で、カラリストとしてのやりがいはどのようなところに感じますか?

亀井氏:まず作品として目で見て、すぐに受け取る反応だと思います。自分がカラーを準備して、最終的に視聴者に見せた時に「おー」みたいになった時とか、作品のストーリーがより伝わるようになった時とか、仕事的にはそこにやりがいがありますね。

もう少し広い話になると、今ARTONE FILMを作ったのも日本のカラー業界をどうやってより盛り上げていくかというところもあるので、今はそこにもやりがいを感じていますね。Netflixの作品なども弊社でたくさんグレーディングしていますし、映画もそうです。Netflixで配信中の石山が携わった佐藤健と満島ひかり主演の『First Love 初恋』も、海外からの反響もいいので、すごく嬉しいです。今後、どんどん日本でのカラーをアピールしていきたいです。このように世界に認知されていったら、多分色々な国の人ともっと関わってくることになると思いますので、それも大変楽しみです。そして、それによって、何かまた変化があるかもしれないので、そこを期待しています。


将来の見通し

亀井氏:ARTONE FILMとしては、最近Netflixなどで、海外の方から日本の作品が見られることが多くなってきているので、 そこに対して、日本のカラーはもっと行けるぞというところは、やはり見せていきたいです。他の国の人ともっと繋がって、 一緒に素敵な作品を作っていきたいです。

僕の個人的な課題で言うと、テクスチャーの表現などの技術的な表現を突き詰めていく事と、よりストーリーを伝えられるように作品との向き合い方を考え直していきたいです。あとは英語を頑張らないといけないと思います。たまに海外の撮影監督の方もいるので、仕事で特にカラーでは、ニュアンス的な表現を日本語から英語にするのは難しいです。スムーズにコミュニケーションを取ることによっての信頼関係の形成というのもあるので、そこもさらに強化していきたいです。