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『凸女&凹男』20枚シナリオ課題「アクションシーン」

※解説
 お騒がせ二代目社長・猪熊進代とドジなボディガード・権藤高虎が繰り広げるアクション・ラブコメディー。

※登場人物
 権藤高虎(ごんどうたかとら・37)…ボディガード
 猪熊進代(いのくまみちよ・32)…イノクマ食品社長
 乙幡諒(おとばりょう・45)…俳優
 杉野隆文(37)…ゴシップ誌記者
 小倉誠(32)… ゴシップ誌記者
 男
 消防隊員
 救急隊員

〇パークロイヤルホテル・外観(夜)
  15階建ての高級そうなホテル。
 
〇同・1507号室前廊下。
  荷物を持って歩いてくる権藤高虎(37)。その後ろに続く手ぶらの猪熊
  進代(32)。
  権藤、1507号室前に来るとカードキーで扉を開け荷物を進代に渡
  す。
権藤「では本日もお疲れさまでした」
  進代、部屋に入り際に、
進代「今日のあなた、30点ね」
権藤「え? 何か警備上の不備がございましたでしょうか?」
進代「自分で考えなさい!詰めが甘いのよ」
権藤「も、申し訳ございません」
進代「あと分かってるでしょうね?」
権藤「と申しますと?」
進代「今夜私がここに泊まってること。誰にも言うんじゃないわよ!」
権藤「そ、それは勿論。心得ております」
進代「ったく、本当かよ!」
  進代、バタンと扉を閉め部屋へ引っ込む。廊下に1人残された権藤、ハ
  ア~と大きく溜息。すると再び扉が開き、
  権藤の額にゴツンと当たる。
権藤「あ痛ッ!」
進代「あんた今、溜息ついたでしょ?」
権藤「(慌てて)い、いえ!」
   
〇同・エレベーター前(夜)
  額をさすりながらエレベーターを待っている権藤。チーンと鳴り扉が開
  く。すると中から乙幡諒(45)が出てきて鉢合わせになる。
乙幡「おっと、失敬」
  乙幡、目も合わせずそそくさと立ち去る。その後をそっと追う権藤。
 
〇同・15階廊下(夜)
  壁際からそっと覗く権藤。目線の先に歩いていく乙幡の後ろ姿。150
  7号室前に止まり呼び鈴を押す。そして進代が出てきて乙幡に抱き着
  く。そしてそのまま部屋へ入っていく2人。それを複雑な表情で見てい
  る権藤。
   
〇同・1階ロビー・正面玄関(夜)
  権藤、外へ出ようとする。とすれ違いざまに男が入ってくる。権藤、ふ
  と違和感を覚え振り返る。男、辺りをキョロキョロしながらエレベータ
  ーの方へ歩いていく。
 
〇乗用車・車内(夜)
  フロントガラスから数十メートル先のホテル玄関から出てくる権藤の
  姿。それを双眼鏡で見る運転席の小倉誠(32)。助手席には杉野隆文(3
  7)。
小倉「間違いない。あの男、猪熊進代のボディガードっすよ」
杉野「やっぱ泊まってんだな。用心して裏口から入りやがったか」
小倉「しかし、先代親父の食品偽装に2代目娘の不倫、親子でやらかしてく
 れますね?」
  杉野、週刊誌を広げて記事を見る。記事には『イノクマ食品 賞味期限
  偽装先代社長が直接指示か?』との見出し。
 
〇パークロイヤルホテル・地下駐車場(夜)
  止まっている高級車。運転席に権藤。
 
〇高級車・車内(夜)
  スマホを見ている権藤。画面には『俳優・乙幡諒、美人女社長と不倫疑
  惑、愛妻家キャラは虚飾だった?』と書かれた見出しのネット記事。権
  藤、大きく溜息。
 
〇パークロイヤルホテル・寝室(夜)
  男が入ってくる。ポケットからライタ―を取り出し、ベッド上のシーツ
  に火をつける。勢いよく火が燃え広がる。
 
〇高級車・車内(夜)
  ウトウトしている権藤。すると車外からサイレンが聞こえてきて目を覚
  ます。
 
〇パークロイヤルホテル前(夜)
  最上階から炎と煙が上がっている。ホテル前は消防車と野次馬が集まっ
  ている。その中に杉野と小倉の姿も。
小倉「あの2人、一緒に出てきますかね?」
杉野「どうかな?俺、裏口の方見張るわ」
   
