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U-18 Season Preview

新型コロナウイルスことCOVID-19が大きな災厄をもたらしたことで、我々が大切にしてきた日常のフットボールが深い傷を負い、社会はコミュニケーションウイルスによる止まない恐怖のなかにある。

ヴィッセル神戸のアカデミーは、クラブの掲げるビジョンのもと、育成に関する様々な取組みを進めている。コーチやスタッフの人事のみならず、ニュースリリースのようなオープンにされるトピックもあれば、注意深く眺め続けなければ気が付かないような情報もある。2019年の小林友希に続いて今季は小田裕太郎という年代別代表クラスをトップチームに昇格させたものの、ヨーロッパのトップクラブを範とする豊穣な育成に憧れるのならば、コロナ禍であっても理想を追い続けていけなければならない。

それでも、実際の活動は大きく制約を受けている。U-18年代、こちらから県外への遠征は非常事態宣言が出された以降は一切なくなってしまったし、もちろん、トレーニングマッチのために他地域から遠征してくるチームもほとんどない。終焉が見えないコミュニケーションウイルスに対して、そのリスクを正しく判断できる人間は決して多くない。90分と時間が限られているから選手は心身を削ってプレッシングができるわけで、そうでなければ続かない。厳しい取り組みの実効性を検証することが難しく「ここまで十分な対策をしたのだから」という言い訳づくりのようになってしまうが、それでもひとたびクラスタとなってしまえば社会的制裁の対象となるのが我々が住まうこの国。クラブは様々な活動のなかで、まずは抑制的に妥協点を探していくしかない。保護者や我々のような物好きは、彼らのリスクになってしまわないように、ひたすら離れて見守ることしかできないのかなと思う。

それはさておき、30日に開幕するスーパープリンスリーグ関西でメンバー登録が見込まれるAチームの選手を中心に、昨年と同様、ポジションごとに紹介する。本来なら、春先、プレミアウェスト2020の開幕に向けて書くつもりだった記事を、このタイミングで綴っていることに口惜しさがあるけども、エキセントリックなトップチームの陰に隠れてしまいがちになると思うので、ぜひ関心を抱いてほしいという気持ち。そして、モニターやディスプレイ越しにでもいいので、リモートな声援を送ってほしいという気持ち。

登録番号、氏名(よみがな)、丸文字の数字は学年の順で示します。

GK
1 マンビ・マーカス③
12 藤田 凪(ふじた なぎ)③
21 高橋 一平(たかはし いっぺい)②
30 森田 大悟(もりた だいご)②

ファーストは年代別代表の高橋。恵まれた体格を生かした長短のキックの水準は高く、スマートな所作からポジショニングが安定しているのも強み。でもまだ伸びしろだらけ。セカンドは北海道の星ことマンビ・マーカスが務め、チームの砦となる。バックラインへの指示が力強く具体的で、バネの強さでピンチを救うビッグセーブをみせる。3年生の藤田は負傷などに苦しんだ時期が長かったが、ワンプレイにかけるメンタルは強い。同じ2年生に高橋がいるため目立たないが、森田は身長だけでなくセービングやキックのバランスなど、決して見劣りしない選手。

DF
2 熊元 航征(くまもと こうせい)③
3 橋辺 海智(はしべ みち)③
4 藤本 颯真(ふじもと そうま)③
16 森本 大智(もりもと だいち)③
19 尾崎 優成(おざき ゆうせい)②
29 寺坂 尚悟(てらさか しょうご)①
33 田代 紘(たしろ こう)①
38 横山 志道(よこやま しどう)①

今季はトップチームと同様に3バックが基本となっている。藤本と2種登録された2年生尾崎が主軸。特に尾崎はセンターで組み立てのキーパーソンでもある。先輩に対しても物怖じしない意識の高さとボールスキルが素晴らしい。藤本はチームの編成上、右利きではあるが左サイドに配置されることが多く、場合によっては4バックの左やウイングバックもこなす。右足キックの美しい弾道は一見の価値がある。橋辺は身体能力に恵まれたスケール感の大きいセンターバック。優しげな顔して競り合いに強い。熊元は右ウイングバックのスピードスター。サイズはないが裏取りのキレは抜群。森本はテクニックに優れる選手。右サイドでポジションを争う。寺坂と田代は年代別代表候補の選手。寺坂はサイズと長いリーチを活かしたロングフィードが期待大。田代は身長は少し劣るものの、格闘家のような分厚さとボールスキル、何より対面のプレスをものともしないメンタルの太さが強烈なインパクトを与える。横山も2人に負けない好素材。力強いキックとヘディンガーとしての守備力を買われているように思う。

