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映画「オペラ座の怪人」の「ポイントオブノーリターン」がエロい件を考える

まず最初に言いたい正直な意見。

映画版のエンドロールの曲は歌詞が作品全体の解釈とズレている気がして好きではない。
ファントムの孤独を女々しく歌っている曲だが、私にとっては文字通り「蛇足」というやつ。
ミュージカル版で追加するならアリかもしれないがこの映画には合わないと初めて観た時から違和感を感じていた。

先日、映画館で観れたからついでにプログラムを購入した。
そこにこの曲はALWが映画のために作成し撮影までしたが、監督が反対して全カットになったと書いてあった。

このエピソードを読んで私はジョエル・シュマッカー監督が相当優秀だと悟る。

ミュージカルの映画化は漫画の実写化よりは成功しやすいように見える。しかしキャッツのようなケースもあるのでやはり監督の手腕はかなり問われるのだろう。

この映画を初めて観たのは、私がロンドンでミュージカル版を観た数年後だったと思う。TSUTAYAで推されていて、まさかミュージカルの感動を越えることはなかれと期待値低めでレンタルしたが、キャストの見た目がピッタリだったことや、怪人の声がミュージカルのそれより違和感がなかったことで、本家よりも馴染みやすかった。
だからサントラで聴くのはいつも映画版だった。

ミュージカル鑑賞後に耳に残るのはファントムオペラやマスカレードなど派手な代表曲だったが、映画版はポイントオブノーリターンとそれに続くオールアイアスクオブユーだったのでだいぶ印象が違う。映画版がミュージカルと同等、もしくは越えたように感じるポイントはここにあると思う。

プログラムのインタビューでALWが「ポイントオブノーリターンは今まで観てきた映画のシーンでもっともエロい」と言っており、私もそれに深く共感する。

ジェラルド・バトラーは監督にこのシーンをひたすらセクシーに演じてくれと言われ続けたらしい。
休憩中に座ってると「パンツに皺が入るから立て」みたいなこと言われるくらい、完璧なセクシーさを追求されたとかw
大正解だ。

おそらくALW自身もこのシーンがここまでエロいものだと気づいていなかったんじゃないかと思う。
なぜなら二度目にミュージカルを観た際もポイントオブノーリターンには映画版ほどの魅力を感じなかった。

そして監督の有能さはキャストの採択にもおおいにあった事を知る。
彼はALWの反対を押し切ってファントムをジェラルド・バトラーにオファーしたらしい。
たしかに「皆さん彼を知ってました?」という感じが否めないし、知っていたとしてもゴツいし雰囲気が違わないか?

なのでwikiを読んだところ、経歴が凄かった。
ざっくり書くと…
彼は弁護士で、法律大学を主席で卒業し、王室弁護士をやっていた、とのこと。
???まじかよ、超エリートきたよ。
しかし弁護士が嫌になり、アル中になって、仕事をやめて俳優を目指し、トレスポの舞台版のオーディションで主役に抜擢される。
は???
完全にホンモノじゃんそれ。
だってトレスポだよ?
あの混沌としたトレスポの世界観を舞台で演れる俳優なんだよ?
(観てない方のために補足するがトレインスポッティングとはドラッグ中毒者の若者の日常をコミカルにかつクールに描いた超名作でヴィレヴァン世代のカリスマ映画である。)

王室弁護士なんつー恐ろしいレベルの論理的思考とロイヤルファミリーとも対峙できる気品、それに反していつでも狂人になれるセンスをも持ち合わせている、監督はそこに目をつけたんだろう。
元ロック歌手…みたいな歌唱力を評価されている紹介文をよく目にしていたが実は学生時代にバンドを少しやってただけらしいし、たぶんそこじゃないw
彼の歌が上手いとはそこまで思わない。
しかし声質は好みだ。
ミュージカルだと豆腐のような繊細な声が印象的で母性をくすぐるが、ジェラルド版は無理矢理女にされるような声だと思う。

監督の有能さを垣間見るエピソードは更にあった。
「ポイントオブノーリターンから撮影した」
との事。
理由は書いてなかったが、これはおそらくまだ怪人になりきってしまう前のジェラルドで演って欲しかったのではないかと考える。
なぜならドンファンはプレイボーイの話であるから、おそらく俳優本人の気質は怪人よりドンファンなんだろう。(彼の名前でググるといろんな女性とキスしているのをパパラッチされている)

だからあんなにエロいんだよ、映画版のポイントオブノーリターンは!

このシーンの説得力があり過ぎて、
「クリスティーヌはラウルじゃ満足できない、本能はファントムを選んでいる。」
ってオトナならわかるから凄くいい。

表面的なストーリーは、ラウルとハピエン、怪人がとても可哀想!なんだけど、ツウな視聴者はファントムの勝利を確信する。
ミュージカル版では二度観てもそれを感じなかったが、映画版はファントムの勝ち確をポイントオブノーリターンで暗喩できている。

だから冒頭にも記載した通り、
「新曲のシーンは要らない」
と監督も言うし、私もそう思ったんだ。

シュマッカー監督まじ解釈ぱねぇ、最高じゃねーか!!
バットマンフォーエバー見直すわ!
しかも映画「山猫」も製作の参考にしたって言ってるから私も観るわ。(ちょうど尾形夢を描く前に見ときたかったんです、はい。)

今回、映画版を褒め倒したけど
ミュージカル版もいいとこ沢山あって好きだよ

オペラ座の怪人は
人生のうち、何度も絡んできている作品
そういう作品はほんとに大事にしたいよね
大事にしてるがゆえに映画版の次作は観ないけど…


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