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U-18 Season Preview 2021

 コロナの災厄はまだ止まないので、政府や行政機関の舵取りに合わせて我々は暮らしと価値観を変化させなければならない日々が続く。コミュニケーションそれ自体を媒介とするウイルスは、例えばスポーツ観戦から応援の愉悦を奪うことになった。選手たちをサポートしたい人間に残されたのは、どうやっても「プレハブ小屋」すら建てられないような制約だらけの環境。そして理性でそれを受け入れなければならない厳しい現実。

ただ、神戸のアカデミー部門は、保護者以外のファン・サポーターに対しても、観戦環境を提供しようという方針でいる。一般利用が行われるから厳密な区分が難しいという理由もあるが、いぶきの森球技場Cグラウンドは「無観客試合」でなければ誰が立ち入っても構わないし、マスクを着用するなど標準的な対策をしていれば咎められることもない。トレーニングにA・Bグラウンドを使用するトップチームと敷地内のエリアや導線を明確に切り分けできるからこその施策だと思う。発信してほしいことはまだまだ他にあるけど、物好きがトレーニングを眺められるのもそうした方針のおかげであって、他クラブの応援環境と比較すると感謝しかない。

そんななかではあるものの、昨シーズンは見送られたプレミアウエストが開催される。ジュビロ磐田以西の10チームによる争いで、最下位の1チームが地域のプリンスリーグに降格する。さらに来季2022年シーズンからは昇格とは別に4チームを追加し、東西12チームのリーグとなることが濃厚らしい。チーム数が限られる、すなわち試合数が少ないということなので、チーム数増により試合数が増えると、単純な競技レベルのみならずバイオリズムやチームビルディングにも影響が出てくるんじゃないかなと思っている。クラブのリリースにもあったように、いぶきCグラウンド開催試合については事前申請により県内在住の神戸サポーターは観戦可という運営方針になっているので、ぜひ関心を抱いてほしいという気持ち。そして、モニターやディスプレイ越しにでもいいので、リモートな声援を送ってほしいという気持ち。

登録番号、氏名(よみがな)、丸文字の数字は学年の順で示します。

GK
1 高橋一平(たかはし いっぺい)③
12 森田大悟(もりた だいご)③
21 田村聡佑(たむら そうすけ)②
31 津崎瑛人(つざき えいと)①

一平ちゃんこと2種登録選手でもある高橋にとって総仕上げの学年となる。直近の代表選考からは漏れたものの、ラージグループに入っているのは間違いない存在。スケール感は文句なし、自負するシュートストップに磨きをかけ、昇格に値する素材であることを強豪とのシビアなゲームを通じてアピールしたい。セカンドは3年森田と2年田村の争い。二人とも恵まれたサイズでキックに非凡なところをみせる。津崎は凛々しい顔立ちでスピーディなアクションが印象的だが、ベンチ入りには壁が厚くまだまだこれから。

DF
2 倉田流宇(くらた りゅう)③
3 安岡大輝(やすおか だいき)③
4 尾崎優成(おざき ゆうせい)③
5 田代紘(たしろ こう)②
15 石橋匠真(いしばし たくま)③
17 村井清大(むらい せいた)②
19 寺阪尚悟(てらさか しょうご)②
24 横山志道(よこやま しどう)②
25 阿江真嗣(あえ まさつぐ)①
34 廣畑俊汰(ひろはた しゅんた)①

トップチームは4バックに回帰したものの、U-18は基本的に3バックを継続している。要となるのはキャプテンを務める尾崎とボールを動かせる田代の2人。左CBに2種登録の左利きのビッグマン寺阪が入るパターンがレギュラー。尾崎はいわゆる「1学年上」の雰囲気を漂わせていて、昇格に近いプレイヤーとしてチームを背負うメンタリティをひしひしと感じる。中3からU-18に昇格させられた逸材なので不思議はないのだけど、キャラクターも飛躍的に成長してきたのは本人の努力だろうと思う。レギュラー3枚が欠けたときにバックスの強度を保てるかが今シーズンのポイント。淡路産レフティ倉田やサイズ負けしない2年生横山がチャンスをうかがう。石橋はボランチもこなす器用さでアピールしたいが、図太いタフネスも必要か。阿江は痩身ながらコンタクトで簡単に負けないバランスの良さがある。ウイングハーフとなるのは左サイドバック職人の安岡、タテへの強さとギアチェンジの巧さで1年ながら昨年終盤レギュラーを確保した左利きの村井、軽妙なボールタッチと懐の深さをみせる廣畑。3人ともレフティだが、ポジション争いは代表合宿にも呼ばれた村井がリードか。

