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【後編】ガーシュインさんの楽曲の一部(337曲)の著作権が復活ということで、話の経緯やビッグバンドでよく演奏されそうな曲をまとめてみた

はい、ビッグバンドファンです。前編で話の概要、中編でビッグバンドでの演奏を中心に各楽曲について見ていきましたが、後編は中編の残りです。

Oh, Lady Be Good

1924年にジョージとアイラによって作られた楽曲。ウォルター・キャトレットがブロードウェイのミュージカル「レディ、ビー・グッド!」で取り上げ、フレッドとアデル・アステアが主演しています。またミュージカルとは関係ありませんが、映画「レディ・ビー・グッド」(1941年)の合唱によっても演奏されました。

小気味の良さがとても聞いていて心地よいですねぇ。あっさりしすぎずかと言ってこってりしすぎず、丁度良い塩梅って、料理とかでも基本ではあるものの実は難しいわけですが、まさにそんな感じの丁度良い塩梅が素敵です。

Someone To Watch Over Me

ジョージが作曲、アイラが作詞した、1926年の楽曲。同年のミュージカル『オー・ケイ (Oh, Kay!)』の中で、歌手ガートルード・ローレンスが歌うために書かれた作品です。この曲は、当初はアップテンポのスウィング曲であったが、ある時ジョージが試みにバラードとして演奏したところ、これがはまり、以降はこの形で演奏されるようになったそうです。

もっともこれ聞いて某不動産のCMがすぐに頭に浮かんでしまうのは致し方ないかもしれません。本当によく使っているし、またCMと曲が見事にハマっているんでね。これ作った人、センスあるなぁと思います。

Soon

「Soon」は、ジョージが作曲した1927年の曲で、歌詞はアイラがつけています。ミュージカル「Strike Up The Band」の1930年改訂版の中でマーガレットシリングとジェリーゴフによって使われるようになりました。

ガーシュインさんの曲はここまで見てきた曲全てでいえることですが、原曲が本当に音楽的にしっかりしたものになっているので、アレンジしても崩れないどころか別の魅力が出てくるという、いいですねぇ。割とアップテンポで演奏されるケースが多いように見えます。

ビッグバンド界のキャッチー王(と私は勝手に思っています)Rob Parton氏も見事にアレンジしてますねぇ。これは見事の一言です!!

Strike Up the Band

Strike Up The Bandは1927年にジョージが作曲、アイラがミリー・ラウシュのコラボレーションで歌詞を付けています。同年公開のミュージカル「Strike Up The Band」のために書かれた曲で、戦争と軍国主義音楽を風刺するような形になりましたが、ミュージカル自体は成功しませんでした。しかし「March from Strike Up the Band」と題されたこの曲のインストルメンタルバージョンは非常によく知られるよういなり、ジュディ・ガーランド-ミッキー・ルーニーが演じた1940年の映画「Strike Up The Band」でも使用されました。

さて、この曲も沢山アレンジはありますが、やっぱりこのアレンジを挙げざるを得ませんねぇ。

もうねぇ、Fascinating Rhythmといい、さっきのSoonのRob Partonといい売れっ子アレンジャーがガーシュンイン手掛けると最強ってことですわね。原曲がとにかく骨太で少々のアレンジに曲が崩れることが無い。

Summertime

「サマータイム」は、ジョージが1935年のオペラ『ポーギーとベス』のために作曲したアリアで、作詞はデュボーズ・ヘイワードという話もありましたが、どうやらこれがアイラとの共作であったという話になったようです。オペラの第1幕冒頭で、生まれたばかりの赤ん坊にクララが歌いかけるブルース調の子守唄で、前半の「夏になれば豊かになれる、魚は跳ねて、綿の木は伸びる。父さんは金持ち、母さんはきれい。だから坊や、泣くのはおよし…」では、歌詞とは裏腹に1920年代のアメリカの黒人たちの過酷な生活が反映されているが、後半の歌詞では「ある朝、お前は立ち上がって歌う、そして羽を広げて飛んでいく…」という子供の成長を祈る内容になっています。その後、ジェイクが嵐に遭遇して行方不明となったときと、ジェイクの死を知ったクララが嵐で死んだ直後にも歌われますが、歌詞の一部が変えられ、悲壮な内容となっていきます。

