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棚の本:はじめての構造主義

フランスの文化人類学者・思想家、レヴィ=ストロースの構造主義についての入門書です。
レヴィ=ストロースは、インセストタブー(近親相姦・近親婚のタブー)や、神話の構造を解き明かしました。

くまとら便り

現代思想は、構造主義から始まったそうです。
構造主義の後に、ポスト構造主義というのが出てきたんだそうです(25頁)。
それでどうも今は、ポストポスト構造主義の時代らしいです。

何かが始まって、ずいぶん前に終わったようでした。

ちなみに、レヴィ=ストロースは、実存主義を掲げるサルトルに応援してもらっていたのですが、論争して、事実上負かしてしまったのだとか。
こうして時代は、実存主義から構造主義へと変わったわけです。
まったく、諸行無常ですね…

「構造主義のルーツ」(第三章)では、ヨーロッパの知のシステムについての解説があります。
数学・物理・哲学等が、互いに関連しながら発展していることが分かります。

公理(自明の真理)から、証明の連鎖で定理が派生するユークリッド幾何学、アリストテレスの三段論法、ニュートンの古典力学など、唯一の真理があるという立場から、だんだんと真理が相対化していき、数学では公理は規約(約束ごと)だとされ、物理では相対性理論・量子力学が出てきたという流れです。

思想の分野でも、真理から制度へという流れがありました。
それまでの、社会は真理に向かって直線的に進歩するという見方から、レヴィ=ストロースは、未開人の社会も、ヨーロッパ社会に比べて遅れているのではなく、人の思考は共通の構造に支配されているのだという見方をしました。

人間の思考・行動のパターンの後ろには、目に見えない構造がある。

例えば、人は交換そのものに価値を見い出していて、腕輪や首飾りは島々を回り続け、インセストタブーがあるのも、女性が交換の対象だから。
言葉もお金もそう。交換される要素が変わっているだけ。
なるほど。

目、鼻、耳、口といった顔の各要素は、人により様々だけれど、要素が変わっても、全体としての人の顔という共通の構造があり、それが不変であるのと同じ、といわれると、なおさら説得力があるような気がしてきます。

とはいえ、最初に書いたように、構造主義の時代はずっと以前に終焉を迎えていて、今はどうも、ポスト構造主義の後の、ポストポスト構造主義の時代だそうですよ。

時代は、すっかり変わっていきます。
私の知らないうちに。

【おまけ】
構造主義は、コテンラジオでも取り上げられていました。
とても分かりやすかったので、リンクを貼っておきます。

ー 交換自体が価値だとすると、ある特定の(異なる/同じ)要素同士を工夫して交換し合ってもいいけれど、どんな人とも簡単に交換できる共通要素があればよい気がします。
言葉を解さない人とも、物やお金のない人とも、性の相手にならない人とも、誰とでも、循環の輪の中で交換できる要素って?


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