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スパークスというバンドの虜になった話

世界で一番過小評価されている偉大なバンドとも言われる「スパークス(Sparks)」。
日本では高橋幸宏さん、布袋寅泰さん、平沢進さん、海外では、BECK、セックスピストルズのスティーブ・ジョーンズ、レッチリのフリー、アル・ヤンコビック、フランツフェルディナンドなど、多くのミュージシャンがファンを公言している、知る人ぞ知る孤高のバンド。

ライブに行ったらあまりにかっこ良すぎてどハマりしてしまった。凄いバンドなので少しでも多くの人に知って欲しい。もっと早く知りたかったバンド堂々第一位。少しでも普及になればと思い、備忘録。

Sparks 2023 New Album Pic

0.トリガー:ある音楽家

2022年8月、平沢進という好きな音楽家がツイッターでこう呟いた。
「スパークスブラザーズを見た」
「何が泣けるって、数年前にスパークスが柴又(※彼の故郷)に来たってぇことさ。また彼らには柴又の踏切が良く似合う。だからかっこいいんだ。スパークスは。」
珍しく素直に感情の表れたツイと音楽通たちの肯定的なリプライを見て、それまで全く知らなかった「スパークス」というバンドに興味を覚えた。🍎 Musicで検索し、お勧めリストの上から順に五曲ほど聴く。へー、どの曲も結構良いじゃん。ちょうど1週間後のソニックマニア来日を知り、他に気になる人もいるからついでに見るか、くらいの軽いノリで聴きに行った。

1.フェスから全てが始まった

SonicMania2022

彼らのライブ映像は全く見ておらず、「70代半ばから後半の兄弟2人組。映画のOPで椅子に座っていた。」という中途半端な情報から「穏やかに椅子に腰掛け、たまにゆっくり歩きながら、ノスタルジックに往年の名曲を歌う老人2人」を想像していた自分を全力で殴り飛ばしたい。

全然違った。ラッセルの第一声で度肝を抜かれた。

'So May We Start✨✨✨‼️‼️‼️'

なんて艶やかな良い声‼️

彼の声はそれ自体が大きな丸いボールのようで、空間ごと包み込む優しさと深い奥行きがあった。唯一無二の美しさ。そして、

なんというパワフルなパフォーマンス😳‼️

ラッセルが客席に向かって走り高々とジャンプした時は、あまりの迫力にのけぞった。ずっとそんな調子で、10代の青年でも30分で倒れそうな運動量を1時間以上続け、一度聞いたら忘れられない天から降るような歌声を響かせていた。

神だ。神がいる。なんだこのクソカッケェ爺さんは‼️

ロンお兄さんは対照的で、殆ど微動だにせずキーボードを叩いている。その姿は凛として力強く美しい。存在感が凄い。ちょっと真顔すぎて怖い。

Stravinsky's Only Hit を聞いた時、私は一生スパークスの音楽から離れられないと直感した。歌詞はまるでわからなかったが、とにかく体験したことのない種類の芸術に出会えた衝撃、何だか凄い音楽を聴けたという嬉しさと感動で微動だに出来なかった。

夢中になって聴いていると、お兄さんが突然立って舞台の真ん中に進み、強制的にランニングマシンに乗せられたような奇妙なダンスを始めた。クレイジー!

Lawnmowerが何を指すのかわからなくても、ラッセルと一緒に正体不明の機械を押すのはとても楽しかった。

My baby's taking me home も本当に驚いた。
殆ど唯一歌詞が正確に聞き取れたのに、さっぱり訳がわからない。それなのに、ジワジワと感動の波が押し寄せる。斬新で得難い音楽体験。

ライブでは専らラッセルの美しい歌声と素晴らしい旋律に魅了されたが、後から歌詞も解読し、ユーモアと哀しみと風刺と恋愛と孤独とパイナップルが万華鏡のように詰まった広大な世界観に驚嘆した。ロン兄の頭の中には小宇宙がキラキラと広がって、流れ星がたくさん降り注いでいるのだろう。

2022 live pic

2.新参ど素人vs古参プロ、それぞれから見たスパークスの偉大さ

ライブが終わった後、感動のあまり茫然としながらセットリストを調べた。1970年代前半から2020年代まで満遍なく入っており、本当に驚いた。

巷でも高く評価されている70年代の名盤は間違いなく名盤で、50年経っても光り輝き全く古びていない。

1974 pic
1994 pic

でも私は、21世紀以降の楽曲がなければ、これほど心を掴まれることはなかった。
初めてライブを聴いた時から、色々な曲を聴いた今まで、ずっとそう感じている。

セットリストに最新アルバムを半分近く入れて魅了させることの出来る10年モノのバンドが、どれだけいるか?

ボーカルがキーを落とさずあらゆる楽曲を美しく歌い上げ、カモシカのように軽やかに飛び跳ね、デビュー当時以上に魅了させることの出来る30年モノのバンドが、どれだけいるか?

