其の1 『標準法医学』第7版
見出し画像

其の1 『標準法医学』第7版

221B


常に手元に置いておきたい本と、必要な時に図書館で見ればいいやという本を分けられれば良いのですが、私は何でも手元に置きたい欲張り者です。

とうぜん書棚はいくらあっても足りない・・・
なのに、またまた厚くて重くて枕に良い本を手に入れてしまいました。

『標準法医学』第7版  医学書院 定価5,775円
B5size、厚さ1.7mm、重さは、中くらいのキャベツひと玉ぐらい。重い。


先々月、アイコンを3つ考えてくれと言われ、そのギャラです。
仕事で文章は書きますが絵は全く専門外。脳内イメージを図解するのが好きなので、時折こんな仕事(遊び?)がきます。
「プロじゃないので、お金じゃなくて本を!本を下さい!」という我が儘を
聞いていただき、現物支給で2冊GET!その1冊が、法医学のテキストです。


Ⅰ.法医学とは

医学的解明助言を必要とする法律上の案件、事項について、科学的で公正な法学的判断を下すことによって、個人の基本的人権の擁護、社会の安全、福祉の維持に寄与することを目的とする医学である。
           (日本法医学会教育委員会報告による 1982)


法医学といへば、「死体の声を聴く」みたいなモノだと思っていたら、生体
物体・現場・死体
などを対象とするらしい。

生体(生きている身体)では、創傷の鑑定・親子鑑定・性や虐待に関する問題・薬物依存の問題など、「生きている被害者の傷の評価」をする。

物体とは「生体、死体由来の体液、組織、分泌物、それらが付着している物体」をいい、 血液、精液、毛髪などを精査するのでしょうが・・・血痕とか、肉片が付着した衣類とかですかね?

現場は、犯罪現場、事故現場、災害現場などに足を運び、生体や死体の置かれた環境を観察・評価すること。現場の状況が悲惨なことも多く、後の生体・死体の評価の際に要らぬ先入観とならないよう心がけるそうです。

そして、TVドラマなどで最もなじみ深い死体解剖は、目的によって系統解剖
病理解剖・法医解剖の3つに区分されています。

法医解剖には縁がありません。
以前、一度だけでいいから司法解剖を拝見したいと知り合いにお願いしたら、「犯罪がらみだから、辛いよ」と言われました。損傷とか腐敗のことだけじゃなくて、背景が悲しいのだと・・・そうだろうな・・・。
好奇心で「見たい」とか言った自分がもの凄く恥ずかしくなりました( ̄Д ̄;)


Ⅱ.死因究明制度

この本の第1章で、日本の死因究明制度が説明されていて興味深いです。
日本は死因究明制度が遅れているのだそうです。人々の生活に及ぼす影響は?なんだ? 普通に生きてりゃ関係ないじゃん?と思っていたんですが・・・

死因判定をおろそかにすると、“同様の犯罪や事故が繰り返されてしまう。その結果、国民の安全や権利が阻害されてしまう”のだそうです。なるほど。

では、どれほどおろそかになっているか?気になります・・・
日本を知る前に、まずは諸外国の死因究明制度から。


1.ヨーロッパ諸国(大陸型)の制度
死亡までの経緯がどんなものでも、明らかに病死と判定しかねる場合は犯罪の疑いが残る。そうした犯罪性の有無を見極める!という色が濃いのがヨーロッパ諸国の制度だそう。
スウェーデンやフィンランドでは、警察に届けられた異状死体のうち約90%が法医解剖されているらしい。


2.英米系諸国(ニュージーランドやオーストラリアを含む)の制度
英米系諸国では、民事・刑事裁判の他に死因判定のための裁判を行うコロナーという行政官があり、警察や法医学研究所と連携しつつ死因を究明しているといいます。犯罪死を疑う場合は速やかに警察捜査に移行、非犯罪死と判断した場合は、事故死や流行病などの予防のために死因情報を活用する役割を担っています。
異状死体事例のおよそ50-60%が法医解剖されるとのこと。


