見出し画像

U-18 Review 2023

 今年も、プレミアWESTの流れを振り返ることにしました。大きなコンペのファイナルでようやく?実現したU-15神戸と伊丹のヴィッセルダービー(高円宮杯第3代表決定戦)とか書きたいことは他にもあるけど、リーグ戦のストーリーを追い直すのがやっぱり楽しいし、自分にとって価値があると思えるので。

■主要大会の成績

・プレミアWEST
 2位 勝点45
 14勝3分5敗 得点42 失点19 得失点差+23

・U-18クラブユース選手権
 関西大会 第2代表
 全国大会 グループリーグ敗退 1勝2敗

■プレミアWEST
 プレミアは2023年も12チーム22節で鎬を削った。2022シーズンを勝点43の2位で終えたヴィッセル神戸U-18(以下神戸)は、FW冨永虹七などトップチーム昇格3名を含む有力なプレイヤーが粒ぞろいの世代でもあり、その彼らが卒団したことで、チーム力の低下は避けられないであろうとの事前評価が多かったように思う。
 しかし、終わってみれば2022を上回る勝点45を挙げ、得失点差も前年と並ぶ+23まで積み増すことができた。ただ、それでも優勝には至らず、勝点46のサンフレッチェ広島ユースに一歩及ばずに終えた。順位は2年連続しての2位。得失点差は同スコアで勝点が1差。惜しいように思えるが、その差には必然がある。
 というのも、その広島ユースとの直接対決ではダブル(アウェイ・ホームともに敗戦)を喫しているからだ。特に、2戦目のホームゲームは互いに首位争いを繰り広げるなかでの天王山。ヴィッセルも必勝を期して挑んだが、スコアは0-1。後半アディショナルタイムを終えようとするセットプレーでの失点によるもの。紙一重であったと言えるが、その一重を突き破れずに頂点を逃したシーズンとなった。
 それでも、今季の神戸は強かった。14勝3分5敗。特に、トップのプレッシングとはテイストが異なるものの、相手の強みを出させないハードワークに支えられた終盤の6連勝(すべてクリーンシート!)は鮮烈な印象を残したと思う。リーグ戦の成績としては十分に誇れるものだ。また、トレーニングの強度も昨シーズンに勝るとも劣らない雰囲気であった。これがスタンダードとなってU-18の伝統として定着すれば、プロ契約に至る素材の輩出が続くようになるかもしれないという感触がある。

 前期11試合と後期の11試合を比較してみると、春から夏までの前期が勝点18、秋から冬に差し掛かる後期の勝点が27と、後半戦のスパートが明白。前期は3試合あったドローが後期はゼロ。春先なら引き分けに終わっていたであろうゲームで失点せずに競り勝つ。昨シーズンの武器でもあったハードワークを下敷きとした堅牢な守備というストロングポイントを見事に再確立した印象を強く受けた。
 昨年は3年生が主力を占め、だからこそ当時2年生だった本間ジャスティン(3年)の起用とその華々しい活躍が印象的だった。実際にジャスティンは決勝点となるゴールを高い打点のヘディングで何度も決めるなど、2022の神戸は彼のプレイのインパクトと貢献が大きかったと思う。だが、今シーズンは、逆に1・2年生の成長が素晴らしく鮮烈で、少なくともジャスティンだけが目立つチームではなくなっていたと言える。正直に言うと、ジャスティンのリーグ戦ゴールがゼロに終わったのは残念だったが。まあ、プロにとっておいたということにしよう。

