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AniPAFE2021、第5回MCL大会参加作品について【ラストイニング】

2021年9月30日に投稿した作品について書かせてもらいます。

イベント結果としては、

第5回MCL大会静止画部門6位

AniPAFE演出賞7位、構成賞4位、総合賞5位

というありがたい評価をいただきました!審査員の皆さん、投票くださった皆さんありがとうございました!!!


1:ソース(ラストイニング)の概要

今回は初めて完結済みの漫画で作らせてもらいました。

概要

『ラストイニング―私立彩珠学院高校野球部の逆襲』は、スピリッツで2004年から2014年にかけて連載された野球漫画で、主人公を監督にすることで、高校野球を色んな側面から描いた作品です(全44巻)。

落ちぶれた野球名門校(私立彩珠学院高校:略称「彩学」)が廃部の危機から脱するため、新監督を招いて甲子園を目指すという王道のストーリーです。

しかし、元インチキセールスマンの監督が主人公なので、監督同士の駆け引きや選手への指導法、高野連とのいざこざや学校経営と高校野球の関わりなど、他の野球漫画とは違った魅力を味わえる作品です。

主要キャラ

・鳩ヶ谷圭輔(新監督):通称 ポッポ

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甲子園優勝以来、最も好成績を残した時のキャプテンであり、元インチキセールスマンで座右の銘は「人生勝ち続けなければ意味がない」

得意の話術でその気にさせ、独自の野球理論や練習法で野球部強化を図っていく。実際は草野球でも本気でやっちゃうただの野球大好き人間。

・日高 直哉(ピッチャー)

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エースピッチャー

中学時代は名門の春日野大栄高校にスカウトされたこともある実力の持ち主だが、気分屋で熱くなりやすく、いわゆるお山の大将。

ポッポの指導を受ける前の球速は135キロ程度。

・八潮 創太(キャッチャー)

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常に周りを見て動き、疑問を持ったら解決しないと気が済まない。中学時代目立った選手ではなかったが、ポッポの野球論を最も吸収し、最終的には名門校からも警戒される存在になった。

今回のMADでは出番少な目ですが、部員の中では主人公格の一人

・大宮 剛士(4番)

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中学時代はオール岡山で4番を打ち、高校も名門の岡山商学館へ進学したのだが、とある理由で高校を辞め、草野球をしているところでポッポと出会う。1年しか猶予がない彩学は高野連の規則の隙間をついて彼を彩学に入学させる。

同じく今回のMADでは出番少な目ですが、以下略

・大井 克豊(二塁手:右下)&蓮沼 哲也(遊撃手:中央下)

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いわゆる脇役っぽい部員ですが、自分の好きなシーンによく登場する彩学の二遊間。全ての選手たちにスポットが当たるのもこの漫画の魅力です

・明石 慎之介(ピッチャー)

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聖母学苑(春のセンバツ出場校)の2年生エースピッチャー。150キロを超えるストレートと多彩な変化球、マウンド度胸を兼ね備えたプロ注目の逸材。センバツで故障したため、夏の予選では背番号20をつけている。

2:選曲

今回はmiwaの「again×again」を使わせていただきました。

今回は初めてソースを決めてから知った曲で作りました。曲を探し出して2週間ぐらいたったころに出会えました。初めて聞いた時のサビの疾走感の雰囲気がすごく高校野球っぽい感じがしました。

歌詞もAメロBメロの部分がポッポと出会う前とその後の日高と上手くマッチしてるし、一番盛り上がっていくラスサビ前の歌詞も積み上げてきた努力と策略が炸裂する場面にバッチリだと思い使わせてもらいました。あとラスサビの入りの「だから」のmiwaの力強さに惚れた

裏話的なものですが、構成を組みだした段階(7月上旬)では、miwaの楽曲はYouTubeでブロック対象でした(実際去年の垢さんのハガレンのchAngEは歌ってみたでした)。いくつかパターンを試して、ライブ音源を編集すればなんとかなりそうだったので、編集をはじめました。

その後、奇跡的に自分の投稿時期には原曲でも収益化しなければ使用可能に変わっていたため、YouTube、ニコニコ動画ともに原曲(2番カットVer.)で投稿できました。ありがたやぁ

3:構成

全体構成

今回は、作中最大の山場である県大会決勝VS聖母学苑の中でも私が一番好きな明石からスクイズを成功させるシーンをなんとかやりたいというところから始まっています。ここを最も盛り上がるラスサビに使い、その盛り上がりを維持したまま、エース日高の成長を描いて当初の目標である甲子園出場を決めるところで締めるという形にしました。