3.日本のの死因究明制度の実態

では日本はというと、異状死あるいは変死事例の法医解剖率は約10%監察医制度のない地域では約5%と諸外国に比べ著しく低く、犯罪や事故、流行病の見逃しの一員となっているとのこと。率が低い理由はいくつかあるらしい。
 ※現在監察医制度が置かれているのは、東京23区、横浜市、名古屋市
  大阪市、神戸市のみ。

歴史的背景

江戸時代に、中国古来からの死因特定方法 ― 役人による死体の観察と周囲の状況調査からの犯罪・批判財政の識別 ― を取り入れ、近代法治国家を目指した明治以後も続いた。第2次大戦後、日本政府が浮浪者の死因を「餓死」としたことに対しGHQが「流行病だったらどうすんの?」と死因解明の圧力をかけ監察医制度(死因が明らかでない場合、犯罪・非犯罪に関わらず監察医が解剖する)が導入されたのだそう。

現在の死因究明を目的とした法医解剖をまとめると、こんな感じのようです。犯罪性が有るか?無いか?
それを科学(医学)でなく、役人による検視(観察)で決定しているところが、
日本の独自性?基本姿勢は江戸時代から変わってないってコトですか?

検視の結果、遺体の外表と周囲の状況から犯罪性なしと判断された場合、誰が死因究明するのか?決められていない。
監察医制度がある地域ならば、監察医が解剖の必要性を判断し、自治体が主体となって実施するらしい。
では無い地域は?責任も義務もないのに誰が手間のかかる解剖をするの?となる。しかも家族の同意が必要となり、亡くなっても身体にメスを入れることを忌み嫌う国民性も手伝い、犯罪性のない死因の究明のための解剖は難航する、という現実があるのだそう。


お金がない!

系統解剖・病理解剖の費用は法で定めてはいませんが、教育や研究などの目的を含むので、大学や病院で負担することが多いため、お金が無くてないがしろになることは少ないです。

法医解剖のうち、費用負担者が決められているのは唯一司法解剖のみです。
司法解剖の費用は警察法により国庫負担が定められているそうで、平成25年度は約16億円(うち解剖謝金は1億7千万円)と予算計上されてました。
(一方、執行費:22億円と報告されていて・・・大幅な赤字運営なのかな?)
とてもお金がかかるのですね。

モンダイは、犯罪性の無い死因究明である行政解剖や承諾解剖です。公衆衛生の維持を目的としているのに、家族などの負担になります。

【行政解剖費用の具体例】
神奈川県横浜市では、解剖費:5万円程度、文書作成費:1万円、それらに遺体を運ぶ輸送費・冷蔵費など、合計すると10万円を超えるらしい。
東京都は公費負担みたい(年間10億円以上の予算が付いています)。

どうやら本当に日本の死因究明制度は遅れているようです。
制度の歴史やお金以外にも、遺体を傷つけたくない文化も影響しているのでしょうが・・・
警察の初動捜査ミスにより殺人事件が見逃されるというよりも、行政解剖の率が低いことで事故や感染症、過労死などの死因究明されず、公衆衛生が損なわれるのは怖いですね。


Ⅲ.おすすめポイント♬

最後に、この本の一推しポイントを!

もくじ見て下さい・・・窒息だけでこんなにスッキリまとまって!
ウットリするでしょう~o( 〃゜▽゚〃)ゝ



もし貴方が、夜中の12時に「窒息について知りたい!」という欲望を持ったとします。その時に備え(ナイナイ)、書棚にこの1冊!

その他にも・・・「異常環境下の死」、「DNA型検査」などの章があります。


一寸マニアックなので、あまり興味をそそる内容では無いと思いますが・・・
お付き合い下さった方、ありがとうございます~


↓こんなの誰も引っかけないよね・・・
# 死因究明制度  # 法医学


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
221B
仕事と読書(BL含む)と猫と料理が大好きです。仕事にまつわる面倒ごとからの逃避行中に、ひっそりnoteに落書きします。SNS5年目でtabooがさっぱり解りませんので、ナニかあったらご一報下さい。