中級者が胆管挿管を語ってみた

初めまして。以前Twitterで公開した挿管についての記事を読みやすいようにこちらにまとめました。

本当はもっと手を加えたいのですが、鮮度が良いうちに公開しよう、と思いほぼ原文ままで載せております。

わかりにくいところもあると思いますので、いつでもお気軽にご質問頂ければ幸いです。

以下転載します。

はじめに 

卵はERCP経験数1500例程度、挿管率98-99%(年に数回程度上司と交代することがある)くらいの中級者です。断じてエキスパートではありません。そんな目線での挿管のコツを書いてみようと思って書き始めました。

ercpは7割挿管できるようになるまでは比較的すぐできて、9割から1分ずつあげることが難しい手技。ボスには300例越えが初心者脱却の第一ステージと言われました。初心者はまずは7-8割を目指して、9割を狙っていく形になると思うので、ここでは癌や困難例以外の基本をまず書きます。

基本
正面視が1番重要。右手を離しても乳頭がずれずアップで乳頭が歪まず近づくところにポジションを。透視でも歪みを確認。
送気ボタンには指を置かず、必要な時少しだけ。送脱気すればするほど蠕動する。初心者ほど送気が多い。送気すると乳頭部胆管も潰れる。胆管口不明なら脱気で胆汁流出確認を。

基本2
ポジションをとれたら胆管口と乳頭の猪俣分類、口側隆起の形状を確認。
基本的には口側隆起の11時-12時方向の尾根を走るように胆管が伸びていくイメージ。可動性があるのでCFと同じでpushすると伸びることを念頭に。イメージした胆管走行に軸を合わせてカテーテルの角度を出す。無理に押さない。

基本3
道具について
卵の病院ではメディコスヒラタのmediglobe-ercpカテーテル+hydrajag0.025ストレートが先発(安いから)
入らない場合110Qに変更。挿管目的でclevercut出すのは激レアで基本的にはこの2つで入れる。
膵管ガイドの時は胆管にjag残してvisiglide1を使用している。

追補 
硬いワイヤーとして、revowave、選択目的にラジフォーカスを使用することも。
当院ではpath courseやwrangler、ラジフォーカスを予備に置いている。

ワイヤーの硬さについて
visi1>jag>visi2>m through=エンドセレクター

先端荷重の強:どのくらい先端に力がかかるとワイヤーが曲がるかを実験して測定。
こんにゃくを買ってきて、MTWを固定し、一定の速度で各ワイヤーを出したところ、
結果は硬さの順に
visi2>mthrough=エンドセレクターだった。

トルク性能は
m-through>visi2>エンドセレクター。

これに加えて胆汁と触れることでデバイス抵抗が出てくるが、
それはエンドセレクターが最もよく>visi2>>>mthroughだった。
mスルーは選択性高いのですがぬらさないとカピカピになりラジフォーカスに近い感覚になる。

(shun先生、ヘフェ先生、鉄蛇先生から頂いた情報です)

各論 分離開口 タマネギ型🧅
玉葱型は玉葱型と認識するのがまず大事。分離開口なので、胆管口さえ捉えたら入る易しい部類だが、一撃で入れるのを意識しないと胆管周囲の膵管に入るうちに胆管口が見えなくなってドツボにハマることが最初はよくおこる印象。最初の一撃が1番簡単なのでまずは乳頭を観察、脱気して胆管口を確認。カテ先端をあてがって延長線が口側隆起の尾根を走っていくイメージで角度をだす。
乳頭が小さくカテの先端より胆管口が小さい場合は、ワイヤーをちょい出してワイヤー先端を胆管口の中に入れ、それを軸にしてカテをあててからワイヤーを進めるとうまくいく。

各論 分離開口 別開口型
別開口とわかれば一瞬で入る。
竹輪みたいな開口部が左上、右下に二つ並び眼鏡のように見える。左上の胆管口にうてば入る。
ただしわからなければ永遠に入らない。

各論 隔壁型 結節型 
玉葱の次の初心者の壁、そして越えた後、最後に立ちはだかる壁。
唯一卵が入らず手を変わることがあるのが結節のハイパー難度。
上の先生方にはお叱りを受けると思うがあえて書くと、90%入れるのを狙うのであれば、個人的には結節押し潰し法、適宜膵管ガイド併用を推したい。