ここを上手く見せるために、そこまでの構成を組んでいきました。全体としての流れは

①イントロ:彩学野球部の現状と物語の目標提示⇒新監督登場⇒エースと新監督で衝突⇒勝負の結果エースが負ける

②Aメロ:エースの性格を過去描写と新監督からの指摘に沿って見せる

③Bメロ:明確な目標の提示

④1サビ:150キロを目指した練習と監督の指導法や野球論

⑤Cメロ:練習描写と監督の鼓舞から県大会の過程へ

⑥間奏:県大会決勝開始直後から監督の仕込み(スクイズの場面でフォークを投げさせる)

⑦ラスサビ:練習の成果を発揮してスクイズで得点⇒決勝の攻防の野球描写⇒エースの成長(技術的成長と精神的成長)⇒甲子園出場決定

⑧アウトロ:甲子園に向けた意気込み⇒(私立彩珠学院高校野球部の逆襲という言葉を使った文章を添えて)甲子園のチラ見せからタイトルで締め

となっています。

構成組み立て

あくまでこの作品の場合にはなりますが、こういった構成を組み上げていくプロセスみたいなのはあまり見ない気がするので、思考順に書いてみます。

見せ場(スクイズ)の流れ:ここのスクイズは、試合開始直後からの仕掛け(ポッポの采配)とこれまでの練習の成果(選手たちの成長)が重なって成功する作中屈指の激熱シーンです。それぞれをどこで見せるかから考えました。

・ラスサビ前(落ちサビ)の「歩んできた道の先」という歌詞に練習の過程を合わせたい

・間奏部分で事前の仕込みを見せる→落ちサビで練習を振り返りながら種明かし→ラスサビ頭でスクイズ成功の流れ

・振り返る練習描写をどこで入れるかは保留(1サビが濃厚?)

エースの成長:選曲の時点でAメロで日高の過去とそれを指摘するポッポとのやり取り、Bメロで150キロという目標を提示するという流れは歌詞から決めていました。その目標達成に向けた練習と成長結果をどこで見せるかを考えました。

・Aメロ開始とともに、日高の過去や性格について描写する→イントロでポッポとの勝負の決着まで見せる必要あり

・1サビ前半で、目標に向かって前を向いた日高の練習を持ってくる

・ラスサビで上記の練習の成果を見せて技術的な成長を見せる⇒「理想を形に変えて新しいドア開くよ」の歌詞の部分で目標の150キロに一番近づいた148キロ(県大会中では最速)を出す

・ラスサビ最後で甲子園出場を決めるシーンを持ってくるので、その直前に日高の精神的な成長を見せる⇒2アウト満塁のピンチの場面で「最高じゃねぇか」=「ピンチになっても自分の力で抑えるのがエース」というポッポの言葉どおりに成長した姿を見せる

物語冒頭からAメロへの流れ:ここで入れたい要素としては、彩学野球部の現状とチームの目標、新監督ポッポと日高の衝突、勝負の結果の提示です。

・リズムや印象的な楽器の音がある部分に合わせて展開を変化させる

・ギター音だけの部分で彩学の現状を説明

・最初のドラムの音で新監督登場

・ギターのスライド(ギューン)のところでタイトルを出す

・その後掴みとして野球シーンを入れる=日高のピッチング

・勝負の開始は「again」の歌詞に合わせる

・日高のピッチングから「again」の間に監督と日高が衝突する

前後の流れを作る:これで残りは1サビ後半、Cメロです。残りの入れたい要素としては、①スクイズ成功に必要な練習部分、②県大会決勝までの過程の二つです。当初はそれぞれ1サビ後半に①を、Cメロに②を入れてみたものの曲調や尺がしっくりこなかったので

・1サビ後半はポッポの野球理論の中からいくつか示す

①1点ゲーム=秋季大会に出ない理由の一つ。毎回相手に1点だけ取られてくる=勝ち負けをかけた試合ではできない練習です。ここは原作既読者向けですが、2分33秒あたりからの一連の流れでは、聖母の先制点の場面を使っています。1アウト満塁の場面での相手のタイムリーヒットを打たれるも、ファーストランナー、セカンドランナーでアウトを取って、このピンチを1失点で切り抜けるシーンです。原作で言及はされてませんが、ここはピンチを最少失点で切り抜ける1点ゲームの成果だと思っているので、使わせてもらいました。(まぁ相手さんの暴走気味なホーム突入もあったけど)

