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レポート: 原発事故により汚染してしまった枯葉を減容する事ができるのか?      Report: Is it possible to reduce the volume of dead leaves contaminated by a nuclear power plant accident by burning them on site?

当レポートは(2011.12)福島第一原発事故後にセシウム汚染された地域(住むことが規制されていない地域)において、住居周辺の樹木等の枯葉が汚染された事から枯葉を焼却減容し一定場所に集める事により生活環境改善が出来ないかを専門家(大学教授)や有志者にて健康、安全に配慮しテストを行った記録を再編集したものです。

 福島第一原発事故により、放出された放射性物質で汚染した樹木の葉を、Cs(セシウム)の沸点以下で燃焼する事により減容することが可能か検討した。結果600℃以下で燃焼させるためには空気供給量の調整と枯葉投入量、投入タイミングを考えて行うとコントロールすることが出来るが、燃焼を持続させるために木を使い炭化すると600℃以上の高温になる部分が発生した。笹の枯葉については燃えにくく他の枯葉と混合で燃焼させる必要があった。

1 はじめに
 2011年3月11日に東日本大震災で発生した津波により、福島第一原子力発電所にて事故が発生し、放射性物質が大気中に放出され、森林、土壌、水域等が汚染した。森林や植物、樹木の汚染では土壌から吸収するものや葉や果実の表面を汚染するが、落葉樹等については温度低下に伴い汚染された枯葉が土壌や道路、民家の庭に散乱し除染の妨げになっている。落ち葉は比重が軽く嵩が大きい特徴が有るので、現場で減容保管出来る方法が望まれた。

2 目的
 Csの沸点は641℃のため600℃以下の燃焼温度で汚染枯葉を燃焼出来ればCsを気化による再拡散させること無く減容することが可能であると考えられた。
 
3 汚染枯葉
 枯葉や落ち葉は一般に湿った状態で回収され、ビニール袋に無圧縮で詰められ保管される事が多い、1袋の重量はおよそ2~4kg前後であった、枯葉の種類や状態によるが、「表層が乾いていて、風に舞い、一層下は黒く濡れ
て湿気を含んでいる」典型的な堆積落ち葉の場合1kgの落ち葉を灰にするとおよそ59gになり、重量比で減量率は1/17となった。

南相馬の落ち葉をMirionTechnologies社製HDS-101空間線量核種分析器で袋の上から線量計測すると6500~7300cps、3~5μSv/h、核種134Cs・137Csを表示した。
 
 農地に直径1.5m、深さ0.5m程度のすり鉢状の穴を掘り、ビニール袋に保管された枯葉を周辺に1袋づつ出しショベルを使って穴に投入した。枯葉の温度は4~8℃程度(日陰)であった、土壌の温度は日陰で4℃、陽の当たる場所で12℃だった。
 枯葉を燃やす目的は減容であり、燃焼力や明かりは必要がないので炎や火の粉が舞い上がらず、安全に燃やす事が重要である。
着火についてはライターやマッチでは最低着火温度に達するのは難しいと思われた、しかし出来るだけ安易な着火方法が望まれるため、新聞紙を丸め着火剤として汚染枯葉の中心部に差込みカセットトーチバーナーで火をつける方法を試したが、湿気と温度が原因で火の廻りが遅く連続的な燃焼になりにくい。そこで乾燥した枯れ枝を底部に設置し空気の通りを良くしながら枯れ枝に着火した。枝が燃焼し始めると、汚染枯葉は乾燥しながら白い煙を上げ燃え出した。
温度計測はカスタム社製IR-302放射温度計にて計測場所から50~100cm離れて行った、燃焼温度は赤い炎の部分で400~500℃、枯れ枝が炭化し無煙燃焼の部分は500~600℃になり、無煙燃焼部分に空気が入って明るい赤熱状態や青白い火炎状態になると700℃を超えた。
内部燃焼温度を安立計器製HL-200で計測すると、放射温度測定値と比較して内部温度は400℃を下限に50~100℃低い傾向が見られた。
 燃焼温度が上昇しやすい要因の一つに、酸素供給量の影響が考えられた、実験環境は風速10~5m(最大瞬間風速18m)の強風で風向が定まらなかった。
火種として利用した木の枝が炭化した部分は風に煽られ空気が吹き込むと明るい赤熱状態となりその直後青白い炎が上がり温度は700℃以上に急上昇した。青白い炎は高温になった炭の表面の二酸化炭素が反応し一酸化炭素になったものが燃焼した色と思われた。
放射温度計などの計測器を使用せず温度の目安をつけるには、燃焼部の炎の有無と炎の色、燃焼時の煙の有無を目安にすることが出来る。
赤い炎は温度が600℃以下であったのに対し、青白い炎は700℃を超える数値を示す、炭火に代表される炎の無い無炎燃焼では、白い煙が発生しにくく温度が高く600℃以上になっている、枯葉で覆うように燃焼させると白い煙を上げながら内部温度は600℃以下で燃焼した。
 煙中の放射線量はHDS-101にて1分計測すると0.2μSv/h高い値を示したが同計測機のcpsで表示すると表示誤差範囲に埋もれてしまい差がわからない。燃焼終盤の灰付近の放射線量は8000~9700cpsを示した、これは燃焼前の放射線量6500~7300cpsと比較すると1.3倍程度の数値であるが、計測が場の空間線量もあり正確さに欠ける。
 別途笹の枯葉のみを集めた燃焼を試みたが、集めた笹は湿り気が多い事も影響してか、上記の方法では燃えないで火が消える傾向にあり枯れ笹だけでは燃やしにくい。集めた笹の上から着火剤としてガソリンを撒き燃焼を試みたが、燃料が燃え尽きると火が消えた。

4 課題
今後の課題として、着火時に木を使用しないようにし、燃焼中に炭の高温部が出来ないような工夫が必要である。
減容率は重量比1/17程度と考えられるが、保管については重量あたりの放射線量が増えているので保管方法を検討する必要がある。
放射線量は、燃焼前の枯葉の重量と放射線量を、燃焼後の灰の重量と放射線量とで比較し、減量率と放射線濃度が一致するか確認する必要があると考えられる、一致しない場合はセシウムの気化温度を超える燃焼温度になっていないかの再検討や燃焼気化意外の要素を再考する必要がある。
燃焼中の灰については高い放射線量を含むと考えられる事から飛び散ったり舞い上がったりして拡散することを避けなければならない、そのために風向きや穴の深さを深くするなどを考慮する必要がある。
作業環境について、600℃以下の燃焼は作業時間を要する。落ち葉が発生する季節は気温低下を伴い、野外で行う燃焼作業は寒さに耐える事が必要である、一般の焚き火と異なり白い煙を出しながら600℃以下で燃焼させる管理では、枯葉で火を覆うように燃焼させる事が多く、暖を取る事が出来ない、この事から火の管理をするのが面倒であり、時間もかかることから人が離れても安全に燃焼出来る方法が望まれる。

農家などの住民が自ら処理出来る方法として土壌に直接穴を掘り地中に灰を埋めてしまう方法を検討したが、灰の保管場所が別途確保出来る場合は、高濃度に汚染した灰の保管の観点から土壌に直接穴を掘るのではなくドラム缶を加工し灰が回収出来る方法も有効と考えられる。


安立計器HL-200(-200~800℃)
放射温度計 最大/最小値/平均値表示機能 カスタム社製IR-302 -60~+760℃

気象庁データ:
気温7℃から8℃に上昇し5℃に低下
西の風9.6~4.5mから西北西の風7.7~6.4m
瞬間最大風速20~8.7m

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