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感染性心内膜炎(IE)の2023 Duke-ISCVID基準(修正Duke基準のアップデート)

2023のECCMIDで発表されていた,感染性心内膜炎(IE)の2023 Duke-ISCVID基準(修正Duke基準のアップデート)が出ていました。

IEの診断基準は1994年に作成されたDukeの基準から2000年に修正Dukeの基準が提案されたものから実に23年振りの改訂です。少し前に,2015年にPET/CT推しのESCガイドラインで少し修正の提案がされたものがありましたが,様々な心臓内デバイスの開発や画像検査の進歩(心臓CTやPET/CT),新しい微生物検査(PCRや16sなど)の導入などがあり改訂がされたようです。
多くは現状追認(採血の間隔など)と新しいテクノロジーの整理だと思いました。新規の心雑音の聴取は大基準から,心エコーが利用出来ない場合のみの小基準への格下げになりました(少しサミシイですが,研修医のテンプレートコピペ以外に心雑音の有無の記載を見かけなくなって久しいので仕方ないでしょうか)。

変更の一覧表がTable 3にあり,ざっと訳してみました。
この表にはありませんが,Rejected Endocarditisの基準の1つが
B. Lack of recurrence despite antibiotic therapy for less than 4 days.
(4日間未満の抗菌薬治療で再発なし)に変更されていました。
以前は"Resolution of infective endocarditis syndrome with antibiotic therapy for <4 days"
と書かれていたもので,「4日間未満の治療で解熱したらIEらしくない」と解釈している人がいて驚いたことがあったので,誤解のないように言い換えられてよかったと思います。

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The 2023 Duke-ISCVID Criteria for Infective Endocarditis: Updating the Modified Duke Criteria
Clinical Infectious Diseases, ciad271

Table 3. Updates to Modified Duke Criteria Proposed by 2023 Duke-ISCVID IE Criteria.
【病理基準】
 微生物の同定:PCR,アンプリコン,メタゲノムシークエンス,in situ ハイブリダイゼーションにより適切な検体での微生物の同定が追加

【臨床 大基準】
微生物検査

 血液培養:採血のタイミング,間隔についての記載を削除(筆者注:以前は12時間空けて採取した2セット以上とか,3セット以上の場合は最初から最後の間隔が1時間以上空けてとされていましたが,あまり現実的ではなかったですね。)
 典型的な原因微生物:
  1)S. lugdunensis; E. faecalis; S. pneumoniaeとS. pyogenesを除くすべての連鎖球菌; Granulicatella spp.; Abiotrophia spp.; & Gemella spp を典型的な微生物に追加
  2)心臓内人工物の存在下では「典型的」な微生物と考えるものにコアグラーゼ陰性ブドウ球菌, Corynebacterium striatum; C. jeikeium, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosa, Cutibacterium acnes, non-tuberculous mycobacteria, Candida spp.を追加
 その他の微生物検査:栄養要求性の高い微生物として大基準に以下を追加
  1)PCR,アンプリコン/メタゲノムシークエンスによって血液から検出されたC. burnetii, Bartonella sp., T. whipplei
  2)B. henselaeまたはB. quintanaのIFAのIgG抗体価が800倍以上
画像検査
 心エコー:変更なし。画像基準の基本。
 心臓CT:大基準に追加。心エコーと同等の所見。
 [18F]FDG PET/CT:大基準に追加。自己弁,心臓デバイス,術後3ヶ月以降の人工弁の所見は心エコーと同等。
手術所見
 大基準に追加。心臓の画像検査や病理組織検査の大基準がない場合に術中の肉眼所見を大基準と扱う(注:だからといって適切な病理組織検査や微生物検査を提出しなくてよいわけではない)。

【臨床 小基準】
 素因:経カテーテル弁埋め込み/形成術後,血管内植え込み型心臓デバイス,IEの既往を追加。
 発熱:変更なし。
 血管病変:脾膿瘍,脳膿瘍を追加。
 免疫病変:免疫複合体介在性糸球体腎炎の定義を次のように追加。
  1)原因不明の急性腎障害(AKI)または慢性腎障害に急性腎障害が合併に加えて以下のうち2つが存在:血尿,蛋白尿,尿沈渣で細胞円柱,または血液検査異常(低補体血症,クリオグロブリン血症,免疫複合体の存在)
  2)腎生検で免疫複合体介在性腎病変に矛盾しない所見
 微生物検査:PCR,アンプリコン/メタゲノムシークエンスによる典型的な微生物の所見ありを追加。
 画像検査:心臓手術後3ヶ月未満のPET/CTの所見を追加。
 身体所見:心エコーが利用出来ない場合の新規逆流性心雑音の聴取を追加。
 

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