あまりに有名な曲なので解説も不要かと思いますが、曲を知らないとついつい題名から明るい曲なのかな?なんて思ってしまったりして、ギャップに戸惑ってしまうこともあるかなと思います。上記解説の通り、内容はかなりシビアな曲です。

で、ビッグバンドアレンジとなっても、基本はこの路線を踏襲するわけです。

それこそもの凄い数のビッグバンドアレンジがあるので、なかなか「これ!」と一つ紹介するのが難しいのですが、私の中での衝撃度No.1で一つ選びたいと思います。

Frank Mantoothさん、そう来たかと。数多のアレンジャーがこの曲を手掛けていますが、ここまでやってくれたのはこの人だけじゃないかなと思います。しかしここまでアレンジしても原曲のラインが自然と頭に入ってくるという、どこまでいっても崩れない、それだけ原曲の持っているパワーが強いということで、ガーシュインさんの偉大さを改めて思い知りますね。

There’s a Boat Dat’s Leavin’ Soon for New York

この曲もSummertime同様1935年のオペラ『ポーギーとベス』のためにジョージが作曲、アイラが作詞したもの。物語の終盤、ベスの内縁の夫だったクラウンを乱闘の末に殺してしまったポーギー。ポーギーは結局警察に収監されてしまうわけですが、その間に麻薬の売人であるSportin' Lifeがベスに「ポーギーは長期間(終身刑?)収監される。君はニューヨークで新しい生活を始めた方がいい」と唆し、結局ベスはニューヨークに渡ってしまいますのですが、そこで流れるのがこの曲というわけです。ちなみにポーギーは1週間後には警察を出てきて意気揚々と帰ってくるのですが、そこでベスがニューヨークに渡ってしまったことを知らされます。ここでベスは悲嘆にくれるどころか、ベスを見つけるため、不自由な足をおして数千キロ離れたニューヨークを目指し旅立つ、ここで舞台が終わります。

と、こんな風に書くと何か重たそうな曲に思えてきますが、そんなことは全く無いです。まぁ何とも力強い。歌が終わって「Come on' Bess!!」なんてね。唆すっていうより強引に誘っているって感じですかね。

そして原曲がこれだけ力強いのでアレンジも色々出来るわけです。ドイツのhr-bigbandなんかはこんなオシャレなアレンジにしています。

Hal Leonard社からはMike Tomaroアレンジでこんな感じの譜面が出ていますが、やはり力強さが前面に出てきてますね。これはアレンジというより原曲が持っている力強さと言えますね。元気を無理やり引き出される感じというか、さすが麻薬の売人!!やるなぁ。

They Can't Take That Away From Me

作詞がアイラ、作曲がジョージで1937年公開の映画『踊らん哉』のために書き下ろされたものです。作中でフレッド・アステアがジンジャー・ロジャースのために歌い、更に後年『ブロードウェイのバークレー夫妻』で2人が踊った曲になります。初演版では「あの作曲家が詠ったように、歌は終わってもメロディは残る。恋は終わっても想い出は続く」という意味の導入部(叙唱)があるのですが、これはガーシュイン兄弟がアービング・バーリンに敬意を評したものだそうで、バーリンの「The Song is Ended」という歌の冒頭を指すそうです。

冒頭のピアノとバンドの掛け合いがいかにも二人の語らいのようで素敵です。ジャズにおいてもスタンダードになるので色んな場で演奏、歌われることも多い曲です。

ただここでも原曲の強さは活かされてますね。ビッグバンドにするとよりその力強さが前面に出る感じもします。

というわけで、前編・中編・後編と3回に分けてガーシュインさんの曲について確認してきました。ついついスタンダードで耳にしているだけに改めてしっかり聞くというのを怠りがちになってしまうこともありますが、こうやって一つ一つ聞いていくとその魅力の深さを思い知ります。やはり偉大な作曲家にはそれなりに理由もあるんだなということですね。ビッグバンドファンでしたぁ、またねぇ~~

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