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U-18 Midway Review 2019

プレミアウエストは6試合を終えて3勝3敗、勝ち点は9。得点失点とも8を数え得失点差なし。ちなみに首位ガンバユースは負けなしの勝ち点16。ヴィッセル神戸U-18は、どちらかというとゴールに恵まれない、攻め続ける力の不足に泣く序盤戦を過ごした。
夏のクラブユース選手権への出場を争うJクラブ同士の総当たり関西予選は2敗1分、勝ち点1の最下位でストレートインを逃すことに。街クラブとのプレーオフこそ鬱憤を晴らすかのようなゴールフェスティバルで9-0と一蹴し、7月の本選出場を決めたものの、ここまで彼らのポテンシャルに相応しい安定した戦いができているとは言い難いのが正直なところ。

そんなチームの屋台骨を支えているのがチームキャプテンの山内翔だ。443と442を併用したり、あるいは混濁させたりするなかで、昨年の今頃に比べてコンタクトに強くなり、他チームのエース格に劣らないクオリティを発揮し続けている。1-0で勝利したアウェイのセレッソ戦では、前線に進出した彼のコントロールショットが試合を決定づけた。良くも悪くも選手として突出していることが自明なので、リーダーとしての心理的負担は相当あるだろう。彼の替えが効かないチームになっているなと感じる。相変わらずドラマティックに右往左往するトップチームへの昇格候補と目されており期待が集まるが、本人はベンチ入りでは満足せず公式戦に出るところまで熱望している。

長らくセンターバックを組んだ小林友希と右田楓が卒業した後のバックラインは、プレミアレベルの経験が不足してしまうのでどうやっても苦労する。チームキャプテンのひとり東田正樹の相方探しをしながら過ごすシーズン、開幕戦には2年生の橋辺海智が抜擢された。二人とも体格で圧倒するタイプではなく、どちらかというと判断やボールスキルも含めた総合力で勝負する選手。主導権を握り続けるような展開だと強みが出るが、互角以上の相手に受け身になると泡を吹くようなシーンも見受けられた。で、橋辺が負傷離脱した後は、長身痩躯の3年生芝晴太郎を起用して耐えてきたというのがここまで。昨季中3のうちに飛び級でU-18に昇格した1年生の尾崎優成に出場時間を与えるという選択肢もあるかなと思える。
右サイドバックは緒方佑真がポジションを確保した。アタッカーからコンバートされてしばらくはくすぶっていたが、上級生となりようやく戦えるディフェンダーになったと評判だ。たまにファイトする方に気持ちが傾きすぎてうっかりミスが出るのだけど...。左サイドはレフティ坂口薫。独特のフォームから前線へ突き刺すスピード感あふれるパスと独特のストライドで勝負するオーバーラップが武器だが、ここまでは試合で表現した積み上げが少なく、周囲とのコンビネーションの確立に苦労しているように思える。スタメンを争うのは2年生の馬場智己。こちらも本来は前目の選手だが、サイドバックでポジション争いに加わった。強靭さにはやや欠けるが、左右ともできる視野と技術があり、何よりポゼッションに参加できる現代的なサイドバック。ケガで出遅れた藤本颯真や熊元航征もチャンスを狙う。

中盤は3枚でスタートする場合が多い。山内ともうひとりインサイドハーフを務めるのが10番の佐伯清之助だ。1年生の昨年は線の細い印象があったが、今季は背が伸びたのかサイズが大きくなったようにみえる。だからということではないけども、変わりゆく自分とチーム戦術との最適解が見つからないまま靄がかかったようなプレイに陥っているときがあってもどかしい。彼の存在感がチームの好不調を示すバロメーターと言っていいと思う。
そしてもうひとり、昨年からアンカーで試されている押富大輝のプレイが、ポゼッションスタイルの成否を左右する。センターバックから渡されたパスを受けターンして相手のプレスを置き去りに前を向いて展開する、トップチームで山口蛍やサンペールがみせるプレイをマスターしようとがんばっているわけだ。それが上手くいっていないときは、漏れなく自分がトレーニングしてきたモーションを忠実に再現することばかりに意識が向いていて、相手選手との距離や体の向きに気が回らずに寄せられるというパターンなので、90分+数分の間あのポジションを瑕疵なくやりきるのは大変だよなといつも思う。山内をアタッカーに近いポジションで起用するのなら、アンカー押富の完成度を高めるしかとりあえず道はなさそうだ。レギュラーを争う存在としては現在3ゴールのドリブラー重野祥輝の存在も大きい。劣勢の展開でも相手を剥がしてシュートにいけるようなゴールの匂いが漂う選手のはずなのだが、ここまではゲーム体力が明確な課題だった。とはいえここにきて徐々に改善しつつあるようで、今シーズンは90分ピッチ上を任される試合も。