MF
6 向井あさひ(むかい あさひ)③
7 荒井貫太(あらい かんた)③
8 仁科星哉(にしな せいや)③
10 永澤海風(ながさわ みかぜ)②
11 泉彩稀(いずみ さいき)③
14 黒岩幹介(くろいわ かんすけ)③
16 古口創一(こくち そういち)③
18 安達秀都(あだち しゅうと)②
20 片山颯真(かたやま そうしん)②
26 有末翔太(ありすえ しょうた)①
27 坂本翔偉(さかもと しょうい)①

U-18におけるフォーメーション原則は343もしくは3421と言われるもので、MFは中央の2枚とトップ下の2枚を担う。この実質4枚は、スタートもしくはセットポジションを意味するだけで、4人で流動的にボールを動かしながら相手を引き出したりギャップに入り込んだりして、キーパスでサイドを攻略することが狙いとなる。当然、序列はあるものの、今年は特に組み合わせに迷っているようにみえる。中央2枚は副キャプテンでもある仁科が軸で、狭いスペースでもテクニカルに運び出せる片山が組むゲームが多かったが、周囲とコンビネーションを作れる荒井や左で強いフィードを蹴れる安達もいる。仁科は昨年終盤ようやくAチームに昇格し本領発揮してきたが、それまでは精神的に波が大きく、ひとりで怯んだり迷ったりしてしまう素材系のプレイヤーだった。3年でセンターラインを支える立場となって、もう一皮剥けると見える世界が変わるはず。トップ下はゴールを虎視眈々と狙う永澤と泉がレギュラー格。昨年クラブ史上に残るであろう最年少2種登録を果たした永澤は、プレスを剥がしシュートまで持ち込む技術が光る。泉はセンターフォワードを追い越しフィニッシュに絡む。上背はないがクイックなターンで勝負する向井やエレガントな負けず嫌い黒岩が脅かすような強みを活かしたいが、1年の有末、坂本のスピード感も引けを取らない。

FW
9 冨永虹七(とみなが にいな)②
13 生駒泰輝(いこま たいき)③
22 宇治頼人(うじ よりと)②
23 蘓鉄航生(そてつ こうき)②
28 高山駿斗(たかやま はやと)①

頂点のセンターフォワードで勝負するのは冨永と高山のみ。他の3人は右サイドでウイングハーフを争いつつ、兼業でストライカーとしてのチャンスをうかがう状況だ。それだけ冨永がこれからを嘱望されており、今シーズンの「基準」であることを示していると思う。しかし、1年高山のトップスピードで相手を置き去りにするスタイルは2種でも通用するのではと感じさせるほど魅力的で、早い段階でチャンスを得られるかもしれない。低いフォームでアプローチできるスピードスター生駒は、生真面目すぎるのが強みでもありある意味弱点でもある。蘓鉄はリズミカルなドリブルが武器、大人しいからこそゴールエリアで勝負させたい男№1。宇治はサイズとバネと何より闘争心に恵まれたアタッカーで、去年の五味のようなゴリゴリ陣地を回復できるパワーファイトを期待されているのだろう。

今年は恒例の広島遠征やガバナーカップがなく、指導陣もチームビルディングに四苦八苦しているなという印象が強い。こちらのポゼッションを食い破りシュート数で圧倒されるようなシリアスなトレーニングマッチは残念ながらなかったので、甘さが出ないようにトレーニング終わりに厳しめの談話で戒めるような日もあった。MFを中心として競争は良い意味で激しいが、開幕のサンフレッチェ広島戦を初めとしてフィジカル面でどこまで通用するかは蓋を開けてみないとわからない部分がある。だからこそ、このクラブの看板を背負ってシーズンを戦うU-18の若者を見守ってほしいなと思います。ぜひ。

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