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京都中央信用金庫

~最高裁で暴かれた、信金最大手における悪質偽装融資の実態~

日本の金融機関を総資産額でランク付けした場合、都市銀行で最大なのは「三菱UFJ銀行」で、地方銀行なら「横浜銀行」だ。では、信用金庫のランキング1位はどこなのかご存知だろうか。

それは、京都市に本店を置く京都中央信用金庫(以下「中信」と記載)である。その総資産額は約5.5兆円(2019年3月末時点)と、2位の城南信用金庫(約3.9兆円)を大きく引き離して業界トップの圧倒的規模を誇っている。営業地区を限定されている信用金庫という業態でありながら、同庫の資金量(預金量)は都市銀行を含む全国539の金融機関で35位にランクイン(2016年3月末時点)。関西の地域金融機関中では4位のポジションにある他、貸出金量・内部留保額いずれも業界トップクラスの規模である。

そんな中信において今、会社ぐるみの偽装融資に関する疑惑が持たれており、一部は裁判にもなっている。しかも、中信の不正行為が裁判でも認められ、中信側が敗訴する事態にまでなっているという。

2002年に発生した「京都中央信金立てこもり事件」

中信にまつわる大々的に報道された不祥事として、2002年に「京都中央信金立てこもり事件」が起きている。これは中信との間に取引上のトラブルを抱えていた男性が、「警察や検察に、このトラブルに介入してほしい」との要求を突き付けて中信本店に人質とともに立てこもった事件である。

男性は不動産会社の役員を務めていたが、経営者が夜逃げしたことで残務処理を担うことになった。そこに中信が現れ、「残務処理に必要な資金を全て融資する」と勧誘し、男性の個人保証を取り付けた。しかし、結局中信は融資を実行することなく手を引き、男性は個人財産を切り崩して関係各所への支払いをせざるを得なくなってしまった。「中信に裏切られた」と感じた男性は警察などに相談したが、まったく相手にされなかったという。そうした一連の状況が犯行の根底にあったと考えられる。

約20年前の事件だが、中信の融資先においては現在でも同様の事案が起きているのだ。複数の被害者から筆者のもとに告発が寄せられており、複数の裁判も進行中である。具体的にはどんな被害なのか、典型的なパターンを説明していこう。

「押し貸し」と「貸し剥がし」事件

とある個人商店では長年赤字が継続していたが、中信は融資に応じた。貸付にあたって、中信から斡旋を受けたコンサルティング会社が財務調査と事業計画立案を請け負うのだが、その内容は在庫調整や実態のない資産計上など、いわば「粉飾決算」をアドバイスするものであった。そして当該事業計画を基に融資は実行されるが、もともと赤字になるくらいの低収益事業であるため返済は滞る。すると中信は当然、経営者をはじめとする連帯保証人の私財を担保として引き上げにかかることになる。

話はここで終わらない。中信はその後、経営者の親族や役員に近づき、「追加融資をするから経営を引継いでほしい」「引き受けてくれれば、今の経営者の連帯保証は外すように努力する」等と甘言をもって提案してくるのだ。彼らはその言葉を信じて経営を引き継ぐが、結局中信は新経営者に対しても連帯保証を付け、彼らの私財までも引き上げにかかるのだ。 

中信を訴えていた被害企業の経営者親族は、筆者の取材に対してこのように語った。

「経営が危ないとなってから親族の会社の経営の中身を初めてみたのですが、何年も前から不良在庫を黙認し、財務状況を粉飾させた上で、本来なら貸すべきでない資金の貸付を行っていました。そのために、親族は借金をどんどん膨らませて、私財をすべて失う状況になっています。借りる方も悪いのですが、私としては『なぜあんな状態になっても事業を継続させて赤字を垂れ流させたのか?』『然るべきタイミングで会社をたたんでいれば、何も私財を全部失うことなどなかったのに、金融機関の姿勢としてどうなのか?』と憤りを感じてなりません」

「偽装融資」と「会社ぐるみの書類偽造」事件

またあるホテル事業会社(企業A)では、代表者の親族が営む別会社(企業B、中信の融資先)に対する不良債権回収のため、中信担当者がその親族(企業B社長)をそそのかし、勝手に企業A代表者らの印鑑を持ち出させたうえ、担当者が企業A代表者の署名も偽造するという形で、偽装融資を繰り返し行った。

被害者である企業A代表者は、身に覚えのない担保設定がなされていることに気づき、中信の不正を知ることとなる。その後中信とのやり取りの中で、偽造された多数の契約書類が存在することと、企業A代表者と会ったという当時の担当者は中信の中に誰一人存在しないことが明らかになった。

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