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光で難問を解くまったく新しいコンピュータLASOLV

内閣府主導による「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」下で研究が進んでいるのが、光を用いて難問を解く、従来のPCとは原理がまったく違う新しい計算機「LASOLV」です。

光を用いて組合せ最適化問題を解く新しい計算機コヒーレントイジングマシン「LASOLV」
NTT物性科学基礎研究所より引用

広く普及しているデジタルコンピュータが苦手な組合せ最適化問題の解を効率的に導き出すために研究が進んでいます。光などの波の可干渉性(コヒーレンス)を使って組合せ最適化問題を解く、コヒーレントイジングマシン「LASOLV」は光パラメトリック発振器(OPO:Optical Parametric Oscillator)と呼ばれる特殊なレーザを用いた計算機です。

レーザ(Laser)を用いて問題を解く(Solve)というところから「LASOLV」と名付けられたそうです。

この計算機は、イジングモデル(Ising Model)の特性をいかしたイジングマシンのひとつです。

(イジングモデルは)磁石などの磁性体の性質を表す統計力学上のモデル(模型)のこと。イジングモデルは、上向きまたは下向きの二つの状態をとるスピン(格子点)から構成される。隣接するスピンは、相互作用および外部から与えられた磁場の力によってその状態が更新される。最終的に、イジングモデルのエネルギーが最小の状態でスピンは収束(安定)する。
近年、こうしたイジングモデルの特性を利用した新しいコンピューティング技術に注目が集まっている。例えば2011年、D-Wave Systems Inc.は組合せ最適化問題をイジングモデルへと変換し、量子アニーリングを用いて問題を解く量子コンピュータを発表している。日立では2015年、CMOSアニーリングという技術によって半導体上でイジングモデルの振る舞いを擬似的に再現し、組合せ最適化問題を効率良く解くことに成功している。

https://www.hitachi.co.jp/rd/glossary/jp_i/izingumoderu.html
https://www.rd.ntt/research/CT99-334.html

スピンが収束する(安定)するイジングモデルを、2000個のパルスを人工的なスピンと見立てます。全体をもっとも安定にするスピンの向きを実験で求めることで、問題の答えを導き出すという原理です。

組合せ最適化問題を、相互作用する複数の磁石(スピン)がもっとも安定する向きを考えるというイジングモデルに変換して解く「LASOLV」は、光ファイバリング共振器内に配置した位相感応増幅器(PSA:Phase Sensitive Amplifier)によって、数千個の光の粒、OPOパルスを発生させます。OPOは、位相が0またはπの2値のいずれかのみで発振する性質を持つため、位相0を上向きスピン、πを下向きスピンと割り当てることでスピンを表現します。OPOパルス間の相互作用は、全てのOPOパルスの振幅と位相を測定した情報をもとに生成した、パルス間の相互作用情報を持つ光パルスをもとのパルスに注入する、「測定・フィードバック法」を用いて行います。この手続きを、OPOがスイッチオフされている状態から、少しずつエネルギーを注入してOPOパルスの振幅がだんだんと大きくなる間、多数回(約1000回)繰り返します。エネルギーを注入した当初は不安定であったOPOパルスの位相は、光ファイバ共振器中を回るうちに定まり、最終的に最も安定な状態に落ち着きます。この最後の位相を見ることで、解きたい問題の答えが得られるという仕組みです。

https://www.rd.ntt/research/CT99-334.html

量子コンピュータの研究も進められていますが、こうしたまったく違ったアプローチのコンピュータの研究が進められていることはすばらしいと思います。

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