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私選;2010年代女性声優ベストイレブン

序言

声優というお仕事のフィールドが際限なく広がっていく(身も蓋もなく言えばアイドル化していく)過程のほとんどを、距離感を変えつつも眺め続けてきた世代だと思っている。ひとつのグループ、あるいは幾人かのスターによる世界観には収まらない、30年余に渡るゲームやインターネットといった新たなメディアの開拓を謳歌したことによる果実として現在の声優業界があることは疑うべくもない事実だからだ。
この10年を振り返ってベストイレブンを選んでみようというのは、そもそもフットボールに無理やりなぞらえた性質の悪い戯れであり、男子ってこういうのが好きなんでしょというふうに詰められたら降参するしかない企画である。ただ、時代を象徴する働き盛りのスターたちの業績を、こういうかたちで称えてみるのもそれはそれで愉しいものなのラジよ。

布陣

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 ということで作ったのがこちら。
 特定の誰かの熱烈なファンというわけではないので、フラットに選考したつもりなのだが、自分なりにポジションごとのバランスを考えた節はある。個人ごとに細かく解説することは避けたいが、3バックに中盤4枚のアタッカー3枚と、攻撃的にせざるをえないほどの人材の豊富さが印象的。直近10年で常にピークで居続ける人なんてほとんどいなくて、前半に華々しく活躍していたり、逆に後半にかけて当たり役でポジションを確立したりと、単年の評価とは全く違う難しさがある。(これで範囲を20年、30年、オールタイムなどと広げたら収拾がつかなくなるだろう...)
 今回に関して言うと、裏抜けして屈託なくチャンスに絡んでいく戸松をCFとして、ウイングに竹達、佐倉とタイプは異なるがヒロイン性を重視した配置。中央2枚は出てよし、引いてよし、仕事の質量とも抜群の花澤・茅野。この10年における業界の10番は花澤香菜でしょう、違うかな。サイドは悩ましいところだったが、多数の助演で作品を締めてきた日笠と、ステージイベントの地平を切り拓いた点を評価して三森とした。バックスについては、W佐藤はキャラクターから理解いただけると思うが、東山はマルセロのようなイメージだと言えばわかってもらえるだろうか、超攻撃的ラテラル。キーパーは背が高いのが半分、passiveなキャラクターと声の親和性が半分といったところ。
 最後まで迷って泣く泣く外したのは悠木碧、高橋李衣、水瀬いのり、早見沙織あたり。早見以外はどう考えてもアタッカーの演技・持ち役・パーソナリティで、このあたりは選ぶ基準を変えたら前線の構成も変わっちゃうと思う。
 自分の選考を振り返ってみると、ヒット作に複数恵まれているのは前提として、これまで経験したことがないような少年役や悪役に取り組むなどして、いわゆるアイドル的な人気だけでなく演技の幅や天井を広げるような20代を過ごしている人を高評価する傾向があるなと感じた。人気のピークはどうしても女性タレントとしての魅力と不可分であるけれど、演技者としての唯一性の獲得みたいな部分を強く志向してくれると、おっさんたちはさらにリスペクトできますよねという、そんな話です。
 10年後もこんなことを考えられる(豊穣かどうかは知らないけれど)才能を受け入れられる業界であってほしいもの。

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