見出し画像

Covid-19の急性呼吸不全への覚醒下腹臥位療法

Covid-19の急性呼吸不全への覚醒下腹臥位療法について6つのオープンラベルRCTのメタ・トライアルの結果が発表されていました。

Ehrmann S, Li J, Ibarra-Estrada M, Perez Y, Pavlov I, McNicholas B, et al. Awake prone positioning for COVID-19 acute hypoxaemic respiratory failure: a randomised, controlled, multinational, open-label meta-trial. Lancet Respir Med. 2021 Aug 20.

メタ・トライアル(meta-trial)とは初めてみた用語です。本文によると,2020年4月29日に覚醒下腹臥位療法のRCTを計画していた5カ国の研究者がこのメタ・トライアルへの参加を了承し,プロトコルをあらかじめ調整して組み入れ基準や除外基準,アウトカムを共通して設定したようです。8月26日には6カ国目の参加が決まりました。バラバラに行った6つのRCTを後からメタ・アナリシスとして統合するよりは,あらかじめプロトコルを共有しておいた方が異質性の問題が少なくなり,一般化可能性,外的妥当性も高くなるようです。賢い。(けど,1つの大規模RCTをやるのとどう違うのだろう? 7人の著者に"*Contributed equally"の印が付いているのは大規模RCTだとあまり見ないかな。映画の「製作委員会方式」みたいなものだろうか。)メタ・トライアルについては↓を参照。

論文の結果について,メモ。

P:18歳以上で,Covid-19による急性呼吸不全(ネーザルハイフローが必要でSpO2: FiO2≤315またはPaO2: FiO2≤300)
(除外基準は同意を得られなかった人,血行動態が不安定だった人,BMIが40超,妊婦,その他腹臥位が禁忌の人)
I:できる限り腹臥位(プロトコルには1日16時間を目標という記載があった)
C:通常ケア
O:28日間の治療失敗(挿管*又は死亡)

*挿管の基準は呼吸状態悪化[RR>40],呼吸筋疲労,pH <7.25,多量の気管分泌物,FiO2 ≥0.8でもSpO2 <90%,意識状態悪化

28日間の治療失敗は腹臥位群40%,通常ケア群46%で,ハザード比0.78(95%信頼区間 0.65-0.93)だった。腹臥位群で1日8時間以上腹臥位でいられた人は治療失敗が17%,8時間未満の人は48%だった。

感想:当院でもネーザルハイフローの人には腹臥位,側臥位でごろごろしてもらっていますが,側臥位なしでなるべく腹臥位で頑張ってもらった方がいいのでしょうか。あるいは,これって,1日8時間以上腹臥位できる人は状態がよかっただけの可能性はどうでしょうか。重症患者のCTで背側がつぶれているのはよくみますし,挿管,人工呼吸器管理の人に腹臥位をすると,目に見えて酸素化が改善するので,ネーザルハイフローの人も腹臥位になれる人はなるべく頑張ってもらうのがよいのでしょうけど。

そういえば,故・日野原重明は普段からうつぶせ寝を推奨しておられました。うつぶせ寝用に抱き枕でも購入しようかな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?