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ヘッドハンター名鑑vol.10

※掲載内容(プロフィール等を含む)は取材当時のものです。

今回は、UNDER 30 MATCHING AWARDS 2020 において最終審査員をご担当いただきましたKANAEアソシエイツ株式会社の阪部哲也氏へインタビューを実施いたしました。
阪部氏は、株式会社ビズリーチ主催の「JAPAN HEADHUNTER AWARDS」にて大賞である「ヘッドハンター・オブ・ザ・イヤー」を1回、金融部門における優秀賞(MVP)を8回受賞されており、最多受賞者でいらっしゃいます。
活躍する現役ヘッドハンターへのインタビュー記事をぜひご覧ください。
※阪部氏へのインタビュー記事は、前編、後編の2回に分けて公開いたします。

【阪部哲也氏 プロフィール】
同志社大学法学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。営業店、本店融資部、不動産会社などを経て、リクルートエージェント(旧株式会社リクルートエイブリック)へ転職し、金融スペシャリストのキャリアカウンセラーとして金融スペシャリストの転職をサポート。その後外資系ヘッドハンティングファームを経て、2010年にKANAEアソシエイツ株式会社を設立。外資、日系金融機関の双方に対するエグゼクティブレベルの人材紹介で高い業績。2010年にヘッドハンター大賞が創設されて以来、金融部門で最多9回連続受賞。リクルーティング経験17年。

インタビュー【前編】

Q. ビズリーチが定めた「審査基準」と「評価指標」のほかにどのような視点で審査をされましたか。

私が最終審査員として心がけたことは、クライアント企業であれば採用ニーズにお応えできているか、求職者であれば、求職者の関心に関心を寄せ、求職者の要望やスキルを踏まえたうえで、一緒に選択肢を吟味する姿勢をとられていたかという観点で見させていただきました。
そのほかに、人と向き合うエネルギーが十分であるかという点も審査をするうえで見ましたね。
私がなぜそういった視点をもって審査をしたかというと、ビズリーチは、求職者を大切にしているサービスだと思っているからです。株式会社ビズリーチ創業者の南さんが、昔ご自身が転職活動をされた際、面談をしたヘッドハンター全員から異なる求人を紹介され、そこに疑問を持たれたという実体験から、信頼が得られるヘッドハンターを見つけやすいサービスになっていると思います。
そしてビズリーチができたことにより、ヘッドハンティングのプラットフォームが整ったなと感じています。
ですので、私はビズリーチの取り組みに非常に共感していて、重要なのは求職者の関心に自身の関心を寄せることができているかであり、転職できればどこでもいい、早く転職先が決まればよいということではないと思っています。求職者が将来を見据えて転職活動をしているのであれば、それを実現するために今後どのような環境で働くべきなのかを一緒に吟味することが重要だと思います。
また、昨今は企業担当と求職者担当を分けている人材紹介会社も増えてきていますが、分業体制においても、どちらも同じ熱量で取り組むことが大切だと思います。企業と求職者がマッチングする絶妙なポイントを引き出し、双方の懸け橋となることが、ヘッドハンターの醍醐味だと思います。