楽曲もライブパフォーマンスも、歳を重ねるほど進化していくキャリア50年以上のバンドなど、世界中見渡しても、間違いなくほぼいない。

ここで平沢進が昨年単独公演に行った直後のツイッターを抜粋して紹介したい。初心者も嬉しくなる、良いコメント。

'昨日はスパークスに行っていた。意外に思われるかもしれないが、スパークスを生で見るのはこれが初めて。何度もチャンスはあったが、諸事情により行くのをとどまっていた。Kimono My Houseから48年を経てやっと夢が叶った。スパークスは地球上でもっとも偉大なバンドの一つであり、常に進化し続ける現役であるから、「見遅れた」などということはない。常に新しく、常にスパークスであり、常に満足させてくれる。あの頃のスパークスは良かった、などということはない。あぁ、そういう人々は何故かパッと見年齢がわからない。'

'(The Number One Song In Heavenを歌い終えた後)ああ、これで終わりだ。これで声もヘタるので、より大変なThis Town Ain't Big Enough For Both Of Usなど有り得ないと思っていたところ、(素晴らしく歌われたので)心中土下座した。
'This Town Ain't Big Enough For Both Of Us'
はい、おっしゃる通りです。申し訳ありません。
48年間夢に見た生This Town Ain't Big Enough For Both Of Us。48年と言えば生まれた子供がおっさんになり果ててしまう時間経過だ。しかし誰かがスパークスをおっさんだと思うなら、その人は認識力が低下している。時間は時間を追い越して行く。それが実証された渋谷の夜。'

Shibuya mini gig

3.常に、今が最高

出会いから約一年。全てのアルバムを聞き漁り、2本の映画を見て(英国では知らない人はいないエドガーライト監督によるドキュメンタリー映画スパークスブラザーズ」はアマプラで無料!超面白いのでみんな見よう!)、新譜を聴き、明け方にフェスの配信で感涙し、ファンとして万全の状態で迎えた今年の来日公演は、昨年圧倒された感動を更に上回る歓喜と興奮の3日間だった。

昨年は訳がわからなかったロンのダンスも楽しく応援したし、Shopping Mall of Love の手拍子も完璧に合わせた。Beaver O'Lindy、Toughest Girl in Town、Bon Voyageなど往年の大好きな曲から、The Girl is Crying in Her Latte、We Go Dancingといった多くの優れた新譜まで、素晴らしい曲ばかりでずっと聴いていたかった。何もかもが最高だった。

本当に幸運続きだった。渋谷の最終公演では最前列が当たり、ドラムのスティックがもらえ、表参道で偶然ラッセルさんと会え、図々しくもツーショットまで撮ってもらえた。ちなみに、ラッセル翁はマジで超絶優しく紳士で惚れ直した。お愛想的な要素は皆無なのに、あんなに穏やかで瞳の優しい人には初めて会った。拙い英語で、50年続けてくれたおかげで新参の自分は出会えたと感謝を伝えたら、Thank you!と自ら手を差し出して握手してくれた。多くを話さなくても、目と振舞いで優れた人格が伝わる、そんな人だった。

何より、ライブパフォーマンスそれ自体が去年以上にパワフルで聞き応えが凄かった。誘って一緒に渋谷ライブに行った友人や親も、たちまちファンになった。宣伝してベルギーやワシントンで聴いてくれた知人からも最高だったと言われた。言葉では言い表せないほどの感動と感謝。

2023 live photo

4.強欲な新参者、一言物申す

大好きなスパークスだが、たった一つだけ不満がある。
公式のライブ映像があまりに少ない。

ラッセルの歌唱と身体表現は、それ自体が楽曲の魂を直接心に届ける使徒だ。外国人が初めて聴いて、歌詞がほとんどわからなくても、彼の声の豊かな変化やジェスチャー、表情を見聞きすれば、楽曲の魂が伝わる。もちろん歌詞も重要だが、「音楽を好きになる」ために必要な、もっと本能的かつ根源的な何かは、ロンの奏でる旋律とラッセルの表現に等しく込められていると強く感じる。

スパークスの音楽やパフォーマンスは、適切に記録・公開さえすれば、必ず世代を超えて長く愛されるだけの芸術的価値がある。音楽、声、身体表現全てが傑出している彼らのライブ映像は、絶対に後世に残すべきだ。21アルバムライブすら断片的なファン動画しか出ていないのは、狂気の沙汰だ。

例え古くて映像クオリティが不十分でも、まともな人間には豊かな想像力で映像や音声を補完し、感動出来る能力がある。最近はAI等の修復技術も目覚ましく発達し、将来的に人々の手で素晴らしい状態に蘇ることも十分あり得る。だから、可能な限り公式の手元に残っている過去の映像は公開されることを願っているし、これからのライブは映像を積極的に残して欲しい。エドガー監督が喜んで撮影してくれるに違いない。

Two Hands One Mouth live 2012-2013
The Seduction of Ingmar Bergman live 2009

5.フューチャー、フューチャー!

スパークスと出会ってたった一年で、私の趣味は大きく変化した。彼らの旋律にどうしてここまで心を惹かれるのか知りたくて、サボってばかりで直近1年間は全く弾いていなかったピアノを再開した。小さい頃から大嫌いで無理矢理通っていたピアノが、今では、やっていて良かった、少しでも上手くなりたいと思えるようになった。他のファンのみんなに勇気づけられて、下手でもファン祭に参加することが出来た。
音楽を能動的にプレイすることの楽しさを、スパークスが教えてくれた。

昔から語学全般が苦手で大嫌いで、大学でもフランス語の単位を落とした(ラッセルさんに教わりたい!)が、スパークスの歌詞やインタビューを知りたくて、少しずつ英語を読んだり聞いたりするようになった。
まだまだ苦手で、過去の紆余曲折やインタビューでの発言は映画での描写以外何も知らないが、知らないからこそ言える本音もある。これからゆっくり、英語を勉強しながら彼らの歴史も知りたいと思う。

私は1990年生まれで、やっとスパークスに出会えたばかりだ。出来ればあと20年早く知りたかったが、これから生きていく半世紀は思いきり彼らの活動を楽しみたいし、少しでも多くの若い世代に彼らのことを知って、一緒に楽しんで欲しい。だからロンとラッセルには、どうかこれからもずっと、健康で元気に長生きして欲しい。

最後に、ずっと活動を続けてくれて、出会わせてくれて本当にありがとう。また何度も彼らの新作を聴いて、何度も新しいライブに熱狂出来ることを、心から熱望している。2人とも大好きです。

Cesar Award 2021

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