 開幕戦はアウェイの横浜FCユース戦。EASTから転籍してきた強豪チームを相手にリスペクトしすぎたか、引き分けのスタート。2節のホーム東福岡戦は1-0で押しきるも、3節の広島ユースとのアウェイゲームは0-3で完敗。
 広島鳥栖磐田と続く大事なシリーズの初戦を落とし、チームはここから1年生のGK亀田大河を正キーパーにする決断を下した。彼は、それまでのテストマッチでも上級生と甲乙つけがたいパフォーマンスをみせてはいたが、驚くべきことにシーズンを完走してプレミアWEST最少失点のチームの守護神を務めきってしまった。トップチームのトレーニングにも度々加わっている。昨シーズン、冬のU-15高円宮杯で全国を制した世代の素材感は疑うまでもなかったけれど、おそらく1年生からここまで出場し、実績を残したキーパーは過去を遡っても例がないと思う。大きな発見のひとつだ。
 昨シーズン優勝を争った鳥栖U-18との試合は2-2の引き分けに。セットプレーの対処が甘く先行されてATに際どく追いつくゲーム。次戦アウェイのヤマハでは3-2と磐田U-18に勝利を収めたが、鳥取バードでの米子北戦はアグレッシブな守備に苦しんだまま90分を過ごし、注文通りのカウンター1発に沈んだ。ひとつ課題を改善すれば、次の課題がもたげる序盤戦。
 大津とのタフマッチをFW田中一成(3年)のゴールで制して、内容もやや好転の兆しをみせる。そして神村学園とのホームゲーム。インターハイ県大会を連日こなしてのハードスケジュールで疲労の色が濃い相手に5-0で圧勝。首位の静岡学園戦を11節に残し、前半戦のラスト3試合が俄然楽しみな展開となる。
 クラブユース全国大会を目前にした初夏の3試合。名古屋U-18とのアウェイゲームは0-0の痛み分け。シュートモーションから先のパワーを欠いた。ピッチの蒸し暑さにも苦しんだが、トップ昇格するGKピサノ君と強靭なCBコンビに蓋をされたという印象が強く残った一戦。10節は不調にあえぐ履正社にきっちりと勝ち、前期のラストとなる11節静岡学園戦に臨むことに。
 高体連のトップクラス、なおかつ首位の静学とのビッグマッチ。勝点5差あるものの、勝てば2差に詰まる重要な6ポインター。リーグをおもろくするためには勝つしかねえと意気込んで静岡へ。しかし、待っていたのはJ1の公式戦では体験できないような2種ならではの環境。雨上がりの御殿場、濃霧に包まれた時之栖グラウンド。パスやフィードが制約される真っ白な空間に迷いこんでしまった彼らは、リズムをつかみきれず後半の2失点で敗れた。
神戸の勝点は18にとどまる。突き放したかたちの首位静学は26。試合を終えたときには霧が晴れつつあったが、足りないものを痛感させられた敗戦だった。今シーズン優勝争いまでは難しいかな...という弱気な気持ちがもたげる。

