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ヘッドハンター名鑑vol.9

※掲載内容(プロフィール等を含む)は取材当時のものです。

今回は、UNDER 30 MATCHING AWARDS 2020 において最終審査員をご担当いただきました株式会社フューチャーリンクの松井健治氏へインタビューを実施いたしました。
松井様は、株式会社ビズリーチ主催の「JAPAN HEADHUNTER AWARDS」のIT・インターネット部門を2回受賞されています。
活躍する現役ヘッドハンターへのインタビュー記事をぜひご覧ください。
※松井氏へのインタビュー記事は、前編、後編の2回に分けて公開いたします。

【松井健治氏 プロフィール】
早稲田大学法学部を卒業後、メーカー勤務を経て、2001年にインテリジェンス系(現パーソルグループ)のヘッドハンティング会社に中途入社。IT/ベンチャー領域の現場責任者として経営層、事業責任者、エンジニアなどの転職をサポートし、最終的には全社売り上げの3分の1を個人で達成。2年連続で社内MVPを受賞し、一定の貢献ができたと考え、同社を退職。2006年に当時のメンバー数名と株式会社フューチャーリンクを創業。IT/インターネット業界のボードメンバーを中心に決定実績は800名以上。インタビューした候補者の方々は1万人以上にのぼる。直近では、AI、SaaS、FinTechなどのスタートアップ領域でも多数の実績を上げている。

インタビュー【前編】

Q. 最終審査員を務めるうえで心がけたことや意識したことを教えてください。

ビズリーチが定めた「審査基準」と「評価指標」に基づき審査を行いつつ、「誰に、どのような影響を与えるか」という点を意識して最終審査員を務めました。例えば「候補者の方々が見て、ヘッドハンターの存在価値をどのように感じるか」「ヘッドハンターが見て、仕事に誇りを持てるか」などです。
私見ですが、U30の取り組みは、ヘッドハンティング業界の全体的な底上げになると考えていて、そこを意識して採点し、コメントをしました。

Q. 同業者視点で、審査項目としてほかに必要だと思った項目はありますか?

「自由評価項目」や「新たな仕組みを作れたか」などがあったほうが良いと考えます。
人材紹介の面白いところは、携わる「企業」も「候補者」も毎回違うことです。しかも、同じ企業、同じ人であっても変化し続けます。一度として同じ仕事はなく、前回の成功要因が次回の失敗要因になることもあります。
余白の大きさが、この仕事の面白いところなので、審査項目も一つは余白を設けても良いのではないでしょうか。
また残念ながら、人材紹介業は数十年以上、ビジネスモデルが変化していない業界です。
成功したら、一定の成功報酬をいただくことが通例で、リテーナー報酬、株を含めた金銭以外の支払いなどが一部で活用されているにとどまります。
ビジネスモデルの硬直化は、働くヘッドハンターたちの思考も硬直させます。
特に、候補者担当と企業担当を分ける分業化やKPI指標の標準化が進んでいる環境は、割り振られた仕事や数字を追いかけることが正解になり、サービスの本質を考えることを難しくします。
「この仕組みに沿って、売り上げや数字がついてくれば良いや」と考えるのではなく、顧客のために、候補者のために、サービスを追求していくなかで、今までとは異なるビジネスモデルや仕組みが生まれていけば、業界全体の底上げにつながると思います。
システム化や合理化が進むことは、サービスが洗練されてきた証拠なので否定するべきではなく、素晴らしいことです。一方で、それらを超えたサービスを提供できたときに、業界の枠も広がっていくと思いますし、そのような仕事をしているヘッドハンターには、求職者が相談したいと思える迫力が備わってくると思います。
その意味では、「新たな仕組みを作れたか」を審査項目に加えた方が良いと考えています。
今回のU30でベストマッチング賞を受賞された株式会社SIECの佐原亨様は、サービスの基本的な部分を高いレベルで押さえているうえで、泥臭い仕事にも果敢に取り組み、それを「型化」まで推進していったところが、ヘッドハンターとして素晴らしい仕事をしていると思いました。

Q. 松井様がヘッドハンターになられた20年前は、どのような時代でしたか?

当時は、SNSなどはない代わりに、大学名簿や社内名簿などを入手できた時代なので、今とは異なる形で候補者にアプローチをしていました。電話や手紙はもちろん、道行く人に「転職をしませんか」と声をかけてみたことも(逆に声をかけられたこともあります)。
また、当時は大手の人材グループに所属していたこともあり、MRやコンサルなど、IT業界以外の領域にもチャレンジしました。例えばMRの方の場合は病院に出向き、スーツを着た方はMRと判断し、声をかけてみたり、東京だけではなく、全国の卸を回ったりもしました。
何が正解か分からなかったので、「とりあえず、まずはやってみる」というチャレンジができましたね。
今考えると、かなり遠回りをしましたが、自分にとっては良い経験です。

Q. これからのヘッドハンターが発揮していかなくてはいけない価値は、どのようなものだと思いますか。昔のような泥臭さが少なくなった今、質の向上を目指すうえで何が大切になると思いますか?

システム化、合理化が進んだからこそ、人に会いにいく、話をする、いろいろな体験をする、というアナログ的な行動が価値を高めていくと思います。
人と同じことをやっても価値を発揮するのはなかなか難しいので、自分の頭で考えて、いろいろな行動をしてみることが、ヘッドハンターとしての価値を高めると思います。
また、企業側に対しても、候補者側に対しても、提供するべき価値の本質は近いと思います。「そもそもどうありたいか」「何が不足していて、何を得ていきたいか」「目的に近づくために必要な環境(人材)はどのようなものか」。それらのディスカッションや仮説作りを通して、その実現のお手伝いをすることだと思います。

Q. 今の若手のヘッドハンターにスタンス(心がまえ)のアドバイスはありますか?

ヘッドハンターという職業が世の中に認知され、ビジネスの型も整ってきた分、一定のマンネリ化が出てきているのではないかと思います。一部の企業は取り組んでいますが、他の事業領域とアライアンスを組んだり、人材紹介以外の価値提供も行ったりと、型にとらわれず新たな取り組みにチャレンジしてみても良いのではないでしょうか。

後編の公開は2020年11月18日(水)予定です。
次回もお楽しみに。


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