見出し画像

ヘッドハンター名鑑vol.2

※掲載内容(プロフィール等を含む)は取材当時のものです。

【野尻剛二郎氏 プロフィール】
慶應義塾大学経済学部を卒業し、日興證券株式会社に入社。
5年間のロンドン勤務からの帰国後、リーマン・ブラザーズに転職。
モルガン・スタンレーにて日本株式営業部長を務め、南カリフォルニア大学にてMBAを取得し、サーチ業界に転じる。ラッセル・レイノルズにて2年、英国アカマイフィナンシャルマーケッツの日本支社の立ち上げに参画。
リーマン・ショックの際に本社の倒産を受けて、日本支社の株式を100%取得、1年後タイグロン パートナーズに社名変更。金融専門のサーチファームとして今に至る。

インタビュー

Q. 新型コロナウイルス感染症の拡大による、ご自身の業務などへの影響はいかがでしょうか。野尻様ご自身の業務への影響や心境の変化はありますか。

弊社は、もともと比較的自由な働き方を施行していたので、新型コロナウイルス感染症の流行で、私がイメージしていたテレワークの仕組みやチーム内での情報共有の件に限っては、今回よい状態で進められています。
そういった意味では、「コロナ禍」の影響下においても悪いことばかりではないなと思いました。
私は経営者として、情報共有や業務連携によって「1+1=3」になる組織を目指し、メンバーを集めてきました。さらに、日頃から積極的に情報共有をするようなチーム作りを意識していました。
テレワークを導入してからは、「Microsoft Teams」を活用してチーム単位でミーティンググループを作り、ささいなことも含めて情報共有ができる仕組みを作りました。個人での業務が比較的多いヘッドハンティング会社では、こういった仕組みを持つ会社は少ないように思います。
その結果、テレワーク導入前より従業員間の情報共有化が進んでいると実感しています。

Q. 企業様や求職者の方と接するときに、大切にしていることはありますか。

ヘッドハンターの価値はクライアント企業から「こういった人を採用したい」と言われたときに、その奥にあるものをいかに読み取るか、そのために幅広く情報収集し、整理することが大切だと思います。そういった情報を求職者の方に提供することがヘッドハンターの介在価値だと思います。
たとえば候補者の方に「こんなポジションがあります。いかがですか? 興味はありますか?」とご紹介し、「興味があります」と言われたら「はい、分かりました」と紹介していく……。これだったら誰でもできるし、AIでもできてしまうと思うんです。
そうではなく、クライアント企業の業界内での評判や立ち位置、プロダクトの強みや弱み、現状のチーム構成、社内の人間関係や前任者が辞めた背景などの把握に努めたうえでご紹介しなければならないと考えています。そしてそれ以降どのようなキャリアパスが待っているのか、そういう部分もお伝えすることがヘッドハンターとしての価値提供であり、介在価値であり、私が企業と求職者をマッチングさせるために大切にしていることです。
求職者の方と話す際にはこのポジションが本当にその方にマッチするのかを掘り下げていきます。求職者のキャリアパスの解像度を上げるために自分の経験をもとにいくつか選択肢を設けて質問をするようにしています。例えば「10年後こうなりたい」という希望を持っている方には今後の10年間で「このような経験をしたほうがよりよいと思います」と具体的な選択肢を挙げて突っ込んだ話をしていきます。最初はこちらの提案を受け入れていただけない場合もあります。自分自身を客観視していただくためにも、「良薬口に苦し」ではないですが、そういった話もしています。

Q. この仕事をしていて、特に印象に残るエピソードがありましたら、お聞かせください。どういった時にやりがいを感じられますか。

ある外資系のクライアント企業からヘッドポジション案件の要望を伺い、候補者リストを作成してお渡ししたところ、「この候補者の方を採用したい」という強い要望をいただいたことがありました。ただその候補者の方は、現時点ではすぐに転職をしたいという温度感ではなかったため、すぐにクライアント企業への転職を検討されるような状況ではありませんでした。そこから1カ月たち、2カ月たってもクライアント企業の考えは変わらず、「どうしてもこの候補者の方を採用したい」ということで、約1年間、口説き続けクライアント企業は求める人材を採用することができました。
本来であれば短期間(2~3カ月)で採用決定に至るケースがベストですが、素晴らしい候補者の方と出会った場合、求める人材のレベルは、時間がたってもなかなか変わらないものだと思っています。クライアント企業からの要望に1年かけてでもお応えできたのは、この仕事をやっていてやりがいを感じる部分だと思います。
また、長期間アプローチし続けていくうちに、候補者の方が、転職へ前向きになっていただけたことに対しても良かったと思っています。

画像1

Q. 今、金融業界にいて、転職をお考えの方にはどのようなメッセージがありますか。

金融業界内で転職をする際にはゴルフと同じでティーグラウンドから考えるのではなく、ピンのほうから考えるのが大切だと思っています。ゴールがどこにあるのか考えないと安易に転職したとしてもうまくいかないと思うんです。
私は、例えば、50歳の時にどうなっていたいのかを伺ったりします。外資系証券会社だと40代でキャリアの転機が訪れる傾向にあります。その時になってから今から何かできないかと他のことを考えても遅く、50歳になった時には身動きが取れない可能性があります。その次のキャリアや今後の人生について、頭の片隅に置きながら生活することをおすすめしています。日系の銀行に勤務されている方からも、転職を考えているというご相談を受けることがあります。
50代まで銀行にお勤めの方の場合、異業界に転職されるケースはあまり多くなく、同じ業界内での転職が多い傾向にあります。
またそれと同様に、外資系企業に長年勤めていて、専門領域で素晴らしい成績を残されていた方も、適切なタイミングを逃してしまうと、転職先の選択肢が限られる場合があります。自分が目指すゴールを考えつつ、「今やるべきこと」を考えなくてはならないと思います。早め早めに手を打ち、早め早めに将来のキャリアを考える、そして考えたことを行動に移すことが大切になってくると思います。

次回のヘッドハンター名鑑vol.3は、2020年8月31日(月)公開予定です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?