 クラブユース~和倉ユースを経た9月、まだ暑さの残るなかリーグ戦が再開。あくまで優勝に向かうという姿勢がホンモノか問われた12節横浜FC戦、火が着いた攻撃陣が畳み掛けて5-2で圧勝。残念なオウンゴールなどもあったが、結果的にこの日のスカッドが後期のファーストセットになっていく。続くアウェイの東福岡戦、アウェイ九州シリーズその1。同期の負傷離脱によりCF起用された高山駿斗(3年)のプレミア初ゴールなどで力強い勝利。U-15で年代別代表に選ばれるなど輝いていたアタッカーは、U-18への昇格後、長らくフィジカルの調整に苦しんできたが、和倉ユースあたりからパフォーマンスが一気に向上。ハイエンドなポストとターンで堂々たるプレイぶり、シーズンラストまで相手の脅威になり続けた。シリーズその2は翌週のアウェイ鳥栖。低迷からのブレイクポイントを必死に模索する鳥栖とのゲームは重たい内容に。勝負を決した唯一のゴールは、後半20分過ぎのセットプレー。GKのファンブルしたボールに真っ先に反応した坂本翔偉主将(3年)が触って泥臭く決めた。小雨が降り続く不安定なコンディションにも負けることなく、CB山田海斗(2年)を中心としたバックス陣が甘さを感じさせない完封勝ちで3連勝を果たし、神戸は勢いに乗って15節の広島戦を迎える。
 とはいえ、連勝しているのは広島も同じ。互いにほぼベストメンバーを揃え、骨太の攻防が続く。いぶきCグラウンドで負けられない神戸は、前半こそ広島の強度に苦しみボールサイドの優位が作れずに過ごす。受けに回る時間が長かったものの、後半は反攻に出る。幾度かのフィニッシュを作り出す。ただ押し込む時間帯にも決定的な瞬間は訪れないまま、後半ATへ突入。ピッチ外にこれはドローやむなしかと打算がよぎり、ほぼラストプレーであろう相手のコーナーキック。跳ね返せばそれで終了の笛。ピッチ内に甘さはなかったが、GKが迷う絶妙なファーサイドへのボール、DF黒木君をフリーにさせてはいけなかった。まさかの失点を喫する。まず、手に汗握るハイレベルなゲームだったことが前提で、90分を通してみれば引き分けが妥当かもしれないが、勝敗を分かつ必然がどこかにあったのだろうと思う。結局、この試合を引き分けにすらできなかったのが最後まで響くことになった。ダブルを勝ち得た野田監督の矜持を見せつけられたし、試合後いつもより長い時間グラウンドに佇む安部監督の姿に、深く色濃い悔しさを感じた。
 天王山での敗戦。だからこそ連敗をしてはいけないことは共有していたはず。ところが、ホームの磐田戦、残留争い渦中でアグレッシブに挑む磐田に3点を先行され、後半は栓が抜けたか、あるいは憑き物が落ちたかのように神戸はひたすら攻め続けたものの反撃は2点まで。2-3で惜敗。警戒していたはずの連敗。喜びに沸く磐田の歓声だけが聞こえるいぶきのピッチ、広島に負けた深手は外から測るよりも深刻だと知らされた。
 それでも、神戸の若者たちは膝を屈することなく立ち上がる。悪い空気を引きずることなく、日々のトレーニングもさらに熱が入る。不祥事で揺れるアウェイ大津戦は、ほぼ直前になって「試合不実施」との判断が下った。3戦目の九州アウェイがなくなり、残るは次節の神村学園。チームは薩摩半島の南部、指宿へ向かう。これまで沖縄のチームは所属したことがないので、プレミアWESTではおそらく最南端の会場のはず。フル代表がキャンプを組んだこともあるいわさきホテルの敷地内に設けられたサッカー場での対戦。ここまでチームのダイナモとなってきた濱崎健斗と渡辺隼斗の1年生アタッカーたちが揃ってゴール。数字のうえでは優勝が厳しくなったとしても、ファイティングポーズを止めないという気迫が伝わってくる内容。クリーンシートで抑えた守備陣の奮戦も嬉しかった。さらに続く米子北戦、前期の借りを返すかのような手堅いサッカーで粘り勝ち。前半に2点を奪い、好調の相手に油断せず緊張感を保ちきった。今シーズンの神戸はこの2試合あたりで完成したと思う。首位広島との勝点差は1。残すは3節となり最後の中断期間へ。
 ラスト3試合は名古屋、履正社、静岡学園。首位広島の数字とは関係なく、3連勝しなければ勝点2.0ペースに届かない。前期はスコアを動かせずに終わった名古屋とのホームゲーム。夏と同じように名古屋のバックラインは堅かったが、坂本主将が野心に満ちたアクションでセットプレーに反応し陥落させる。後半にも2点を追加して3-0の完勝。続く21節はすでに降格が確定した履正社戦。メンバーを入れ替えての果敢なサッカーに苦しんだが、神戸は慌てずに後半ゴールをこじ開けて2-0で勝点を積む。ただ、広島も勝ち続けて43。神戸は42。最終戦も勝ったうえで広島の引き分け以下を願うしかないシチュエーションで迎えた最終戦。
 ここまでくるともう負ける気はしなかった。前半の半ばに濱崎のPKで先制すると、中盤で頭角を現したMF岩本悠庵(2年)がフリーキックを決めてリードを広げる。後半も3点を奪うゴールラッシュ。上位を争い続けた静学に対し見事な完勝を収め、2023シーズンのプレミアWEST公式戦を終えた。

■兵庫県リーグ優勝 ~ プリンスリーグ関西2部 参入プレーオフ
 Aチームの成績は、切磋琢磨を止めないBチームに支えられていると言っても過言ではない。
 昨年は県1部で準優勝だったヴィッセル神戸U-18B。今シーズンは最終戦で滝川第二Aを破り、優勝を果たした。そして、昨年末に成し遂げられなかった関西プリンス昇格という忘れ物をとりにいく。
 Bブロックの神戸Bは、12/16(土)に京都府2位の京都橘Bと対戦。勝ち抜けば、大阪2位の常翔学園と滋賀1位の草津東の勝者と12/17(日)の連戦でプリンス昇格を賭けた試合に挑むこととなる。
 過酷な連戦でもあり集大成でもあるこのプレーオフ、U-15の高円宮杯と重なってしまうなどもったいない日程になってしまったが、選手やスタッフみな総力戦でやってくれると思います。もちろんサポーターも。

 トップチームがオフシーズンに入ってしまったけど、ヴィッセルの余韻にまだまだ浸りたい退屈な各位、ぜひ神戸の若者たちを応援にきてください!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?