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ヘッドハンター名鑑vol.8

※掲載内容(プロフィール等を含む)は取材当時のものです。

【杉原成幸氏 プロフィール】
カナダ留学後、スポーツメーカーに入社。欧州海外事業開発や長野オリンピックなどに携わる。
その後、スポーツ業界に強みを持つコンサルタントを目指して大手人材紹介会社に転職し、2002年、アズール&カンパニー株式会社設立に参画。
転職後まで見据えた候補者へのアドバイスに定評がある。

インタビュー

Q. 新型コロナウイルス感染症の拡大による、ご自身の業務などへの影響はいかがでしょうか。杉原様ご自身の業務への影響や心境の変化はありますか。

弊社は創業時より、求職者の方と直接お会いすることを大切にしてきた人材紹介会社です。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響でWeb面談への切り替えを実施しており、直接お会いできない状況になっていますので、求人をご提案する際もリアクションを感じ取りにくいなど、お互いに温度感を感じづらくなりましたね。

求職者の方も、企業との面接のなかで良い感触は得たものの、自分の上司となる方とできれば最後に直接お会いしたいと希望される場合があります。これまでとは異なる採用プロセスのなかで、求職者と企業の間に立つ私たちがより一層双方の気持ちをしっかりくみ取り、入社後のギャップが生まれないよう努めています。われわれエージェントに求められるものが、新たなステージに入ったのかなとも考えています。

Q. 企業や個人の変化はありますか。

企業の採用に関しては、例えば退職による人員補充ということであれば、採用に踏み込む決断はできますが、増員に関しては躊躇されている印象があります。先行きが非常に不透明なので、人事と現場がよりコミュニケーションを取って採用計画を練られていますね。

求職者の方に関しては、在職中で今の職場にある程度満足しているが、いい案件があれば転職をしたいというスタンスの方は、情報収集は続けながらも、もう少し状況が好転するまでは静観されている印象です。

Q. このような状況下でも伸びていく企業の特徴は何でしょうか。

私たちがお取引させていただいている消費財業界の中で、FMCG(日用消費財/化粧品)・エンターテイメント・ファッションの3つの業界についてお話しします。

まずFMCG(日用消費財/化粧品)に関しては、今回の景気変動の影響をほとんど受けることなく、ステイホームの需要を受けてこれまでと同様、順調に推移しています。

エンターテイメント業界は、外出自粛で劇場などが運営面で苦戦を強いられている一方で、家庭・個人向けの需要は高まっています。特に、映画・ドラマ・アニメなどの動画や音楽の配信、そしてゲームなどのサービスはこれからも伸びていくことが予想されます。

最後にファッション業界は、商品を実際に手に取っていただくことで商品の良さを伝えていた実店舗での販売からEC(電子商取引)へのシフトが大きな動きになっています。ECに関連するデジタルマーケティングやロジスティクスなどの分野は、企業の戦略的なシフトも相まって今後も成長していくと考えています。市場が飽和しているなかで、これまで実店舗で伝えてきたブランドメッセージや機能性などをECでどこまで打ち出せるかが、今後ブランドとして勝ち残れるかどうかのポイントになると思います。

Q. 求められる人物像の変化はどういったものでしょうか。

働き方の変化が企業側でも起きているなかで、これまで通り結果を出せるかどうかに加え、「変化への柔軟性」が求められていると考えています。オンラインでの社内コミュニケーションが増えたことや、目まぐるしい変化に対応しながら組織のなかで力を発揮していけるかを、企業はより重視しているのだと思います。

Q. ビズリーチを利用するにあたり、何か工夫されている点はありますか。

その方の経歴からストーリーを想像し、何に興味を持たれているかを意識してスカウトを送信しています。例えば、海外勤務や留学の経験があれば、その地域でトレンドになっているものに興味をお持ちかもしれない。あるいは、職務経歴書の「趣味」の欄にトレイルランニングと書かれていれば、スポーツ領域の案件に興味を示されるかもしれません。私はスポーツ業界、人材業界ともに経験が長いということもありますが、お会いする前から想像力を働かせていることが今回の受賞につながったのではないかと思っています。

Q. ヘッドハンターとして大切にしていることはありますか。

この仕事を始めたときから、大切にしていることはずっと変わっていません。求職者の方の人生そのものと呼べる職務経歴書を拝読し、行間から本音と人柄を読み取ること、そしてその方のキャリアの可能性を広げられる求人をご紹介することを大切にしています。

また、企業に対してご紹介を行う際も、空いているポジションを埋めればよいということではなく、適切な人材を採用することで、企業の直面している課題や問題を解決できるように支援することが私たちの仕事だと考えています。

Q. 何か印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

組織のリストラクチャリングで退職を余儀なくされたデザイナーの方がいらっしゃいました。初めてお会いした際は転職活動に時間がかかっていたため、ご本人もアルバイトを始めるなど、自信を喪失されていました。面談で詳しくお話を伺うとその方は、外資スポーツメーカーで英語を駆使しながら「ライフスタイル」「スポーツスタイル」といわれる領域のデザイン経験をお持ちとのこと。当時国内メーカーではまだ認知度が高くない領域でしたが、「スポーツスタイル」領域の強化のご提案とともに、この方のご紹介をさせていただきました。すると、企業もその事業の必要性を感じてくださり、結果的にその方を好条件で迎え入れていただき、双方にご満足いただけたということがありました。

先ほど申し上げたように、ポジションありきではなく、企業にとって課題を解決するには何が必要かを常に想像すること、そして求職者の方ご自身だけでは気づけないキャリアの可能性や市場のニーズについてもコンサルティングしていくことが何より重要だと考えています。

Q. 今、何を考えながら日々過ごされていますか。

過去にはリーマン・ショックも経験していますが、それ以上の厳しさを日々感じています。ですが、このようなときだからこそ、必要な人材をご紹介することで企業にとっての問題や課題の解決をサポートし、社会をよりよくする。われわれ人材紹介業の存在意義が問われているように感じています。


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