何故かというと90%の症例では結節をめくるより速く確実で、膵管ガイドを置いて最終的にpステントを入れて終われば安全だから。個人的には初心者はこれでいいと思う。
膵管ガイドワイヤー法はまとめて後述予定。

押し潰し法は、舌状突起の左上の付着部にカテーテル先端をあて、鉗子挙上を極僅かに下げ左上から右下に垂れるのれんの棒に近いところを左上に押す感じで結節を押し潰して、胆管口に入る。
舌状突起が大きく滑って膵管にガンガン入るなら膵管ガイドを置くと、軸ができるので舌状突起に負けることなく胆管にアプローチし易くなる。
安全のためにも、膵管ステントを躊躇う理由はないと思う。

個人的にはしっかり狙っても3-4回膵管に入るようならガイドを置いてpステントを入れる(ことが多い)。

最高難易度のは、隔壁が胆管口側に倒れ込んでしまって、ほぼ胆管口が塞がってしまい膵管にしか入らなくなるもの。この場合は膵管ガイドを抜いて舌状突起をめくり続けるしかないが、これが難しい。。

各論 縦長型 
ここからは隔壁型も共通管型も両方ありえる乳頭シリーズ。正直平坦も絨毛も術者のインプレッションだと思うので、今回はわかりやすい縦長型と、共通管型を記載。

縦長型が安定して入れられるようになったら初心者脱却の一歩手前だと思う。

縦長の鉄則は頂点に当てて左上を狙うこと。縦長の乳頭の滑走路に着陸するイメージでカテを頂点左上にあてて滑らせるように接地させる。どんな乳頭より、壁に沿わせるイメージが必要になる(角度がかなりきつい)。
ファイバーは押し込み気味で角度をだし、カテで胆管口を捉えてから徐々に引いて軸を合わせてワイヤーを入れるとうまくいくことも多い。角度出しと軸合わせの基本が要求される乳頭。
見上げが足りないと間違いなく膵管に入るので、膵管に入っている場合はさらに見上げが必要と考えたほうがいい。ガイドも有用。

各論 共通管型
同じ穴から胆管膵管が括約筋内で共通管を形成する。つまり中で分かれるので穴に入れるのは簡単。
ちょい造影で胆管が映ればラッキー。カテをギリギリまで引いて見上げて角度を合わせ、胆管をガイドで狙う。どうしても膵管にばかり入ったり、胆管が映らない場合は膵管にあえて入れて、カテも挿入した状態からカテを徐々に引きながら、釣りの要領で内視鏡で胆管軸方向にカテをやや見上げながら、ワイヤーを細かく出し入れして胆管に引っかけると入ることも多い。

通常の角度出しか、引きながらの角度出しかのどちらを選ぶかは状況にあわせて。

各論 膵管ガイドワイヤー法
これをきちんと使いこなせれば9割は超えられると卵は思っている。

1番のポイントは、膵管ガイドをきちんと固定すること。胆管を狙うカテと同時に鉗子挙上台に置かないこと。
これだけで操作性が劇的にあがる。

具体的な方法としては、ファイバーの鉗子挙上台より画面右上側に溝があるので、まず膵管ガイドを入れてからそこに引っかける。
引っかけるときは鉗子挙上を一旦下げて、右にしゃくる感じでガイドを引っかかって固定される溝の位置まで右に持っていき、鉗子挙上をしっかり上げて溝に引っ掛けてロックする。ロックがかかった後鉗子挙上を慎重に下げて、カテを出す。これで左からフリーなカテ、右の溝に膵管ガイド、という状態ができるのでカテは好きな角度を出して狙えるようになる。
ガイドが溝から外れる度に面倒でもこの作業はやり直す。

この状態になったら、後はカテをガイドより左上に当て、方向は口側隆起を参考にして透視を見ながら、膵管ガイドよりも上を通るようにワイヤーを進めて挿管すればいい。
角度が出にくかったり胆管開口部が小さい場合はカテを細型の110Qに変更することで操作性が向上することもある。


おわりに
若輩者が偉そうに語ってしまいましたが、初心者に近い目線だからこその情報になっていればいいなと思っています。

今後ともよろしくお願いします。

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