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SMBC日興証券

~「新興国為替仕組債」勧誘販売で問題続出、一般投資家被害額は2,000億円超か~

筆者が就活生だった1998年当時、ブラック企業という言葉は一般的ではなかったものの、「消費者金融」「OA機器販売」そして「証券リテール営業」などが、「労働環境が劣悪な職種」と認識されていた。そして当時から「証券マンの平均寿命は、日本人の平均寿命マイナス20歳」などという都市伝説が語られていたことを思い出す。

月日は流れて、今はどうだろう。金融業界自体はその安定感と高給イメージから根強い人気のはずだ。少し前の話となるが、2013年度の「日経就職人気ランキング」は未だに私の記憶に鮮明に残っている。なぜなら、「ランキングトップ10の会社が全部金融業界」という異様な光景を呈していたからだ。

順位 企業名 ポイント
1 日本生命保険 3407
2 東京海上日動火災保険 2829
3 第一生命保険 2485
4 三菱東京UFJ銀行 2434
5 三井住友海上火災保険 1832
6 三菱UFJ信託銀行 1733
7 みずほフィナンシャルグループ 1569
8 三井住友銀行 1483
9 三井住友信託銀行 1317
10 明治安田生命保険 1287
(2013年2月27日/日本経済新聞)

しかしよく見てみると、その中には証券会社の姿が見えない。それもそのはず、今はなきリクルート調査による「就職人気企業ランキング」では、過去36年間(1976年~2012年)にわたって、「証券会社がトップ10入りしたことは一度もない」のだ。

ということは、金融業界の中でも「証券会社」だけは未だにブラックイメージが根強く残り、世間の多くもそのように認識している、ということなのだろう。

実際、ネット上で「証券会社に内定した」という書き込みに対して、元社員などから「やめておけ」とクギを刺す論調も目立つ。また営業経験のある方なら「詰める」という専門用語を当然ご存じだろうが、これはもともと野村證券の社内用語だったと言われている。真偽は定かではないものの、「ノルマでギリギリまで追い詰め、ヘトヘトになるまで徹底的にしごく。それで初めて一人前になる」という同社の教育観が、この「詰める」という言葉に凝縮されているといえるだろう。

そんな過酷そうな証券会社だが、なぜか個別企業名を挙げて「名指しでブラック企業呼ばわり」されることは少ない。実態はどうなのか、現役社員にインタビューしたところ、意外な事実が判明したのである。

<本社勤務はむしろ「居心地がいい」>

証券会社の典型的なイメージである、『超激務』『体育会系営業会社』『離職率高い』『ブラック』というのは、実は全体の一部分でしかない。あくまでそれは個人向けの訪販部隊、「リテール営業」の話であり、それも今50代以上の管理職世代が若手の頃、30年前から2000年代半ば頃までの話である。(具体的には、2006年に「金融商品取引法」が改正され、販売や勧誘に関して利用者保護規制が厳しくなるまで、ということになる)

証券会社に限らないが、事業会社には営業担当者が勤める支店現場以外に「本社勤務」という仕事がある。実は証券会社の「本社勤務」は、多くの人がイメージする厳しい営業のイメージとは少々違う、実に「働きやすい職場」なのである。

筆者は、国内大手証券会社で「上場支援」や「債券発行支援」を担当している本社勤務の30代エリート社員から、本社勤務の実態をヒアリングした。

「本部で働いてる限りは、ウチの会社はそれほどブラックだとは思わないですね。確かに業務量は多いけど、他の業界に比べたら給料の絶対額は高いですし。ボーナスが業績で変動するんですが、ボーナスが低いときで年収700万円台後半、出て1000万円台に乗るくらいです」

業務量と給与のバランスはどうか?

「入社したとき(リーマンショック前後)は景気悪くてボーナスもなく、『頑張ってる割には恵まれない』という感覚でした。こっちは大手の総合職なのに、『東京海上の一般職のほうがボーナス倍』という時代もあったくらいですから。実際、辞めていく人は給料を理由にすることが多かった」

働く環境としては?

「雰囲気はいいですね。人間関係がイヤで辞める人はあまりいない。辞めてからも繋がっている人もいますよ。あと会社としては19時帰りを推奨してて、残業は事前申請制。オフィスの入口とPCログで全部管理されてます。まあ、残業したとしてもあまりつけられないですけど…」
「居心地のよさと裏返しで、上が詰まっている印象はあります。30代後半から『働かない人』が増えてくる感じ。やる気がないというより、『居心地がいいから追加努力したくない』っていう感じでしょうか…」

「デキる人」と「そうでない人」の割合は?

「部署によりますが、7:3で「頑張ってる人」が多いかな。収益があがっていて人が少ない部署では、フリーライダー的な働きができないですから。そんな人に対して叱咤激励するかどうかは、その部門のトップ次第ですね。いずれにしても、ダラダラする人にとっては居辛い環境です。使えなくて、現場(リテール営業部門)に飛ばされることもあります」

たまにニュースになる「証券会社の不祥事」については?

「コンプライアンスについては結構厳しい縛りがありますから、基本的に違法行為をやる余地はありません。仕組み的に無理なようになってるんです。ニュースになるような事例は、個人的に故意にやっているパターンでしょうね」
「他社で何か不祥事が明らかになる度に、コンプライアンス研修が行われます。結構多くて、月に2~3回くらい。内容は他社の事件例を共有するもの。他にも、『社員が業務用携帯をなくした』といった事件があればすぐに全支店宛に速報が飛ぶし、そんなことが数回続いたら即研修。支店名と事件、他業種での同様事例を学ぶことになります。そんな感じなので、意識は高いですよ。これまで業界全体でいろんな不祥事があったので、もう次はないという危機感でやっています」

<一方で、営業現場はあまり昔と変わらないブラック臭>

連綿と続いてきた「証券会社=ブラック」というイメージをお持ちの方にとっては、本社勤務の「普通っぽさ」は意外なイメージを持たれたかもしれない。確かに投資家保護目線での法規制も厳しくなったことだし、証券会社はブラック企業臭を脱していったのか…と思いながら今度は現場の営業社員複数にインタビューした。

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