②マジシャンズセレクト=間奏部分での仕込みの根幹。狙い球(フォーク)を引き出すために、こちらから仕掛けて相手を誘導していきます。

・一旦落ち着いたCメロの前半で、練習描写を入れながら大会に向けた鼓舞のテキストでこれまでの歩みを強調

・間奏に向けて盛り上がっていくCメロ後半で県大会の様子をダイジェストで描く

という形にしました。

4:演出的なお話

日高の成長:Aメロでは現在の日高の性格的な課題部分の提示、Bメロで明確な目標をもらい、1サビで目標に向けた練習、ラスサビでは成長を示し、アウトロではチラっと甲子園で目標達成したよっていう部分を出しました。

①いきなり出てきた謎の線。一瞬だけ日高の背中を映していまして、過去ばかり気にしている+迷いが多いといった意味合いです。そのまま過去描写に飛ぶので冒頭のポッポから日高への問いかけに対して思い返してるような繋ぎでもあります。

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②Bメロでこの謎の線が再び登場します。明確な目標である150キロを目指せという言葉で、周りばかり気にしてごちゃごちゃしていた日高の気持ちが一つの目標に向かう気持ちをそのまま一本の線にまとめて表現しました。「胸を刺す感情(悔しい気持ち)は、自分を変えるためにある」という歌詞が上手くシンクロしてくれてれば嬉しいです。

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また、この線が1サビでの150キロへの道のテキストに繋がるように意識しています。

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マジシャンズセレクト:超高校級ピッチャーである明石から点を取るために、ポッポの仕掛けにより、スクイズの場面で狙いたい球(フォークボール)を引き出しました。ポッポの仕掛けは5段階。

①三振を奪うことがモチベーションの明石に対して、決め球の真っ直ぐをアウトになってでもとにかく当てる

②三振を確実に奪うためにフォークを決め球に使ってくる

③追い込まれたらフォークが来るので、ピッチングフォーム等からフォークのクセを探す

④フォークの時に走って、相手に見破っているぞと伝える

⑤スクイズの場面を作る。こうなれば、フォークでカウントを稼ぎに来るというのがポッポの読みでした。ここの監督や相手キャッチャーとの読み合いは非常に読み応えがあるので是非原作で楽しんでいただきたいです。

この5つの段階をクリアする度に、少しずつ壁を壊していきます。さらに少しずつ画面を明るくしていき、ラスサビ前で壁をぶち破る。あとはしっかり決めるだけ!頑張れ大井!

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5:技術的なお話

スコアボード

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①ボードの土台となる部分を作ります。ソフト内で作ってもいいですし、画像編集ソフト等で作ってもOKです。注意点は、電灯の部分は切り抜いておくことです。

スコアボード土台

②ボードの土台にSurface Studioエフェクトを適用します。Surface Studioエフェクトは簡単に2D画像を疑似3D化したり、表面に傷をつけたりすることができる非常に有用なエフェクトでここ以外でも何回か使わせてもらってます。Lightレイヤーを追加して光の当たり具合も変えることができます。全体のHeightやDepth、Surface1のBevelを調整して、立体感を出します。

スコアボード表面

スコアボード3D

③点数のテキストと薄めのグレー平面に対してDot Matrixエフェクトを適用します。テキストの方はGolwをかけておけて点灯している様子を表現できれば完成です。

スコアボード電灯

スコアボードドット


ピッチングモーション

ピッチング1

以下の3カットを使用してアニメーションを作っています。

ピッチング素材

ピッチング前後はLive2D(パペットでもいけると思います)でアニメーションさせたものを3コマ落ちで流し、中割りカットとして真ん中の画像を3フレームだけいれることで全体を通してキレイなアニメーションになるようにしています。

ピッチングイージング

それぞれ前後のアニメーションは中割カットを挟んでイーズインアウトさせ、最も動きの激しい場所を中割カットにすることで画像の切り替わりの違和感をなくせたのではないかと思います。

中割カットからピッチング後のカットへ移る時にエフェクトを入れて動きの補完をしてあげるとキレイに繋がると思います。最後に振動やカメラの寄り引きを加えるとさらに迫力が出ると思います。

壁の破壊

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Blenderの破壊シミュレーションを使ったものに後付けでモーションブラーと振動等を足しています。破壊シミュレーションは有料アドオンの『RBDLab』を使わせてもらいました。標準アドオンのCell Fractureでも同様のことができるかとは思いますが、特定の部分だけ細かく砕いたり、指定した範囲を割れないようにしたりというコントロールが(Blenderクソよわ勢の自分でも)非常に簡単にできます。また、砕いた部分から細かい破片や煙を別途生成してくれたりするのも便利です。なかなかに重いけど…

