チュートリアルJTC


日本の田舎化の象徴JTC

最近のネットスラングにJTCというものがある。
Japanese Traditional Companyの略で、要は「伝統的な日本の大企業」という意味合いで使われる。

では、その伝統とは何なのかという事になると、「旧態依然とした終身雇用、年功序列、飲み会文化や系列や子会社・下請けなどが残っている企業」を指すらしい。

その対極にあるのがGAFA系キラキラWEB企業や外資らしいが、あれもまた修羅の道だというのが知られている今では、JTCの遅すぎる意思決定やら買い叩きといった商習慣などが主な揶揄の対象なのだろう。

JTCのJTCたる所以は、その伝統を支える為に犠牲となる人員が余りにも多い事だ。特に、単価を下げる事に情熱と全能力を振り切るビジネスパーソンは製造業系JTCに多い。
彼らは『カイシャ』という代紋を使い、本職の人間すら「やり過ぎちゃうんか?」くらいの勢いで子会社に無理難題を押し付け、下請けを買い叩き、伝統を維持してきた。

自分はこの手の人種を、主に軽蔑の意味を込めて『社章バッジで仕事をしている人』と呼んでいる。


社章バッジで仕事をする人達の実相

自分は十年以上も前から、「いずれは人手不足になる。其の為には今からでも人員育成目的の余剰を確保したい」と、ことあるごとに、上の立場(JTC地域幹部)の方々に言い続けてきた。

しかし、入れ代わり立ち代わりで赴任するJTCの責任者の回答は「自分には単価を決定する権限はない」ばかりだった。

そりゃ当たり前の話である。大体のJTCは本社が東京(もしくは大阪か名古屋、京都)である、単価の決定権もここ。
彼らが地方の工場の下請けの賃金水準なんてものを正確に把握している訳がない。把握していたとしても、「ふーん、それで?」であり、「そんな田舎の工場の下請けに同情する義理はない」のだ。
それに彼らもまたカイシャという巨大機構における一つの機械要素でしかなく、それぞれの「目に見える成果」「数字」を求められるという余裕のない状況なので、リソースを割けない…。

結果、無力感を学習した自分は三年くらい前からはそれすら言わなくなった。十年近くも言い続けも全く対策しないんだから、馬鹿で世間知らずの自分だって「もう言うだけ無駄だ」と理解する。

それでも現実は非情である。現場は待ってはくれないのだ。
その代案として出された案がマルチタスク化だった。

確かに何年かの過渡期を凌ぐという意味はマルチタスク化は有効な手段だが、マルチタスク化を進めると、JTCは今度は現場のマルチタスク化された社員を前提にした単価提示になる。
こちら側とすれば労働強度も上がり、結果的には社員定着率も悪化する。

「ああ、結局この人達にとって自分は使い捨てなんだ」と。

そう察するのは難しい事ではなかった。
そして今、JTCの責任者や中間管理職たちは「本社命令」という名前の下、人員確保に躍起になっている。

彼らとて、先輩(主にたっぷり退職金や企業年金を貰って子会社の役員に天下った癖に今だにOB面して業務に口出ししたり昔の武勇伝を誇らしげに語り、自分たちが残した負の遺産にはダンマリを決め込む、社章バッジで仕事してきたクソ団塊の老害連中)の目に見えない負債を処理しなければならない辛い立場にあるのは察するに余りあるが、こちとら会社の存続そのものがかかっていたから必死さの度合いが違うのだ。

マルチタスク化というのは聞こえはいい。だが、マルチタスク化した社員が退職したり病気になればどうするのか?という危機管理の考えが全く存在しない。
結局、省人化とリストラありきの彌縫策、金だけ今だけ自分だけ、その答え合わせは今の「優秀な若者のJTC離れ」に繋がっている。


JTCの良いところ

とはいえ、JTCにも利点は多い。

①国内企業としては非常に手厚い福利厚生
これは本当にガチです。企業が保有している保養所とかはリストラでなくなったが、その代わりとして提携企業やスポンサード企業の施設やサービスを驚くべきほど安価で受けられる。

②初期ビジネスマナーから学べる豊富な社内・社外研修、資格取得の取得と報奨金
これもガチ。中小企業だと学費ほぼ自腹な資格取得予備校も、JTCだと学費の相当額を補助してくれる。最も、政府から補助金や助成金が出ており、JTC側にとってはそれ目当てでもあるが。

③育休の充実
JTCはママにも優しい。育休だけに目が奪われがちだが、その間にもある程度の水準までの給与も補償されている。更に裏の福利厚生として、子供が一定年齢になるまで転勤免除という事業所すらある。やり過ぎとの声もあるが、ここまでやらないと社員は定着しないのだ。地域幹部評価には社員定着率という指標まであるので、地域幹部は地獄なのだが。

④人脈の形成、広がる視野
JTCはゼネラリストを求めがちである、区々たる業務は子会社や下請けに丸投げするのでさして必要ない。
故に、そこから伸びる人脈の形成には持って来いである。勿論、子会社や下請けの中の人達も人間なので、それなりの敬意をもって対応しないと逆に総スカン食らって冷遇、遠流されるなんて事も結構あるので諸刃の剣。

あらゆる点において社会人の入り口のチュートリアルとしては間違いなくお勧めです。
但し、年功序列による昇進で、地獄の中間管理職や地域幹部くらいの年齢になるまで働き続けるべき会社かどうかは非常に微妙です。
第一、分厚い福利厚生のほとんどはJTC社員とインナーサークルの外縁にいる中小企業や子会社や下請けの犠牲で成立している、という事実を見逃しやすいのですが。


海外はエデンの園ではない。

最近では海外の給与水準の高さを引き合いに出して出稼ぎを症例するかの様な報道が増えている。海外への出稼ぎも短期で見ると現時点では最適解の様に見えるが、長期ではそうでもなかったりする。

現状では日本人が珍しいから高価格なだけであり、これが大量に出てきたらあっという間に賃金が暴落します。

それに日本にはこういう歴史もあるんですよね。

日本人の必殺技、人身売買。
相変わらずアクセス稼ぎの誇張表現で『日本社会の闇!』と題されていうが、闇でも何でもなかったりする。

赤い靴の舞台は横浜だが、それはからゆきさんの暗喩とも言われる。文明開化という光、その中の闇。

まずは需要と供給から勉強して下さい。

「満蒙開拓団」「南米移民」「北朝鮮は地上の楽園」「就職氷河期世代の中国出稼ぎ」の歴史をわざと報道しないNHK。まぁ平均年収1800万円で路上不倫カーセックス上等だし、そりゃ「NHKをぶっ壊ーす」なんて言われても同情できないよね。

こちらの意見の方がまだバランスが取れている。

結局、ワーホリで短期間就労で種銭を出稼ぎで稼いで国内で事業起こす、てのが最適解なのかもしれない。若くて守るべきモノがなかったら行っていただろうなぁ。


結局は内需だよね(絶賛少子化進行中)

結局の所、国内で活路を作るしかなくなるのだが、日本人の伝統的経済学者JTE(Japanese Traditional Economist)が経済政策に口出しする限り、現状は悪化する一方だろう。

何故なら、JTEの考え方は結局の所、上記の一点に集約されるのだから。


そもそも、日本人の会社への忠誠度はぶっちぎりで世界最低なんですけどね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?