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ヘッドハンター名鑑vol.9

※掲載内容(プロフィール等を含む)は取材当時のものです。

今回は、前回公開した株式会社フューチャーリンクの松井健治氏へのインタビューの後編です。
後編では、松井氏の若手ヘッドハンター時代のエピソードやヘッドハンターとして大切にしていることを中心にご紹介いたします。
ぜひ、後編も最後までご覧ください。
※前編をご覧になっていない方はこちら▼

インタビュー【後編】

Q. 松井様は情報収集やネットワークの構築をどのようにされていますか。

情報収集に関しては、人と話す前に、その専門領域の書籍を読んだり、決算書を見たり、関連するニュースを読んだりしています。先に文字で情報を収集して、人と話して、インプットしていた情報に血を通わせて、そのうえで、文章に書いてみたり、誰かに話したりしています。
インプットとアウトプットを交互に複数のチャネルで行っています。
クライアント企業のネットワークは、新規のほとんどがご紹介です。私から営業するのは年に1~2社です。経営者つながりのご紹介もあれば、過去の候補者や、VCさん、エンジェル投資家の方からお声がけいただくケースもあります。
良くいえば、仕事の報酬が仕事になるケースが多いかもしれません。
ただ、残念ながら全ての仕事に対応することは難しいので、今のマーケットで、「やるべき企業、やるべきポジション」「できる企業、できるポジション」を考えながら仕事をしています。
私は、当事者である企業や候補者のサポート役であると考えているので、「自分がこうしたい」という意識で仕事をするのではなく、今のマーケットに沿って、自分ができるお手伝いをしている意識に近いと思います。

Q. 仕事をするうえで大切にしていることは何でしょうか。また独立をしようと思われたきっかけを教えてください。

仕事をするうえで大切にしていることは、価値を出すことです。
人の存在意義は、「楽しませる」か「役に立つ」だと思っていて、私は、あまり楽しいタイプではないので(笑)、せめて役に立とうかと。
だからこそ、何でも安請け合いせずに、価値を出せる案件に集中しようとしています。
また、独立しようとした理由はいろいろとありますが、一番の理由は「成長できそうだから」という感覚です。まだ20代だったので、「成長さえすれば、今よりも良いことがあるだろう」と。
前職は良い会社だったのですが、このまま2年間過ごすよりも、独立してやってみたほうが、「何ができて、何ができないか」という自分自身への理解が深まりますし、独立することによって、採用する側の気持ちも理解できるようになり、それは仕事にプラスになると思っていました。
また、いろいろな候補者の方々の話を聞いても、リンゲルマン効果(社会的手抜き)を実感する部分があり、組織に責任を負担してもらって働くよりも、「自分ごと」として働いたほうが成長すると感じていたからです。
これらの感覚は、今振り返っても、それほど間違っていなかったと思います。

Q. 人材紹介会社の経営者として、または一個人として大切にしていることを教えてください。

重複しますが、大切なことは価値を最大化することです。そして、それを継続することだと思います。
ヘッドハンターごとに強みやキャラクターが異なるので、その方に合った形で価値を最大化していけば良いと思います。
例えば私であれば、過去に1万人以上はお会いしていますし、その1万人に会うために、その事前準備として、数百万人以上の経歴は見てきたと思います。専門領域においては、「この人はどういう人か」という仮説を立てるスピードや精度は、水準以上だと思います。
一方で、私の尊敬する先輩のなかには、笑顔とうなずきを武器に価値を提供している方もいますし、飲みながら人生そのものを包み込んでしまう方もいます。
いろいろな形の「役に立つ方法」「必要とされる方法」があると思います。

★松井健治様5

Q. 若いヘッドハンターを育てていくために大切なことは何だと思いますか。または成長していくために大切なことは何だと思いますか。(マネジメント観点で)

若いヘッドハンターの成長に大事なことは、自分の頭で考えて、動いていくことです。そして、できれば、ビジネスの仕組み作りまでできると良いと思います。
自分で考えて、動いたほうが楽しいですし、学びも多いです。
他のヘッドハンターと差別化することで、希少価値も付加価値も上がります。
また、仕組み作りができれば、人材紹介という足し算のビジネスを、仕組みから生まれる掛け算のビジネスにつなげられる可能性があり、ビジネスの規模が跳ね上がるでしょう。
そのように考えていくと、人材会社の経営者やマネージャーには、自律的に動くことや、仕組み作りを行うことを評価する制度作りや働きかけが大切だと思います。
若手のヘッドハンターの方には、自律性をもって考えながら取り組むことや、枠から入って仕事をするのではなく、価値から入って自分自身で枠を作っていくような仕事に取り組んでほしいですし、経営陣はそれを奨励する環境づくりを進めていただきたいと思います。

Q. 松井様ご自身の今につながっている印象的なエピソードを教えてください。

とある大手ITベンチャー企業の副社長としてご入社された候補者の方が、事業の急激な成長に寄与することができ、その後、メディアで頻繁に取り上げられていました。世の中や時代を変えていく現場をサポートできた案件は、とても印象に残っています。
ヘッドハンターやエージェントは、あくまで黒子で、企業や候補者の方々が主役です。その主役の方々が世の中に与える影響や成長を通じて、自身の仕事の価値を実感できると思います。

Q. ヘッドハンターの仕事に対する自信は、いつごろから持てましたか。20代の頃の松井様はどのようなお気持ちで仕事をされていたのでしょうか。

結局、自信は実績からしか生まれないと思います。
また、他人からの評価も同様です。
私は、24歳からヘッドハンターの仕事をしていますが、始めて3年目に担当領域が変わり、半年ほど全く成果を残せない時期がありました。成果が出ないので、いつもの130%ぐらいは仕事をしていたのですが、会社や上司の意向にしたがって行動しても結果が残せなかったのです。
そこで、責任は自分が取るのでと言って会社になんとか認めてもらい、自分の頭で考えて動いた結果、売り上げでは2年連続トップで貢献することができました。
そしてその後、明らかに周りからの評価が変化しました。「やっぱり松井はできる」「松井は元から優秀だった」など。うれしいというよりも戸惑いましたし、少し腹が立ちました(笑)。
周りの評価を気にし過ぎても仕方がないと思えた経験ではありますが、結果を出した後は、客観的な評価や自分への自信から、仕事が一層、楽しく、スムーズに進んだことは覚えています。
実績を出せない理由はいろいろとあると思いますし、会社や上司が悪い場合もあれば、運がなかったという場合もあります。
ただ、自分への自信、周りからの評価、仕事のやりがいなど、手に入れたいと考えているもののほとんどは、実績を積み上げていくことでしか実現されないと思います。若いヘッドハンターの方々には、いろいろな事情があっても、それを超えて、まずは実績を積み上げていただきたいと思います。

次回のヘッドハンター名鑑vol.10は、2020年11月27日(金)公開予定です。


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