破壊シミュレーション1

モーションブラーの後付けはOFXプラグインの「Reel Smart Motion Blur(RSMB)」をHitFilm上でかけています。めっちゃキレイなモーションブラーが一発でかかるので金かけた甲斐がありました。HitFilm標準のMotion Blurエフェクトでも可能かと思いますが、コントロールがめちゃくちゃピーキーなので調整が難しいです。RSMBは前後のフレームからモーションブラーをかけるので、静止画を切り替える時等には動作が怪しくなるのが静止画素材で動画を作る際の注意点ですね。今回も1fだけ明確に調整ミスの部分がありました。

土ぼこり

土ぼこり

標準のParticle Simulatorで作っています。

①Emitter(発生源)の形状はCube(立方体)として、ボールの着地点に合わせます。Trajectory(放出の向き)はCone(放射状)としてボールの進行方向の向きにします。大きく飛び散らせたかったので、Radiusを少し高めに設定しました。

パーティクル1

②大小の塊と土煙をそれぞれ飛ばします。粒の形は内蔵されている形状からDebris Concreteにしました。ボールの着弾したところでParticle Per Second(1秒間の発生数)を8000→0へ、発生してからの動きはかなり速めに設定しました。

パーティクル2

③さらに速度は飛び出したあとの動きをコントロールするために、LifeTimeで調整します。今回は、Speedを以下のように設定(Lifeが1秒なので、0.4秒で100%→5%で減速させました。

パーティクル3

④ここまで出来たらParticle Systemを複製し、サイズを小さくしてランダム感を増やします。

⑤煙は先ほどのParticle Simulatorをレイヤーを複製し、パーティクルの形状をDark Smoke Fireとしました。Particle Per Secondは15000→0に増やしています。

⑥エフェクトで色(Tint)と形状(Heat Distortion、Smoke Distortion)を調整して完成です。

パーティクル4

6:リファレンス

パワプロオープニング(2010~2020)

めちゃくちゃお世話になりました。特に毎回ある12球団の選手が連続で出てくるところは、県大会の過程を描く時にとても参考になりました。カメラワークやボールの出方など、そのほかにも色んな表現があり同じ野球でも見てて飽きない見せ方の勉強になりました。

ドコモCM(ahamo)

ポッポと日高の勝負の場面で参考にさせてもらいました。

構図やデザイン

構図などに関しては、PintarestやAdobe Stockで「野球」や「スポーツ ポスターデザイン」などの検索で収集しました。

7:終わりに(総合賞1位作品について)

正直前作の「左ききのエレン」が皆様から非常に好評だったこともあり、スポーツ漫画で作る時に超えていけるのか?という個人的なプレッシャーに加えて、こういった順位が出るイベントへの参加作品は制作中の不安や他の作者さんの気合も段違いでした。

そうした中で、去年の結果から比べると両イベントともに大きく順位を上げることが出来たのは本当に嬉しかったです。結果発表は後半になるにつれてめちゃくちゃドキドキしてたので、特にAniPAFEは結果発表生放送に出たことを非常に後悔しました(笑)

MCLでは両審査員からにやにやできるくらい感想いただいたので、何回も見ています(笑)今年の二人がすごすぎたから次回の審査員はめちゃくちゃプレッシャーだろうと思いますが、頑張ってください(誰がやるんか知らんけど)

総合賞1位作品について

個人的にこういった制作を始めたいと思ったのは、AniPAFE2019のしょーさん、Totoriさん、てへさんの3作品がきっかけでした。

自分をこっち側へ引きずり込んだ張本人のてへさんが、この作品で総合賞1位を取ったのは、めちゃくちゃ嬉しかったとともにめちゃくちゃエモかったです。本当におめでとうございます!MADMAXも楽しみにしています。今回も欲しかったけれど、感想文はさすがに自粛しておきます。。。

AniPAFEについて

さて、去年初投稿で参加したAniPAFEでしたが、結果発表以外でも、全作品レビューや生放送などで色んな方が感想言ってくれることがとても嬉しかったことを今でも覚えています。

AniPAFEというイベントは本当に特別だというのが進捗ギリギリだった時の大きなモチベーションでした。

いはさんの運営引退はすごく悲しいですが、今後はyuuさんとゆきのふさんが引き継いでくださるとのことですので、このお祭りにまた来年も参加できるように、頑張っていこうと思います。そのためにも、色々勉強したり新しい表現に挑戦してみたりしようと思うので、ごゆるりと次回作をお待ちいただければありがたいです。

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