見出し画像

U-18 Season Preview 2022

 コロナの災厄は、未だに収まる気配がない。自分が感染したとして極めて軽症であったとしても、大切な家族や友人が同じ程度で済むかどうか何も保証しないという大前提との距離感を、ある種の厭戦気分と共に徐々に失いつつあるのが現状ではないだろうか。あの頃のコミュニケーションスタイルはもう戻らない。だからかどうかわからないが、応援の愉悦を奪われたサポーターのひとりが、春を待たずにこの世を去った。やり残したことは数多くあったはずなのに、ふとした瞬間に精根が尽きてしまったかのように。儚いものだと強く思う。

 ヴィッセル神戸U-18は2022シーズン、変化の年となった。これまで延べ10年以上にわたり指導者としてヴィッセルの育成に携わってきた野田知監督が退任し、トップチームの選手でもあった安部雄大コーチが新監督として昇格した。野田さんの在任期間が長かったから大きな転換のようにみえるのだけど、昨シーズンの安部さんはヘッドコーチのような立ち位置と存在感だったし、日々のトレーニングのレクチャーは安部さん主導で行っていたので、個人的には既定路線の人事というか、来るべき時がきたというのが率直な感想だ。安部さんについては、トップチームのコーチを経験したことなども含め、選手OBの指導者としてクラブは大事に育てているなあと感じる。ただその一方で、ここ数年クラブがお題目にしてきたいわゆる「スペインの風」のメソッドと、じりじりと競技レベルが向上するプレミアリーグの順位争いと、トップチームは現役代表や代表クラスの海外組を収集するヴィッセルという特異なクラブ事情の狭間で、果たしてオリジナリティに充ちた取組みができるのだろうかという観る側からの諦念のような感情もあったり。とはいえ、安部監督とコーチ陣がどういった旗振りをしていくかもあわせて、今シーズンの変化を楽しみにしていきたいと思う。

 プレミアウエストは今シーズンから2チーム増えて、12チームで順位を争う。東は清水や静岡学園高、西は九州の大津高や鳥栖といった強豪ばかりで上位進出は簡単ではないし、公式戦が4試合増えることで年間のスケジュールもさらにシビアになる。これまで組み込まれていた夏のクラブユースの日程がなくなったりするわけではないからだ。昨シーズンはコロナ陽性者による活動停止が相次いだせいで、各チームの消化試合数に違いのある状態で「勝点率」による順位決定となった。今シーズンも観戦には制約が設けられており、特にアウェイゲームの現地観戦は難しいところが多い。そんななかで神戸は昨年同様にいぶきの森球技場Cグラウンドでの受け入れ態勢を整えて、可能な限り観戦可とする方針を明らかにしている。ハードルは低くないかもしれないが、ぜひアカデミーの公式戦に関心を抱いてほしい。そして、モニターやディスプレイ越しにでもいいので、リモートな声援を送ってほしい。

パワハラクソ野郎から大事な選手たちを守るためにも。

登録番号、氏名(よみがな)、丸文字の数字は学年の順で示します。

GK
1 田村聡佑(たむらそうすけ)③
12 津崎瑛人(つざきえいと)②
21 谷河樹(たにかわいつき)②
31 吉岡耕佑(よしおかこうすけ)①

高橋・森田というレベルの高い競争を繰り広げた先輩が去り、タムソーこと田村にとって試される1年となる。先輩たちに劣らないサイズとスケール感を誇るが、足下のボールコントロールに課題を残すか。何よりも、控えめなメンタリティの殻を自分自身で打ち破ることができるか。そうすればボールスキルも改善できるはず。それが一番大事マン。セカンドは津崎と谷河の2年生が争うが、2人ともそれぞれウイークポイントがあって安定感にはまだまだ。1年生にもチャンスあるかも。

DF
2 横山志道(よこやましどう)③
3 村井清大(むらいせいた)③
4 寺阪尚悟(てらさかしょうご)③
5 田代紘(たしろこう)③
15 廣畑俊汰(ひろはたしゅんた)②
16 阿江真嗣(あえまさつぐ)②
18 本間ジャスティン(ほんまじゃすてぃん)②
26 津島颯太(つしまそうた)②
27 茨木陸(いばらきりく)①
32 江口拓真(えぐちたくま)①
38 松田志道(まつだしどう)①
40 山田海斗(やまだかいと)①

