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ネット通信が宇宙へとゲームチェンジ!

先日、SONYが打ち上げた衛星の使い方紹介のプログラムに参加いたしました。
衛星からの映像をつかってどのようなビジネスを展開したいか、また許容できる使用料についてなどヒアリングがありました。

同じく衛星ビジネスTDSCによると、低軌道衛星コンステレーションはインターネット通信の主体者になると紹介しています。
従来の通信は、陸上では光ケーブルが敷設するなどインフラが整備され、海上では海底ケーブルがひかれてきました。衛星コンステレーションは、既存インフラからサイバースペースの主役を奪う可能性を秘めています。

『衛星ブロードバンド』とは?

『衛星ブロードバンド』は、衛星を通り道としてインターネットに接続するブロードバンドで、アンテナと衛星間で約1,000km~最大36,000kmほど離れた距離の無線通信を行います。他のブロードバンドでいう長距離のケーブル部分が人工衛星とアンテナによる無線通信に置き換わっているイメージです。

衛星ブロードバンドの強み
①災害等の緊急時でも破損/破断による通信断の影響を受けづらく、地上回線の状況に依らず使用できるため、有事のバックアップ回線としても有用な通信方法
②山間や離島などのデジタルデバイドエリア(情報格差地域)においても利用可能

衛星ブロードバンドの種類
①低軌道衛星
地上2,000km以内に配置された数十基~最大数千基という多数の人工衛星を連携させ、地球全土をカバー範囲としインターネット通信を行うことができます。
②高軌道衛星
赤道上空約36,000kmにある1基の人工衛星が地球自転と同じ速度で周回することから『地球上からは止まって見える』=『衛星の方向がいつも同じ』ことが最大の特徴です。


低軌道衛星を使った衛星コンステレーション

衛星コンステレーションは、地球表面から2000km以下の軌道を周回している衛星を使うので、1つの低軌道衛星では利用エリアを通り過ぎてしまうと利用不可能になってしまいます。そのため多数の低軌道衛星が必要で、衛星間の連携をして、通り過ぎたら切り替えることで通信を途切れさせない工夫がされています。

参入する企業
2019年の野村総合研究所の衛星コンステレーションを用いた次世代インターネットの可能性と課題というレポートには、提供事業者として以下のようにまとめられています。

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莫大な資金調達が課題となり、2019年から少し状況が変わってきました。OneWebは破産し、事業が引き継がれ、O3b Networksは現在SESが買収しました。またLeoSatは資金難のため操業停止中です。そうした状況のなかで、資金的が豊富にあり、有利に進めているのが以下の3社です。


①SpaceX(Starlinkプロジェクト)

テスラ社の創設者で知られるイーロン・マスク(Elon Musk)氏率いるSpaceXも、現在はロケットの打ち上げを主力事業にしながら、当該市場への参入の準備を進めています。最終的には約1万2千機もの小型衛星を軌道上に配置するとしており、米連邦通信委員会(FCC)から承認を得られています。すでに約420機以上の衛星を打ち上げ済みで、打ち上げ済みの衛星を用いて行ったテストでは、航空機内で約600Mbpsの通信速度が確認されています。

日本ではKDDIが宇宙通信分野で提携を発表しています。

SpaceXは、自社で打ち上げの技術を持っているのが最大の強みです。SpaceXが通信衛星事業はベータ版ですが、すでにはじまっており、現在、アメリカ、カナダの一部地域、イギリスなどでβ版がリリースされています。価格は世界共通で月額99ドルとなっており、スターターキットを購入するだけのようです。※日本はまだ提供範囲外

②Amazon(Project Kuiper)

ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏率いるAmazon.comも、世界中の38億人と、アメリカの固定ブロードバンドにアクセスできない2,130万人への通信サービスの提供を掲げ、2019年に米連邦通信委員会(FCC)に通信衛星コンステレーションに関する申請をし、2,020年に許可済み。衛星機数は3236機。

Amazonは衛星と通信を行う地上設備である地上局の運用を行うサービスAWS Ground Stationを既に提供しており、AWSや通信衛星コンステレーションと合わせることで、通信インフラの垂直統合が実現します。垂直統合することで中間マージンの削減によるコストメリットの享受を得られ、Amazonが世界中に、非常に安価に通信環境を提供する日が来るかもしれません。

③Oneweb

デジタルディバイドの解消を掲げ、全世界にブロードバンドサービスの展開を目指しているスタートアップです。ソフトバンクグループが12億ドルもの巨額の出資をして筆頭株主となり、通信衛星コンステレーション構築を目指すスタートアップの代表格でしたが、新たな資金調達ができず2020年に米国破産法第11条を申請をしました。
※当該法は民事再生と近い部分であり、会社がなくなるものではありません

事業承継の競争入札の結果、インドのBharti Globalと英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省のコンソーシアムが落札し、今後も事業が存続されることとなりました。

一度破綻したOneWebですが、英国の政府によって買収されています。英国政府はEUを離脱したことにより、EUが運営する測位衛星システムであるガリレオ(アメリカでいうところのGPS)計画から離脱したため、独自の位置情報、ナビゲーション、計時システム構築のためにOneWebの衛星コンステレーションを利用したいという思惑があるそうです。そのため、当初のデジタルディバイドの解消という目標達成に対して方向性が変わったという見方もできます。

一方、NTTは2021年5月にスカパーJSATと持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙事業のための業務提携契約を締結し、宇宙統合コンピューティング・ネットワークを構想しています。これは、NTTのNW/コンピューティングインフラと、スカパーJSATの宇宙アセット・事業を統合して構築する新たなインフラです。

地上から高高度に浮かぶHAPS、宇宙空間の低軌道・静止軌道まで複数の軌道を統合します。また、それらと地上を光無線通信ネットワークで結びコンステレーションを構成し、分散コンピューティングによって様々なデータ処理を高度化します。また、地上のモバイル端末へのアクセス手段を提供し、超カバレッジを実現します。

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海から宇宙へ ネット通信のゲームチェンジ

このように従来の海底ケーブルを使った通信は、衛星を使った通信へ「ゲームチェンジ」する展開をみせていますが、従来の通信網はまだまだ健在です。NTTとKDDIのプロジェクト「つなぐ&かえるプロジェクト」のように各社での災害対策として船舶の相互協力プロジェクトも進められています。

莫大な資金が投入されて派手な「空中戦」が行われていますが、地上や海中で泥や波にもまれてがんばって通信を確保している人たちのことも忘れないようにしたいです。




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