〇同・1507号室・寝室(夜)
  乙幡、窓から地上を見下ろしている。
進代「ねえ、早く逃げなきゃ!」
乙幡「待って! 下にマスコミがいる。時間差で脱出しよう」
進代「え?」
乙幡「まず俺が先に出る。ホテルから離れたら連絡するから、その後に君は
 脱出して」
進代「な何言ってるのよ!」
  逃げようとする進代を制止する乙幡。
乙幡「一緒にいるところを撮られたらまずい」
進代「それどころじゃないでしょ!」
  乙幡を振り切って逃げようとする進代。
  乙幡、進代の頬を思い切りビンタする。
進代「キャ!」
  その勢いで床に倒れる。乙幡、進代をほっといて部屋から出ていく。
 
〇同・正面玄関前(夜)
  出入り口へ向かって走る権藤。
消防隊員「下がってください!」
  消防隊員に制止される。
権藤「最上階に人が!」
  その時、最上階から爆発音。炎が勢いを増して立ち昇る。権藤、それを
  見て消防隊員を振り切り玄関へダッシュ。
 
〇同・非常階段(夜)
  権藤、階段を三段飛ばしで駆け上がる。
  すると上から乙幡が慌てて降りてくる。
権藤「社長は?」
乙幡「は?」
権藤「一緒だったんでしょ?」
乙幡「知らない、猪熊社長なんて知らない」
権藤「いや、今猪熊って……」
乙幡「知らない! 俺はずっと一人だった」
  一目散に階段を降りていく乙幡。
 
〇同・1507号室・寝室(夜)
  権藤が飛び込んでくる。室内は煙が充満し、進代が床に倒れている。
権藤「大丈夫ですか!しっかりして!」
進代「んん……」
  権藤、意識があるのを確認すると、進代を肩に抱いて起こす。
権藤「なるべく姿勢を低くして下さい」
 
〇同・非常階段・踊り場(夜)
  権藤、進代を抱えながら降りようとする。と階段下から爆発音と共に炎
  が噴き上がる。
進代「キャ!もう駄目だわ!」
権藤「私がついてます!」
進代「だから何よ?これじゃ降りられないじゃない!」
  階段が炎に包まれている。すると権藤、進代をお姫様抱っこする。
進代「ちょ、ちょっと何するの?」
権藤「しっかり掴まってて下さい!」
  権藤、素早い勢いで階段を駆け下りる。進代は思わず権藤の首元に抱き
  つく。
 
〇同・1階ロビー(夜)
  権藤、進代を抱っこして降りてくる。
権藤「大丈夫ですか?」
  権藤の首元に抱き着いていた進代、顔を上げると汗と煙で黒くなった権
  藤の顔、所々火傷もしている。至近距離で目が合い互いにドキッとな
  る。
進代「ちょっと、早く下ろしてよ!」
  権藤、慌てて進代を下ろす。そして正面玄関から出ようとして、
権藤「待って!」
  見るとカメラを構えたマスコミの姿。
権藤「裏口から出ましょう!」
 
〇同・裏口(夜)
  権藤、扉を開けそっと外の様子を見る。
  続いて進代が出てくる。傍に止まっている救急車を見つけ後部ドアをノ
  ック。ドアが開くと救急隊員と吸入器とつけた乙幡が乗っている。乙
  幡、驚いて
乙幡「うわあ! ここはまずいって」
  権藤、乙幡を無視して、
権藤「この方の応急処置をお願いします」
  救急隊員、進代をストレッチャ―に寝かせ吸入器を口に当てる。
権藤「大丈夫ですか?」
進代「あなたも早く治療してもらいなさい」
権藤「いえ私よりもまずは社長が……」
  進代、権藤の言葉に思わず彼を見つめる。権藤も「え?」となって見つ
  める。
乙幡「他へ行ってよ、一緒はまずいって……」
進代「うるさい!」
  一喝され黙る乙幡。すると突然、フラシュの閃光。見ると外に杉野がカ
  メラを向けて立っている。
杉野「乙幡さん、今夜は猪熊社長と一緒だったんですね?」
乙幡「ち違う! 違う!」
進代「やっぱり、詰めが甘いのよね」
権藤「も申し訳ございま……」
進代「でも今日のあなたは100点満点」
  進代、権藤に笑顔を向ける。
  権藤も思わず笑顔になる。
 

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