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ネットで使う美術品の画像は、カラープロファイルをsRGBにしようよ、Adobe RGBじゃなくてさ、という話

カラープロファイルの設定が不適切だったがために、ディスプレイに表示した作品画像がくすんでしまうことがあるので、その報告。

まずそういった事例の紹介。

10月から始まる竹内栖鳳の回顧展ですが、それを宣伝するウェブメディアで、彼の代表作《アレ夕立に》の画像の色がくすんでいるのを発見。

くすんでしまった《アレ夕立に》

なぜこうなってしまったのか。

ふと思い出したのが、2020年に京都文化博物館で行われた展覧会で、《アレ夕立に》の画像を見たことがあって、その画像のカラープロファイルがAdobe RGBだったことです。こちらはカラープロファイルが埋め込まれているけど、先ほどのくすんだ画像のほうはカラープロファイルが何も設定されていません。

正常な色合いの《アレ夕立に》

では、カラープロファイルってなんぞや。

ぶっちゃけわたしもよくわからんが、わからないなりに説明を試みる。

ディスプレイはその性能によって表示できる色の鮮やかさが決まっていて、その国際標準規格がsRGBと呼ばれる。もっと鮮やかな緑や赤などが表示できるAdobe RGBという規格に対応しているディスプレイもあるけど、こっちはプロ仕様でお値段もめちゃ高い。

ちなみにどうでもいい余談だけど、私は美術画像を扱う趣味が高じて、sRGB規格を正確に出せるディスプレイを買った。8万円くらいした。デスクトップPC買えるじゃん、と思った。

カラープロファイルは、そうしたディスプレイの性能によって表示できる色の違いを考慮して、たとえばこの画像はAdobe RGBの色が出せるディスプレイで出力したものですよ、だからsRGBの色しか出せないディスプレイならこういうふうに変換すれば誤差が少ないですよ、という処理を行ってくれる。

ところが、画像をウェブ利用する場合、カラープロファイルが埋め込まれた画像が流通する過程でプロファイル情報が効かなくなったり、ファイルサイズの軽量化のためにサイトの仕様などで自動的に消されてしまったりすることが多い。その結果、色がくすんだりして、品質が著しく劣化してしまう。なので、ウェブ利用が前提であれば最初からsRGB規格にしておくほうがいいようだ。

つまり、Adobe RGBは画像を印刷物などの商品に利用する場合に業者同士でやり取りする際には有用だが、ウェブ利用が前提のメディアに画像を提供する場合などはsRGBにして渡したほうがトラブルがなくて済む。

とくに、美術画像に関して言えば、たとえば展覧会の宣伝のために画像をメディアに提供し、メディアはその画像を使って紹介記事を書くわけだが、オリジナルの画像をコピペしたり、手動でリサイズしたりしたときにプロファイルが消失してしまうのではないか。

冒頭の《アレ夕立に》も、Adobe RGBが埋め込まれた画像の受け渡し、ウェブにアップロードする過程で、プロファイルが消されてしまった結果、くすんで残念な感じになってしまったものと思われる。

《アレ夕立に》に限らず、色味がくすんでおかしくなってるやつ、だいたいこれのせいだろと思っている。特に赤色が著しくくすんでしまうのが目印です。これを読んでる人も気にかけてみると良いと思います。


参考サイト


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