MF
5 馬場 智己(ばば ともき)③
6 押富 大輝(おしとみ たいき)③
8 廣田 陽一(ひろた よういち)③
10 佐伯 清之助(さえき しんのすけ)③
15 渡邊 悠平(わたなべ ゆうへい)③
18 向井 あさひ(むかい あさひ)②
24 荒井 貫太(あらい かんた)②
34 永澤 海風(ながさわ みかぜ)①
39 安達 秀都(あだち しゅうと)①

まずはウイングバック。渡邊は左サイドで定位置を確保。痩身ながら右足も強烈で将来性豊か。ポジション争いが激しいのがセンターの2枚。佐伯は多彩なキックと落ち着きのあるキープで違いを作れるレフティ。馬場は手堅いテクニックでチームを支えるマルチロール。ボール回しの中心となる押富は周囲を動かすリーダーシップがぐっと伸びた。上背のない向井はボールの動かし方やプレスを剥がすボディバランスが抜群。性格もタフでポゼッションに貢献する。荒井もサイズはないが、得意な左利きのパスセンスを活かしてチャンスをうかがう。1年生で抜擢されたのが永澤と安達。ボールスキルが高く判断も上級生と遜色ない印象を残すのがアタッカーで起用される永澤。U-15でも大人びたシュートを決める賢いプレイヤーだったが、ここまで適応できたのは驚き。安達はソレッソ熊本出身のボランチ。彼もレフティ。野性味とアクションの確かさで抜擢された。スタメンでも驚かない。

FW
7 佐々木 貴哉(ささき たかや)③
9 五味 郁登(ごみ いくと)③
11 森田 侑樹(もりた ゆうき)③
13 三浦 敏邦(みうら としくに)③
14 堀 海斗(ほり かいと)③
17 泉 彩稀(いずみ さいき)②
36 冨永 虹七(とみなが にいな)①

ボールスキルに秀でた佐々木は、サイドやトップ下で決定的なチャンスを生み出す選手。セットプレーも彼のキックが相手にとって最も危険だろう。五味はトップから右ウイングまで幅広くこなす万能選手。ハードなプレスでカウンターの起点になったと思えば、ライン際で圧倒するドSなドリブルを披露する。彼がハマるかどうかで試合内容が変わる存在。森田はストライカー。チームのプレッシングの先鋒を務め、機を逃さずゴールをかっさらう。一方、ビッグマンとして森田とは違うワントップを務めるのが三浦だ。強靭な体格ながら単なる電柱ではなく、サイドに流れて勝負もできる。負傷が絶えずこれからのキャリアが大事な選手だけど、昨年のアウェイ広島戦のような爆発を期待してしまう。堀は右ウィングバックが主戦場。やや波はあるがドリブルからのクロスでチャンスに絡む。ロングスローの使い手でもある。びわこ成蹊スポーツ大に進学した兄とは違うスタイルで出場機会を狙うのが2年生の泉。変幻自在のドリブル野郎ではなく、粘り強くチャンスを待つゴールハンター系。冨永はU-15で得点を重ねた大型フォワード。俊敏さはまだこれからだが、上級生相手でも軽妙にターンを決め、重量感のあるシュートと決めていく。

今年の3年生と1年生はU-15で関西リーグを制した世代。昨年の山内や小田のような突出したプレイヤーはいないかもしれないが、チームの年齢バランスがポジション争いの好循環をもたらしている。安定したバックスからポゼッションを重ね、佐々木や五味の突破力をサイドで活かす。インサイドの安定したボールワークを維持できれば、強豪相手でも優位に進められそうだ。プレミアという舞台が失われたことは残念だが、彼らはスーパープリンスという公式戦を通じて、積み上げてきたフットボールを表現してくれるはず。このクラブの看板を背負ってシーズンを戦うU-18の若者を見守ってほしいなと思います。ぜひ。
そして、負傷で今日の開幕を共に迎えられない8番よういちのためにもEnjoy Footballしよう。

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