劇団かもめんたる『君とならどんな夕暮れも怖くない』感想(ネタバレ無し)
劇団かもめんたる『君とならどんな夕暮れも怖くない』を鑑賞しました。
前提として、私はかもめんたるファンであり、過去の劇団かもめんたる作品も全て拝見しています。う大さんが作り出す独特かつ底なしの世界観の虜になった人間です。
今作も単体のクオリティは非常に高く、観終わった直後は俗に言う賢者タイムに没入。
う大さんによると、Black Lives Matter(先日起きた白人警官による黒人射殺事件に関連する抗議運動)やコロナ禍における昨今の社会情勢に影響を受けたとのことですが、なるほどなあという感じ。
有料記事なので詳細には触れませんが、一読の価値はあると思います。
というより観た方は絶対に購入すべき。まじで。
扱いづらい差別というテーマを正面から書いた今作。よくここまでタブーに踏みこめたなと衝撃を受けました。個人的には、今流行の「誰も傷つけない笑い」に対する答えの1つでもあるんじゃないかなと。
間違いなく面白かったし、最近観たエンターテイメントで1番心を揺さぶられました。おそらく、生で観に行っていたら2020年ベストライブ第1位になっていたと思います。
しかし、鑑賞中、胸に言語化できないしこりを抱いたのも事実です。
Twitter検索をして見ると案の定大絶賛の嵐。その中にひとつだけ、ポツンと浮いている感想がありました。
ファンを晒すのは嫌なのでリンクは貼りませんが、それは「被差別側には差別されてきた歴史と事実があり、この作品には被害者側の視点が欠落している」という内容のもの。
目から鱗が落ちた思いでした。そして、パズルのピースが嵌った瞬間でした。
国際系の仕事をしている関係で、アジア人差別とは「される側」としても縁が深いのですが、なるほど、だから釈然としない何かを感じたのでしょう
(おそらく、う大さんはテーマがブレるから意図的に書かなかったのだとは思いますが)。
話は逸れますが、私は全くリベラルな人間ではないし、行き過ぎたポリコレやフェミニズム、同様にミソジニーも好きではありません。
一番好きな芸人はゲスとクズを煮込んだようなさらば青春の光ですし、エロ・グロ・バイオレンスも大歓迎。ブラックでアンモラルなネタには手を叩いて喜びます。
そんな人間でもお笑い地下ライブに行くと炎上したAマッソの発言並みにギョッとすることが多々あります。
客側も芸人側も無自覚であり、無邪気にキャッキャと笑っている。過渡期である現在において、それは少し恐ろしいことだと思うのです。
知識がある上でやっているなら勿論良い。ですが、知らずにやっている場合、ギリギリの線引きをも誤ってしまう。そんな気がしてなりません。
ギリギリの線引きを学ぶためにも『君とならどんな夕暮れも怖くない』を鑑賞し、変わりゆく社会に想いを馳せるのも乙なものではないでしょうか。
https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2023408&rlsCd=001
生で観ると5000円なのが、なんと配信だと1800円。どう考えても1800円のクオリティではないので存分に堪能しましょう。
9月6日まで観られるようなので是非。胸を張ってお勧めします。
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