旦部幸博『コーヒーの科学』

コーヒーについて様々な角度から言及している本だった。植物学、歴史学、化学、医学など、筆者の知識の広さ・深さに圧倒された。少し難しいところもあったが、図も多くてド文系の私でも楽しく読み進めることができた。コーヒーノキがカフェインを作るのはなぜか、アメリカンコーヒーはなぜアメリカンコーヒーなのか等々、初めて知ることがいくつもあった。特に覚えておきたいことだけここに書いていく。

・なぜコーヒーを美味しく感じるようになるのか。

コーヒーの味を一言で表現しろと言われたら、ほとんどの人が「苦い」と表現するだろう。苦味は有毒な植物に含まれるアルカロイドなどの自然毒に感じる味であり、本来は生理的に受けつけないはずだ。そんな味のコーヒーをなぜ好んで飲むようになるのか、ずっと不思議だった。端的に言うと「慣れるから」らしい。最初は苦味を不快に感じても、段々慣れてきて安全だとわかってくると味の変化を楽しむことができるようになっていくようだ。ヨーロッパや日本など、それぞれの社会で初めてコーヒーを飲んだ人達は、みんな「まずい」「なんで好まれているのか理解できない」という感想を遺しているらしい。

・「キレ」と「コク」とは何か

味を評価するときに「キレがある」「コクがある」と言う人がいるが、味の「キレ」・「コク」とは何だろうか。これについても触れられていた。人間がものを飲食するとその大部分はすぐに飲み込まれるが、一部の成分は口の中に残る。残った成分は唾液によって洗い流される。例えば、酸っぱいものを飲食した時は他の味を感じた時よりも唾液が多く分泌され、一気に口に残った成分が洗い流される。それを私たちは「すっきり/さっぱりした」と感じるのだ。この唾液の働きが重要で、強い味がサッと洗い流された時の落差が「キレ」で、逆に味が洗い流されにくく口の中に残り続けることが「コク」と表現されるのだ。「コク」に関してはもう少し細かく述べられているが、とりあえずこんな感じだった。

・コーヒーは体に悪い?

これについてはテレビやネットで色々なことが言われているが、この本が一番信頼できるなと思った。面白い話がたくさん書いてあったが、まとめると世間のイメージほど体に悪くはないようだ。というかむしろ良いことも多そう。ただ、何にでも言えることだが、飲みすぎるのは体に確実に良くない。

この本を読んで、焙煎から自分でやってみたくなった。あまり家のものを増やしたくないが、近いうちに始めてしまいそうで怖い。

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