アタッカーは多士済々と開幕前に書いた覚えがあるけど、その評価は変わらない。皆それぞれ武器があって、プレミアレベルであっても通用しないとは思わない。ただ、ポゼッションスタイルの定着に向けて繰り返すアプローチと、現実にゲームを優位に進める戦術とはやや距離があって、特に狭い局面での表現を強いられるアタッカーたちの負担が大きいということなんだろうなと勝手に理解している。
予想以上のスランプ状態になっているのが小田裕太郎だろうか。ここまでノーゴールという結果はプロを目指す本人が一番不本意なはずだ。もちろん相手のマークも激しいのだけれど、他のチームの有力選手だって同じようなものだから言い訳にはならないだろう。代表活動も含めてコンディションに苦しんでいる印象があるので、なんとか良い状態で臨んでほしい。
一方、2ゴールのスピードスター臼井勇気。クラブユース関西予選で負傷したものの軽傷で済んだらしく、中断明け早期の復帰が期待できる。単純なスピードだけじゃなく、技術もあるのが彼の魅力だろう。サイドハーフやウイングとして上下動を繰り返すタフネスもあったりする。
もうひとりの3年生、加藤悠馬も序列を上げてきた。右サイドの関係性でオーバーラップを引き出したりするのが上手くなったように思う。ゴールを獲ると特に勢いがつく選手なので、チャンスを活かせるといいのだが。
センターはテクニシャン森田侑樹とビッグマン三浦敏邦の2年生が異なる持ち味でアピールするが、昨年からの実績で森田が優位か。タッパがあってエアバトルはまだまだだけど裏のスペースに流れてボールを運べる三浦の素材感も相当なものだけど、相手DFを引き連れた難しいシュートを決めたりするのに、プッシュするだけのイージーなボールを決められなかったりする森田もまだまだ伸びしろである。伸びしろ。左はこちらも2年生佐々木貴哉が負傷者がいない間にスタメンを狙う。メンタルというか「心構え」で大化けするであろう選手なので、さらに貪欲になってほしい。同じく五味郁登も前線のユーティリティプレーヤーとしてBチームで実績を積んで存在感を出してきた。ガツガツと音がするような激しいプレイスタイルが特長なのでどうしてもケガと付き合わないといけないのが気がかり。

キーパーを忘れてた。
ここまでプレミア全試合で多久美景紀がゴールマウスを守っている。壊れそうな展開の試合でも何とかかたちにしてきたのは彼のシュートストップによるところが大きい。ただ、それよりも昨年続出した足下のイージーミスが出ていないことと、最後方からの指示の声が明らかに大きくなったのがここまでのわかりやすい改善ポイントだろう。あとゴールキックのポジション指示にこだわりが強くてデザイナーみたいにみえておもろい。何にせよ小林友希が抜けたバックス陣と比較してシーズン対比でどこまで失点数のマイナスを抑えられるか、そこでシビアに評価されるだろうし、本人もその心づもりだと思う。

というわけで、今週末からプレミアウエストが再開する。
6.23(日)が第7節:名古屋グランパスU‐18戦、翌週の6.29(土)が第8節:愛媛FC U-18戦、翌週7.6(土)がアウェイで東福岡高校戦、さらにアウェイ連戦となる7.13(土)広島ユース戦、翌週からは夏のクラブユース大会と密度の濃い戦いは続く。特にホームの2試合はトップの日程と重なっていないので割と観やすいスケジュールのはず。去年も同じように書いたけれど、U-18の試合にぜひ足を運んでもらえればと思う。

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