ヤクルトスワローズ詩集

 夕方に「相棒」の再放送をみて、夜はヤクルトスワローズのテレビ中継を観る。オンライン授業・勤務下での私の日課である。地上波での放送はほぼ皆無だから、数年前からスカパーのプロ野球チャンネルに加入している。大学に行く用事がほとんどないから、ほぼ毎試合、プレーボールからゲームセットまで観ている。われながら暇なものである。定年退職を前にこんな日々を送るようになるとは、夢にも思わなかった。これもコロナ禍?

 CSとはいえ民間放送だからコマーシャルが流される。「しじみ習慣」、「世田谷自然食品」、グルコサミン、自動車保険のネット通販、「鯨の大和煮」。若い人たちが飛びつきそうなものは一つもない。健康に不安を抱え、自動車を所有し、「鯨の大和煮」が象徴する昭和にノスタルジアを抱く。プロ野球の中継を熱心に観るのは、50代から上の中高年ということか。40代から下が観るのは圧倒的にサッカーだろう。野球ならメジャー。

 テレビで野球を観る人は激減しているが、不思議なことに、スタジアムは昨年までどこも満員だった。「カープ女子」に代表される女性ファンの開拓に成功したことが大きい。だが彼女たちの多くは野球のルールを知らない。応援そのものをライブやフェスに行くのと同じ感覚で楽しんでいるのだ。歓声をあげ、応援歌を歌い、飛び跳ねて騒ぐ。そうしたスタンドの光景がすぐに戻るとは思えない。女性ファンたちは、離れていくのではないか。

 「ダブルプレー」を「ダブルアウト」と言ったアナウンサーの話は以前に書いたが、いまでは野球のルールを知らない男の子も増えた。野球はルールが複雑で、道具にお金がかかり、硬球であれば危険度のとても高いスポーツである。この国で目覚ましく普及したのは、他に選択肢がなかったからだ。いまは選択肢も多様化している。このままいけば、急速に衰退する可能性は高い。それはダルビッシュや筒香の危惧しているところでもある。

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