病歴と診察と検査の中で診断にはどれが大事かシリーズ
昔書いたやつを再掲
この手のスタディでは対象患者数が結構多めの630人です。著者はイングランドの総合病院の内科のConsultant Physicianです。
対象患者はfamily physicianから総合病院(with cardiological bias:心臓病が強い病院という意味?)のクリニックに紹介されてきた新患。
病院の初診では、medical registrar(英国で研修医のことみたいです)またはsenior house officerによって詳細な病歴聴取と診察がなされた。全ての患者にルーチンの検査(Hb、WBC、ESR、BUN、電解質、血糖値、胸部レントゲン、心電図)がなされた。適宜、特殊検査(運動負荷試験、バリウム注腸、脳波など)が追加された。患者達は、少し時間をあけて著者のもとに再診した。病歴、診察、検査をレビューしていく各段階で診断を書き留めていった。
ということで、評価者は著者一人のようです。
Table Iは病歴、診察、検査がそれぞれ診断に寄与した割合です。
病歴が診断に寄与した割合は全体で56%、診察が17%、ルーチン検査が5%、特殊検査が18%という結果でした。
この論文が面白いのは、どの臓器系で病歴、診察、検査がどれくらい診断に寄与するかの内訳を載せているところです。
心血管系と神経系の診断が病歴が寄与する割合が最も高く、それぞれ67%と63%でした。
特に、胸痛の患者180人に限って言えば90%が病歴だけで診断でき、診察が診断に寄与した割合が0%、ルーチン検査(胸部レントゲン、心電図)は3%、特殊検査(主に負荷心電図)が6%という結果だったと本文中にありました。
一般外来に紹介されてくるような患者さんなので、おそらく不安定狭心症や急性心筋梗塞の患者さんは含まれていなかったのでしょう。労作性狭心症がほとんどとすれば、こんな感じなのは納得がいきます。
一方、病歴が診断に寄与する率が低かったのが消化管(Alimentary)で27%、診察は0%で、特殊検査が58%でした。確かに早期の胃癌や大腸癌なんかは病歴だけで診断するのはちょっと厳しいだろうと思います。
他に病歴が診断に寄与する率が低かったのが内分泌系で32%ということでした。
診察が診断に寄与する率が高かったのは、心血管系と呼吸器系で24%と22%で、慢性気管支炎、肺気腫、高血圧、リウマチ性心疾患が主なものだったようです。
そして、著者の主張ですが、他の研究と同様に病歴が診断に寄与する割合が一番高かったので、病歴がやっぱり大事だろうと。従来のトレーニングでは、病歴と診察の後に鑑別診断を考えていたが、病歴の方がはるかに大事なので、病歴をとった後に鑑別診断を考えて、その後specificに診察をするべきではないだろうか、というようなことを述べています。
他の同様の研究は以下のようなものがあります。
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