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ゆうちょ銀行

~行員による貯金着服疑惑、杜撰なデータ管理の実態~

郵政民営化に伴い、日本郵政公社から主に郵便貯金事業などを引き継いで2006年に準備会社を設立。2007年に現社名である株式会社ゆうちょ銀行に商号変更して発足した。貯金残高は約180兆円で、三菱UFJ銀行の預金残高約149兆円を抜き、国内最高残高を誇る。法律上は都市銀行に含まれないが、みずほ銀行以外で全国47都道府県全てに店舗を有しているのはゆうちょ銀行のみだ。

全国2万4,000箇所に上る郵便局内での窓口業務は日本郵便に委託し、委託先の郵便局の貯金窓口は、ゆうちょ銀行の代理店(銀行代理業務・金融商品仲介業務)として業務を行っている。また全国6万台に上るATMについても、郵便局内ATMの日常管理業務は直営店では直営店の従業員が、それ以外においてはATMが設置されている日本郵便の従業員が業務を受託する形でおこなっている。

日本郵政グループの一員としての安定感からか、毎年発表される「就職人気ランキング」の類では常に上位にランクインしている。2020年11月に発表された東洋経済オンライン「学生に就職を勧めたい大手企業ランキング100」においても、コロナ下の同年5~6月に各大学のキャリアセンターにアンケートを実施し、551校からの回答結果として日本郵政グループは堂々の7位に位置している。こちらでも評価軸は「安定」のようだ。

そんな人気企業のゆうちょ銀行だが、実は以前からブラックな噂が絶えない会社でもある。就活生や親御さんは、イメージだけの安定感のみならず、このような内情も充分御確認の上で企業選びをおこなってもらいたいものだ。

同行では2020年9月から10月にかけての1ヶ月間だけでも不祥事が相次ぎ判明
しており、キャッシュレス決済関連の不正出金の被害額は約5000万円に及んでいるほか、不正アクセスによる個人情報流出なども明らかになった。一連の事件で共通するのは、セキュリティーに対する認識の甘さだ。組織の体質がその甘さを助長したとの指摘もある。

民営化以前の日本郵政公社時代の話になるが、郵便局職員らが顧客の貯金や保険金を着服した総額は、05~07年度上半期のわずか2年半で20億円以上に達しているのだ。着服された金は「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命保険」がそれぞれ債権として引き継いでいるが、その後も返済は大きく進んでいない状態である。中には元局長が一人で2億円にものぼる「ATM補充用現金」を着服した例もあり、管理体制のずさんさには常々疑問がもたれていた。

同行に関して特に多く報告されているのが「個人口座の記録が消える」という事件である。つまり、あったはずの貯金口座がなくなっているのだ。常識的に考えてありえない事態なのだが、専門家の間では「よくあること」と認識されている。具体的な事例をみてみよう。

<事例Ⅰ>外務員の着服

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