バックラインは4バック。今年の基本布陣はビッグマン寺阪主将とクレバーな田代がセンター2枚を固め、左に細身ながらボールが剥がれない技巧派の2年生廣畑、右にパワー負けしない重戦車横山と、4枚のカラーというか特長がはっきりしている。青黒からすっかり深紅の男になった本間ジャスティンが右サイドで控えており、こちらも馬力に期待十分。縦に強い香車系のレフティ3村井はウイングでの起用が増えており、プレスの先鋒としての駆け引きを会得するとともに、奪ってからのクロスやゴールにこだわりたい。上級生の壁は高いが、1年生もサイドで出場機会があるか。皆ボールスキルがあって期待できるけど、特に山田は上背があって好素材だと思う。

MF
6 片山颯真(かたやまそうしん)③
8 安達秀都(あだちしゅうと)③
10 永澤海風(ながさわみかぜ)③
17 坂本翔偉(さかもとしょうい)②
22 長澤芳汰(ながさわこうた)②
28 今富輝也(いまとみてるや)①
29 岩本悠庵(いわもとゆあん)①
34 川井憂翔(かわいゆうと)①

フォーメーションは433が基本になっており、中盤は3枚。アンカーとインサイドハーフの2人でトライアングルを形成する。アンカーは3年生の安達と片山がポジションを争う。セットプレーではキッカーを務め流麗なボールさばきとターンが得意な片山と、コンタクトの強さと長短の左キックを活かしてゲームメイクする安達。簡単には甲乙つけがたいし、相手次第、コンディション次第の部分もあるので、2人が並び立つゲームも観てみたいところ。インサイド2枚のうち1枚は永澤。ゴールに迫るドリブルとシュート力のあるこのチームのエース。もう1枚は、2年生の坂本が野心的な汗かき役としてギャップに顔を出していく。年代別代表で中3からU-18登録を果たした今富も基本スキルが高く、物怖じしない冷静さが光る。経験を積むきっかけがあれば一気に中軸になるかも。長澤も決して大柄ではないがボールを保持する姿勢が素晴らしく、自信を持ってプレイしてほしいひとり。

FW
7 蘓鉄航生(そてつこうき)③
9 冨永虹七(とみながにいな)③
11 宇治頼人(うじよりと)③
13 高山駿斗(たかやまはやと)②
14 有末翔太(ありすえしょうた)②
39 森田皇翔(もりたおうが)①

前線はワントップと左右のウイングで3枚。ワントップは昨年に引き続き冨永が中軸。というか彼がゴールに迫れる位置でプレイできるかどうかがチームのパラメータ。キレッキレのアンクルブレイク、懐の深いトラップ。昇格候補に相応しい実力をシーズン通して証明してくれるはず。1年生ながら昨シーズンも多くの試合に出場し、高い身体能力で右も左も前もこなせる高山が13番を背負ってゴールを狙う。南米の香りが漂う小気味よいドリブルで切り裂く蘓鉄は右ウイング、激しい闘志でチームを牽引するストライカー宇治が左ウイングに控える。2人とも最終学年なのでスコアに絡んでレギュラーを確保したいところ。スペースにも1対1にも強いスピードスター有末は昨年から出番を得てきた2年生。森田は新1年生で唯一登録された選手。小柄ながら体幹の強さがうかがえるスプリントと強烈なシュートが光る。

 コロナ禍で開催できていなかったシーズン前のガバナーカップが今年は開催され、外国からの招待は叶わなかったものの、優勝を争ってプレミアイーストの青森山田高と対戦することとなった。結果は相手10番に2ゴールを許すなど先行を許す苦しい展開も後半に3ゴールを挙げての3-3(0-1)のドロー。PK戦は4-3で勝利した。正直、高校年代3冠を果たした昨年ほどの迫力は感じなかったが、しぶとくゴールマウスにねじ込む失点シーンの個人の凄みはさすが。そんなタフな高体連のトップクラス相手にアタッカー3人がゴールを奪ったのだからチームの雰囲気も悪くないのではないかというのが個人的な印象だ。3年生は中3(U-15)のときに関西を制覇した世代でもある。残留争いに巻き込まれた昨シーズンから、逆襲に転じるときがきたと言っていい。プレミアウエストの開幕は4月3日、ガンバ大阪ユースとのアウェイゲーム(注:保護者以外は観戦不可)。第2節は4月9日、ホームであるいぶきの森Cグラウンドに大津高を迎える。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?