Q. 企業と求職者が同じ熱量でマッチングするのは難しいことのように思います。そのあたりのコントロールは、どのようにしていらっしゃいますか。

人材紹介業界内では転職における満足度について、「企業7:求職者3」とか「求職者7:企業3」といわれがちですが、双方にとって満足度の高いマッチングになるポイントは必ずあると私は思うんです。
大学受験を例に極端にいうと、偏差値70の学生は偏差値60の進学先を選ばないのと同じです。偏差値70の学生は、より偏差値が高い進学先を受験すると思うんです。たとえ模試等で合格ラインに届いていなくても試験では合格に届くということもありますし、自身の偏差値より低い進学先は、受験したとしても入学はせず、より自分の力でぎりぎり届くか、少し高い偏差値の学校を受験し、入学を目指すと考えています。
転職もその考えと同様で、満足度が「企業7:求職者3」だと、求職者は内定を辞退してしまうのではないかと思います。企業側は採用できてうれしいかもしれませんが、求職者からすると「もしかして他にもっといい機会があったかもしれない」と、どこかのタイミングで思うかもしれません。求職者は「採用してもらえてよかった」という気持ちに、心の底からなりたいものだと思います。
双方にとって満足感がある絶妙なポイントを見つけ出せるかが、ヘッドハンターに問われるもので、そこに介在価値があると考えて取り組んでいます。企業担当と求職者担当で分かれていると、求職者担当がポジションの難度を高いと思い込んでしまって、求職者に採用の可能性があるにもかかわらずご紹介に至らないケースや、その逆で候補者の魅力がうまく企業担当に伝わっていないこともあります。そこで、われわれは企業と求職者双方の満足度を最大化するために「質問するスキル」を重視しています。企業を訪問する際、当該ポジションの専門的な仕事内容について現場責任者に掘り下げてヒアリングするスキルを、社内で徹底的にトレーニングすることで質の高いマッチングを実現しています。

-----具体的にどのようなことをされていますか。

たとえばハイクラスの求職者とお会いすると「経営者になりたい」と相談を受けることがあります。またその際に「『経営者になるためには戦略コンサルタントを経験するといい』と耳にしたので、この企業を受けたいです(この企業を紹介してください)」とおっしゃることもあります。その場合、私はまず、なぜ経営者になりたいのか、どのような会社をつくりたいのか、質問するようにしています。求職者から最初に伝えられた要望は、本当は何を意味しているのかを正確に理解するために質問するのです。質問をしていくうちに求職者がはっとして自分の考えを変えることもあります。求職者の夢や希望をかなえることも大切ですが、聞いた言葉をそのまま受け取って、そのままかなえるのではなく、求職者が夢を通じて満たしたい価値観を引き出し、それを実現することが本当の意味で夢をかなえるということだと思います。
求職者自身が満たしたかった価値観に焦点をあて、われわれがしっかり理解できればマッチングの幅を広げられますし、ご本人の満足度も高められると考えています。求職者の価値観が整理され双方の理解が進むと、求職者の顔つきも変わってくるんですよね。求職者の顔がぱっと変わる瞬間があるんです。私はそこからがキャリアカウンセリングのスタートだと思っています。価値観の満たし方は1つの職業だけでなくたくさんあると思いますが、迷った場合、求職者は自分自身を一番大切にしてくれそうな会社を選んだほうが幸せだと思います。

Q. ヘッドハンターとして独立されて会社をはじめたきっかけを教えてください。

当時大手人材紹介会社で、キャリアアドバイザー職をしていたのですが、求職者の方が優秀なあまり、その方の期待にお応えできる求人がなかったということがありました。この企業が合うかもしれないと思っても、そもそも自社ではその企業の求人を取り扱っていないというもどかしさを感じました。
もし個人で会社を経営していたら自由に求人を扱えますし、関係性を築きたいと思った企業にはもっと泥臭く踏み込んでいけるんじゃないかなと思ったことがきっかけですね。
そういった会社を自分でつくって、求職者の夢をかなえたいと思いました。

Q. 活躍するヘッドハンターとは、どのような方だと思いますか。

活躍するヘッドハンターは今も昔も変わらないと思うのですが、「クライアントから信頼される人になれること、クライアントと個人的によい関係性があって、市場に精通していて有能なコンサルタントであること、そして自分の金儲けよりも適切な人材を確保することに常に関心を持っていること」ですね。
これはゼネラル・エレクトリックを約20年牽引し「20世紀最高の経営者」と呼ばれるジャック・ウェルチ氏が経営幹部人材を求めていた際にエグゼクティブサーチの選定において述べられていたことで、私が感銘を受けている考えです。
私はこれからのことはもちろん、言葉にならないことも相談したいと思ってもらえる距離感をクライアントと築けることが大切だと思っています。
そしてそういったことができる方が活躍するヘッドハンターになれると思います。

後編の公開は2020年12月8日(火)予定です。
次回もお楽しみに。


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