コンサル業界の変革

はじめに

最近のコンサルタント業界は、従来の会議室から飛び出し、体験型施設を活用した新しいアプローチを取り入れています。この変革は、経営層と現場の認識のズレを埋め、より具体的で納得感のある戦略策定を可能にします。本記事では、PwCやデロイトなどの大手コンサルティング会社がどのようにこの新しいアプローチを取り入れているかを紹介し、他社でも再現可能な成功ポイントを解説します。

ミニ工場の導入

PwCやデロイトは、ミニチュア工場や実験室などの体験型施設を設置し、顧客企業に最新技術を実際に体験させる取り組みを始めています。これにより、経営層と現場の意識のギャップを埋めることができます。例えば、日立Astemoは、ミニチュア工場を利用してデジタル化戦略を策定しました。社員が実際にラインを操作しながら議論を深めることで、部門間の壁を越えた意思疎通ができました。

DX試着室の活用

PwCのインダストリーソリューションガレージ（ISG）では、アパレル店の試着室を模したDX試着室が設置されています。この施設では、無線タグを使ってどの商品が試着されたかを集計し、試着後の購買行動を分析します。これにより、製造業だけでなく非製造業にもDXの重要性を認識させることができます。ISGの成功ポイントは、顧客企業が実際に体験することで具体的な改善案を見つけやすくするところにあります。

AI施設の開設

デロイトトーマツグループは、今夏、東京都内にAIを体感できる施設「AI Experience Center」を開設しました。この施設では、AIの活用方法を実際に体験し、経営者がその有用性を理解する場を提供しています。例えば、ソニー銀行はこの施設を利用して、大規模言語モデル（LLM）を活用した提案資料を作成し、経営陣に発表しました。AIアシスタントによる金融支援サービスの実証実験も視野に入れています。

「AI Experience Center」とは

デロイト トーマツ グループは、企業の経営者や役員などの経営層が生成AIを使って事業や業務を変革するのを支援するために、新しい技術を提供する施設「AI Experience Center」を2024年8月に東京都千代田区に開設します。この施設は、生成AI技術を用いた企業変革を支援することを目的とした、日本で初めての共創型施設です。

生成AIは、インターネットやスマートフォンに次ぐ重要なテクノロジーの波とされており、さまざまな業界での利用が進んでいます。経営層はこの技術がもたらす影響を理解し、企業変革に活用するために、早急に自社の対応策を練る必要があります。デロイト トーマツは、生成AIの利用や法規制に関する相談を多く受けており、この施設を通じてさらにクライアントの支援を目指しています。

AI Experience Centerには、最新の生成AI技術を体験できるデモエリアと、理解を深めるためのワークショップやセミナーが用意されています。デロイト トーマツは、生成AIによる企業変革には「導入」「最適化」「統合」「変革」という4つのステップがあると考えており、この施設を通じて経営層がこれらのステップを具体的に理解し、取り組みを進める支援を行います。

成功ポイントの解説

これらの体験型施設を成功させるためのポイントは以下の通りです：

1. 実際の体験を提供：顧客が具体的に手を動かし、体験することで理解を深める。

2. 部門間の壁を越えた議論：異なる部門が共同で参加し、意見を交換することで新たな視点を得る。

3. 最新技術のデモンストレーション：最新技術を実際に見せることで、その有用性を具体的に理解させる。

4. 顧客のニーズに合わせたカスタマイズ：製造業だけでなく、非製造業にも対応できる柔軟な施設設計。

専門用語の解説

• デジタルトランスフォーメーション（DX）：企業がデジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを革新すること。

• 大規模言語モデル（LLM）：大量のテキストデータを基に学習したAIモデル。

結論

コンサル業界は、体験型施設を活用することで、顧客企業の経営層と現場の認識のズレを埋め、納得感のある戦略策定を実現しています。このアプローチは、他の企業でも再現可能であり、今後のDX導入の成功に大きく寄与するでしょう。

引用：　2024/06/06 日本経済新聞　朝刊 14ページ