【試し読み】Day1
水曜日。晴れ。
連休なか日。
上野から満員のとき号をいくつか見送り、デッキで立って新幹線で越後湯沢駅まで。
やはり満員のバスに急いで乗り換え、清津峡で大量に人が降りたあと、新幹線で食べられなかった崎陽軒の弁当をさっと食べる。待ち合わせのポイントで迎えの車に乗り込み走っていたら、スノーシェッドをぬけたところで対向車が中央線を変な動きではみ出してきた、と思った次の瞬間には口の中で何かがじゃりっとした感覚があった。
ドアが開いて外に倒れ込む。
目をうっすら開けると、青空と一緒にスノーシェッドのところに「辰ノ口入口」と書かれているのが見えて、ここで事故にあったのか、と思う(以前、越後妻有トリエンナーレで磯辺行久さんの砂防ダムの作品をみたところ)。
誰かが横で「わかりますかー?がんばれよ」と声をかけているのが聞こえて、「水をください」と言う。水を含んで吐き出す。
意識は途切れ途切れだったけど、目が開かないので、気配でしかわからなかったが、「お名前と年齢教えてください」「これから救急ヘリに乗りますよ」などと声をかけられて、持ち上げられる感覚があった。体が痛い。酸素マスクみたいなのを口の周りにつけられていたみたいだけど、離陸の間か、病院に着いてからかのタイミングで嘔吐。吐きそうだという声が出なかった。「とりあえず救急に突っ込んじゃおう」という声。「申し訳ないけど、服切りますね」と声かけられて体の真ん中からはさみで服をじょきじょき切られる感覚があった。
横たわったままエレベーターが動く感覚のち、CTとかレントゲンをとられたり、ワクチンの接種回数などを聞かれたりしたのを断続的に覚えている。
「あなたはいま、新潟の病院にいます。もう一人の方も新潟の別の病院に運ばれました。」と誰かが教えてくれる。右目の上を縫われている。
妹のRさんがきましたよ、と言われる。連絡を受けてかけつけてくれたらしい。コロナ対応中とのことで面会は一瞬。
「びっくりした。生きててよかったよ」と言われて手を握られる。「ほんとですよ。来てくれてありがとう」と言って握りかえす。
Rが帰った後に気持ち悪くなって再び嘔吐。ナースコールができたのか、今回は容器に吐いたが、血が混じっていたらしく、もう一度検査にかけよう!となって、どこかに運ばれる。
ナースコールここにありますから、と言われて握らされるが、まだ目もうまく開かず、何か起きたらと怖くて一晩中ずっと握っていた
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